桜花姫神話第壱部
拠点
第一話
怪談
太古の大昔の出来事である。世界暦四千二百二十二年四月三十日の時期…。極東に存在する。青海原の島嶼では俗界の武陵桃源とも呼称される多神教の小規模民国〔桃源郷神国〕が誕生する。桃源郷神国は原生林の島国地帯であるものの…。国内では武力による戦乱が全国各地で頻発したのである。弱肉強食の戦乱時代が終焉してから五百年後の時期…。共存共栄の安穏時代は毎日が平和であり常日頃の日常生活が退屈にも感じられる。世界暦五千二十二年二月下旬の時期である。近頃は度重なる神隠しやら数多の大災厄は勿論…。無数の亡者達による摩訶不思議の超常現象が各地の農村地帯で頻発したのである。無数の亡者達が活発化し始めた同年の四月上旬の真夜中…。南国での出来事である。二人の旅人達が南国の最高峰とされる荒神山の頂上にて一休みする。
「もう少しで目的地の村里に到達するが…今夜は荒神山の頂上で一休みだな…」
大柄の旅人は疲れ果てた様子であり頂上の大岩へと腰掛ける。
「今夜は此処で野宿なのか?薄気味悪い場所だけど仕方ないな…」
小柄の旅人は不本意であるが…。
「俺も疲れちまったし…今夜は此処で一休みするかな…」
『本当は宿屋で一泊したい気分だけど…今夜だけは止むを得ないか…』
小柄の旅人も大岩へと腰掛けたのである。すると大柄の旅人が周囲を警戒した様子で恐る恐る…。
「近頃の噂話だけどさ…」
「噂話だと?」
小柄の旅人は興味深そうな様子で反応する。
「荒神山には神出鬼没の妖怪達が出現するらしいぞ…」
「はっ?妖怪だって?」
『妖怪なんて面白くない冗談だな…』
小柄の旅人は大柄の旅人の発言内容に拍子抜けした様子であり呆れ果てる。
「何が妖怪達だよ…所詮妖怪なんて根も葉もない子供騙しだろうが…荒唐無稽の物の怪が本当に存在するのであれば遭遇したいぜ…」
呆れ果てた小柄の旅人は妖怪の存在を全否定したのである。
「普通は否定するよな…妖怪なんて荒唐無稽だし…」
「妖怪が如何したよ?」
小柄の旅人は恐る恐る大柄の旅人に問い掛ける。
「東国での噂話だが…」
問い掛けられた大柄の旅人は恐る恐る返答したのである。
「本物の妖怪を口寄せさせられる禁断の秘術が存在するらしいぞ!」
小柄の旅人は一瞬興味深そうな様子で反応する。
「妖怪を口寄せさせられる禁断の秘術だと?」
大柄の旅人は再度恐る恐る…。
「怪談百鬼伝説だったかな?妖怪を口寄せ出来る秘術は…」
「怪談百鬼伝説だって?」
怪談百鬼伝説とは摩訶不思議の妖怪を口寄せ出来るとされる禁断の秘術の一種である。怪談を百話口述すると神出鬼没の妖怪を口寄せ出来るとされ…。怪談を合計百話口述した人間は一生涯呪詛されるとの内容である。
「百話の怪談百鬼伝説で荒唐無稽の物の怪を出現させられるらしいぞ!」
大柄の旅人は笑顔で発言する。
「荒唐無稽の物の怪ね…」
一方の小柄の旅人は呆れ果てる。
『怪談百鬼伝説なんかで本物の物の怪を口寄せ出来るって?正直胡散臭いな…』
小柄の旅人は怪談百鬼伝説の内容が内心胡散臭いと感じる。
「本当なのか?怪談百鬼伝説だけで荒唐無稽の妖怪を出現させられるのか?」
小柄の旅人は呆れ果てた表情で問い掛ける。
「単なる噂話だぞ…本当に怪談百鬼伝説なんかで本物の妖怪を口寄せ出来るか如何なのかなんて不明瞭だが…」
すると小柄の旅人は再度興味深くなったのか満面の笑顔で…。
「此奴は面白そうな話題だな!暇潰しに実行するか?怪談百鬼伝説とやら!?」
「えっ!?あんたは本気かよ!?」
大柄の旅人は戦慄したのである。
「折角の機会だし…面白そうだぜ!」
一方の小柄の旅人は笑顔で発言する。
「妖怪が存在するのか如何なのか…今回の秘術で明確化出来るぞ!如何するよ?」
「仕方ないな…」
大柄の旅人は内心不本意であるが…。
『妖怪が本当に存在するなら…一度は遭遇したいな…』
内心神出鬼没の妖怪が俗界に存在するのか気になったのである。
「一先ずは俺から先行するぜ!此処からは一話ずつ口述するぞ…」
「嗚呼…」
小柄の旅人は怪談を口述し始める。
「大昔の出来事だが…」
彼等は一話ずつ架空の怪談を面白おかしく交互に口述したのである。荒唐無稽の怪談を開始してより三時間後…。百話の怪談百鬼伝説は終了したのである。
「荒唐無稽の妖怪が…出現するのかな?」
大柄の旅人は恐る恐る問い掛ける。
「如何だろうか?」
周囲は非常に物静かであり風音が響き渡る。
「出現するなら…出現しやがれ!物の怪!」
小柄の旅人は大声で威嚇する。二人の旅人は周囲を警戒したのである。数分間が経過するのだが…。
「別に何も…出現しないな…」
大柄の旅人は警戒した様子で発言したのである。
「やっぱり妖怪なんて出鱈目だったな!今回の秘術で荒唐無稽の妖怪は存在しないって証明されたぞ!」
今度は小柄の旅人が笑顔で発言する。
「結局…妖怪なんて出鱈目だったみたいだな…」
「当然だろう!荒唐無稽の妖怪なんか存在するかよ!」
二人は荒唐無稽の妖怪が架空の存在であると認識出来…。安堵したのである。
「今度こそ休眠するか…先程から怪談三昧で疲れちまったぜ…」
「俺も疲れちまったからな…一休みして…」
彼等は休眠する直前…。極度の寒気からか身震いし始める。
「寒気だろうか?」
すると周囲より無数の気配を感じる。
「気配…人気なのか?」
「一体何が?如何して気配が…」
彼等は極度の違和感により気味悪くなる。恐る恐る背後を直視するのだが…。
「何も存在しないな…妖怪が出現するのか?」
大柄の旅人は周囲を警戒したのである。
「多分疲労の所為だろうよ…やっぱり妖怪なんて俗界には存在しないからな!」
全身が身震いした様子であるものの…。小柄の旅人は俗界に妖怪は存在しないと断言したのである。
「所詮妖怪なんて子供騙しだよ!非現実的で荒唐無稽過ぎる…気にするな!」
小柄の旅人が断言した直後…。
「ん?えっ…」
頂上の地面より無数の人影が出現する。
「此奴は…現実なのか?」
周辺は暗闇の真夜中により正体こそ不明であるが…。周辺の地中より出現した人影が人外なのは確実である。正体不明の無数の人影は二人の旅人に殺到する。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
二人の旅人は殺到する正体不明の人影から一目散に逃亡したのである。
第二話
真夜中
南国に聳え立つ荒神山にて正体不明の化身が出現してより数日後…。煌びやかな赤色の着物姿の女性が一人で問題の荒神山を視察する。
『目的地の南国に到着したわね…』
童顔の女性は真夜中の暗闇の村道を一人だけで直行したのである。女性は無報酬の不寝番として活動…。彼女の名前は不寝番の【月影桜花姫】である。
『荒神山では…一体何が発生したのかしら?』
月影桜花姫とは表向きのみであれば西国出身の小町娘であるが…。自身を悪霊捕食者と自称する。無所属の不寝番である。桜花姫は強大なる妖術を駆使しては多種多様の超常現象は勿論…。無数の亡者達による数多くの怪異事件を解決させた功労者である。数多くの快挙によって桜花姫の名前は国全体に知れ渡り…。不寝番の桜花姫の名前を知らない人間は実質皆無であると断言出来る。外見のみなら人一倍容姿端麗の童顔美少女であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅は非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。桜花姫の最大の特徴である煌びやかな赤色の着物は桜吹雪と多種多様の花柄模様であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の頭髪装飾が確認出来る。桜花姫は背丈が小柄であるものの…。大人びた様子であり非常に颯爽とした雰囲気である。南国の村里に到達した桜花姫は南国の中心部に聳え立つ荒神山を確認する。
『中心部の大山が噂話の荒神山かしら?』
こんなにも人間的雰囲気の桜花姫であるが…。彼女自身は人間の血族とは無縁の超自然的生命体であり妖女の母親と人間の父親の混血である。両目の瞳孔が半透明の血紅色である理由も純血の妖女である母親の血統が影響する。
『久方振りの夜遊びだからね!今夜は思う存分に大暴れしましょう!』
専門用語の一種とされる妖女とは摩訶不思議なる超常現象やら多種多様の妖術を多用する人外の女性達の総称化である。人外の彼女達は肉体の天寿にこそ束縛されるものの…。半永久的に不老長寿の肉体を維持出来る。全体的に不老長寿とされる妖女だが…。人外の妖女でも一握りとされる最上級妖女であれば通常の妖女よりも妖力が桁違いに強力であり人一倍長命であると予測される。桜花姫は正真正銘最上級に君臨するとされる一握りの最上級妖女である。
『悪霊征伐なんて十二年前依頼なのよね!』
桜花姫は久方振りの悪霊征伐に大喜びする。
『神出鬼没の悪霊を発見し次第…悪霊を殲滅しちゃおうかしら?』
桜花姫は基本的に亡者の化身とされる悪霊相手には徹底的に容赦しないものの…。非力の人間やら小動物には手出ししない不殺生の判官贔屓である。余程の難局に遭遇しなければ非力の人間達には手出ししない。桜花姫自身性格的には温厚篤実である反面…。一度敵対した敵対者であれば相手が人間の子供であろうと徹底的に容赦せず性格は非常に無慈悲である。
『久方振りの悪霊征伐だし…今回は妖術を連発しちゃおうかしら!今夜は面白くなりそうね!』
桜花姫は肉体的には非常に愚鈍であり人一倍ひ弱である反面…。妖力は天下無双の百人力とされ其処等の妖女とは桁外れに強大である。
『悪霊が出現したとしても…村人達は大袈裟なのよね…』
桜花姫にとって神出鬼没の悪霊とは恐怖の対象ではなく如何して村人達が神出鬼没の悪霊に恐怖するのか理解出来ない。
『こんなにも他愛無い超常現象なのに村人達は不必要に戦慄しちゃって…』
桜花姫は神出鬼没の不吉なる超常現象に遭遇しても戦慄しないものの…。非常に無鉄砲で無計画であり悪戦苦闘の場面も頻回である。
『私自身はこんな暗闇の山道なんて平気だけれども…荒神山って普通の人間であれば誰でも戦慄しそうな雰囲気でしょうね…』
桜花姫は娯楽の感覚で暗闇に覆い包まれた荒神山の天辺へと到達する。周囲は非常に物静かな空気であり僅少の風音が山道に響き渡る程度である。
『荒神山の頂上は意外と物静かな場所みたいね…』
桜花姫は周囲を警戒し始め…。恐る恐る暗闇の山道を移動したのである。
「空気が重苦しいわね…」
『神出鬼没の悪霊が出現するかしら?』
悪霊とは亡者達の怨念が実体化した超自然的存在の一種であり俗界の生者を怨敵として憎悪…。俗界の人間達を敵対視する。戦乱時代以前の古来の伝承でも悪霊が出現した記録は数多く存在するものの…。大勢の人間達が殺し合った戦乱時代以降から悪霊の出現頻度が倍増したのである。悪霊は神出鬼没であり突如として各地の村里にて出現…。大勢の村人達を襲撃したのである。基本的に神出鬼没の悪霊は亡者が実体化した超自然的存在として認識されるが…。片田舎の地方によっては単純に荒唐無稽の妖怪やら物の怪とも表現される。桜花姫が悪霊の出現を警戒した直後…。
「えっ?」
山上の天辺から人気を感じる。
「人気だわ…」
『如何してこんな場所に人気が?』
気になった桜花姫は早急に荒神山の山上へと移動したのである。
「えっ?何かしら?」
すると天辺の中心地には小柄の人影らしき物体が確認出来…。
『人影みたいだけど…』
桜花姫は恐る恐る小柄の人影らしき物体に接近し始める。
『如何やら人影の正体は人間っぽいわね…』
小柄の人影らしき物体とは人間だったのである。
『こんな真夜中に誰かしら?』
頂上の人物が常人とは無縁であると感じるものの…。桜花姫は非常に警戒した様子で恐る恐る荒神山頂上の中心地へと近寄ったのである。
「はぁ…」
『誰かと思いきや…』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る頂上の人物に問い掛ける。
「あんたは一体何者なのよ?」
頂上に存在する人影の正体とは小柄の体格の僧侶だったのである。
『人間の僧侶っぽいわね…』
桜花姫は人影の正体が人間の僧侶である事実に一安心する。
「ひょっとしてあんたは僧侶かしら?」
僧侶は非常に物静かな紳士的雰囲気であり表情は無表情であるものの…。
「大変失礼しましたね…私の名前は僧侶の【八正道】ですよ…」
八正道と名乗る僧侶は紳士的に謝罪したのである。
「あんたは人間の僧侶だったのね…一瞬悪霊と勘違いしちゃったわよ…」
「私を神出鬼没の悪霊と勘違いされたのですね…娘さんが戦慄されたのであれば大変失礼しました…」
桜花姫は満面の笑顔で即答する。
「私は別に悪霊なんかで戦慄しないわよ…神出鬼没の悪霊は平気だからね!」
すると八正道は恐る恐る…。
「大変恐縮なのですが…ひょっとすると娘さんは芸妓さんでしょうか?」
桜花姫は八正道と名乗る僧侶の自身に対する花魁発言に苛立ったのである。
「なっ!?誰が芸妓ですって!?勘違いしないでよね!私は単なる小町娘よ…」
桜花姫に怒号された八正道は即座に謝罪する。
「大変失礼しました…ですが貴女様みたいな容姿端麗の娘さんがこんなにも不吉の荒神山で一体何を?」
「えっ?」
『私が容姿端麗ですって!?』
桜花姫は八正道の容姿端麗の発言に内心大喜びしたのである。
「あんたの名前は八正道様だったかしら?こんな私が容姿端麗なんて八正道様は非常に大袈裟ね!」
桜花姫は八正道の質問に即答する。
「私は神出鬼没の悪霊捕食者の妖女だからね!今回は荒神山で頻発する超常現象を追跡中だったのよ!」
「貴女様は崇高なる妖女だったのですか…」
近頃南国に聳え立つ荒神山では不吉なる超常現象が合計十四件も発生したのである。荒神山は不吉の名称であるものの…。荒神山の天辺から眺望出来る南国の村里の景色は非常に絶景である。観光地としては勿論…。大勢の旅人達が荒神山の頂上で野宿するのは定番であり野営目的としても大人気である。現代でこそ荒神山は平穏の観光地として有名であるが大昔の戦乱時代…。荒神山は五百年前の戦乱時代では各戦場で戦死した戦死者達やら大飢饉によって餓死した領民達の火葬場として利用されたのである。戦乱時代に成仏出来なかった神出鬼没の亡者達の目撃情報が噂話として南国全域に出回る。各地方の武士達やら桃源郷神国全域を実効支配する東国武士団にも荒神山に出没した悪霊征伐の依頼が殺到したのである。数多くの討伐依頼が殺到するのだが東国の武士団は勿論…。各地方の武士団も静観状態であり悪霊関連の問題には実質放置状態だったのである。
「娘さんは荒神山で発生した超常現象を追跡中だったのですね…」
「近頃は国全体で超常現象が頻発し始めたからね!」
「近頃は大変物騒ですからね…亡者達が各地で徘徊中なのですね…」
一時期では神出鬼没の悪霊事件は沈静化した状態であったが…。近頃では無数の悪霊による怪異事件が各地の村里で多発化し始めたのである。
「僧侶の私に法力が扱えれば無数の悪霊を浄化出来るかも知れませんが…生憎私自身は法力を扱えませんからね…」
八正道は列記とした僧侶であるのだが…。法力を使用出来ない。
「如何やら私は修行不足でしょうね…」
「法力ね…頑張って修行し続けたとしても法力を扱えるのは一握りの僧侶だけだし仕方ないわよ…」
悪霊を消滅させられる程度の法力を扱えるのは実質一握りの僧侶とされる。
「であれば調理を開始しますかね…」
「調理ですって?」
八正道は地面の無数の石ころに野外用の土鍋を設置したのである。野外用の土鍋に多種多様の野菜類やら鹿肉は勿論…。貴重品である鯨肉と猪肉で料理する。
「折角ですし…貴女様も如何でしょうか?味見するだけでも…如何です?」
八正道は炬火によって土鍋の食材を煮付ける。
「味見ですって!?」
『味噌汁だわ!美味しそうね…』
煮込まれた土鍋の味噌汁を凝視し続ければ桜花姫も八正道の調理した味噌汁の具材を頬張りたくなる。
「八正道様の夕食かしら?美味しそうな味噌汁だわ!」
桜花姫は無我夢中に土鍋の味噌汁を凝視し続けたのである。
「炭火の鶏肉も如何でしょうか?麦飯も用意しますよ…」
「えっ!?私にも!?」
桜花姫は一瞬困惑するものの…。
『大変美味そうだからね!』
桜花姫は食欲が急上昇し始める。
「折角だし…空腹だから私にも食事させてね!御免あそばせ!」
人一倍食いしん坊の桜花姫は手渡された味噌汁を即座に平らげる。
「娘さんは相当空腹だったのですね…」
八正道は味噌汁を一瞬で平らげた桜花姫を直視し始め…。
『一瞬で味噌汁を平らげるなんて…』
想像以上の光景に苦笑いしたのである。
「非常に美味だったわよ!最高ね!八正道様…真夜中の山中でこんなにも御馳走出来るなんて!」
桜花姫は満足気に炭火の鶏肉を頬張り始める。
「娘さん…飲料水は如何でしょうか?水分補給は大事ですからね…」
八正道は恐る恐る瓢箪を桜花姫に手渡したのである。
「瓢箪?ひょっとして梅酒かしら?私は酒類が人一倍大嫌いなのよね…」
桜花姫は酒類が人一倍苦手であり微量であっても酒類を摂取すると気味悪くなる。
「大丈夫ですよ…単なる緑茶ですから一安心しなされ…」
「緑茶なら一安心だわ!」
すると八正道は恐る恐る問い掛けたのである。
「娘さん?大変失礼なのですが…私は娘さんの名前を知りたくなりました…貴女様の名前は?如何しても無理であるなら娘さんは名乗らずとも構いませんが…」
桜花姫は八正道の問い掛けに満面の笑顔で即答する。
「私の名前は桜花姫!不寝番の月影桜花姫よ!」
物静かな様子の八正道であるが…。
「えっ!?不寝番の月影桜花姫様ですと!?」
桜花姫が自身の名前を名乗ると八正道は大変驚愕した様子で反応したのである。
「ひょっとして貴女様が多種多様の超常現象を解決させた伝説の最上級妖女…月影桜花姫様でしたか…」
「勿論よ♪」
『こんな見ず知らずの人間の僧侶にも…私の名前が知られるなんて♪』
桜花姫は内心大喜びする。
『私は有名人ね♪』
一方の八正道は最上級妖女の桜花姫との対面に多少緊張するものの…。
「ですがこんなにも不吉の荒神山で最上級妖女である月影桜花姫様と対面出来るなんて…大変光栄ですな♪ひょっとすると桜花姫様との対面は運命なのかも知れませんね…」
「運命なんて…八正道様は大袈裟ね♪」
すると桜花姫も八正道に問い掛ける。
「八正道様はこんなにも暗闇の荒神山で一体何を?」
八正道は暗闇の夜空を眺望したのである。
「山中での夜食は私にとっての道楽ですかね…」
「道楽ですって?」
「私にとっては自然界での食卓こそが醍醐味なのですよ♪春夏秋冬の季節の変化…常日頃から森林浴の音色…川水の風音は精神的にも肉体的にも非常に沈静化されましょう…こんなにも殺伐とした雰囲気の荒神山でも…邪心が浄化されますよ…」
「邪心が浄化ですって?如何にも聖職者っぽい主義主張だわ…」
『八正道様は典型的に堅苦しそうな人間みたいね…』
桜花姫は内心八正道の思考を堅苦しく感じる。
「想像力は十人十色多種多様ですからね…」
八正道は無表情で広大無辺の夜空を眺望したのである。
「無数の星月夜が認識出来る森羅万象とは非常に広大無辺ですな…摩訶不思議の森羅万象には圧倒されますよ…」
「えっ?はぁ…」
『八正道様…非常に失礼なのかも知れないけれど…愚鈍の私には何が何やら全然理解出来ないわ…』
桜花姫は八正道の発言に困惑する。
「広大無辺の森羅万象とは非常に興味深い超常現象ですな…私達人類はこんなにも広大無辺の森羅万象を解明出来るのでしょうか?」
「えっ…」
桜花姫は八正道の発言に困惑し続けるものの…。
『八正道様は…一体何を発言したいのかしら?』
桜花姫は無言で首肯したのである。すると八正道から意味深の発言を拝聴する。
「近頃…私の寺院近隣の墓場は勿論ですが…各地の墓場から不吉の気配を察知しましてね…」
無表情だった八正道の表情が一瞬険悪化したのである。
「不吉の気配ですって?一体何かしら?」
「近頃…不運にも大勢の村人達が息絶えたのでしょうね…極度の胸騒ぎを感じるのですよ…」
「大勢の村人達が息絶えた?胸騒ぎですって…」
桜花姫は無表情で反応する。
「死去された亡者達の怨恨なのでしょうか?非常に無念ですね…」
「ひょっとすると悪霊の仕業かも知れないわね…」
すると突如として不穏の空気が荒神山全域を覆い包んだのである。
『先程から悪霊の気配が…荒神山に悪霊が出現したのかしら?』
桜花姫は不吉の霊気を感じる。
「非常に戦慄だわ…亡者達の気配を感じるわ…」
「桜花姫様?今夜は悪霊の追跡を継続されるのですか?」
「勿論♪悪霊の追跡は継続するわよ!神出鬼没の悪霊と遭遇したとしても最上級の妖女である私が問答無用で悪霊を征伐しちゃうからね!」
「最上級妖女である桜花姫様が悪霊を征伐されるのであれば一安心ですな…」
桜花姫は荒神山の天辺で八正道と対談し続けても無意味であると判断…。
「八正道様…御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で八正道に謝罪する。
「桜花姫様…如何されましたか?」
「私は常日頃から悪霊征伐で大忙しだからね…即刻今回の超常現象の主原因を特定しないと…」
桜花姫は即座に超常現象を追跡したのである。
「桜花姫様…」
『私は是非とも桜花姫様の上首尾を見届けなくては…』
八正道は桜花姫を見届ける。
「ですが不思議ですね…」
『桜花姫様とは邂逅は…前世の因果だったのかも知れませんね…』
八正道にとって桜花姫との邂逅は必然だったのではと感じる。無意識にも涙腺から涙が零れ落ちる。
第三話
死闘
桜花姫は警戒した様子で山道を通行する。
『先程よりも気味悪くなったわね…』
周辺は非常に物静かな自然林であるものの…。
『真夜中の森林は悪霊の魔窟みたいだわ…』
普段は観光地として有名であるが真夜中の荒神山は闇夜の魔窟同然であり極度の不吉さと殺伐さを感じさせる。
『此処では何が出現しても可笑しくない雰囲気ね…』
すると自身の背後より無数の気配が自身に急接近するのを察知…。
「えっ…」
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後の様子を確認する。
『突然胸騒ぎが…一体何かしら?』
桜花姫は極度の胸騒ぎを感じる。同時に背後からの襲撃に警戒したのである。
『一体何が出現するのかしら?』
恐る恐る背後からの襲撃を警戒し続けるのだが…。
『此処では人間の気配は感じられないわね…』
周辺の自然林は漆黒の暗闇であり自身の背後には何も確認出来ない。
『ひょっとして私の勘違いだったのかしら?』
桜花姫は自身の誤認識かと思いきや…。
「えっ!?」
何やら背後の地面より無数の殺気を感じる。
『何かしら?』
桜花姫は無数の殺気に再度警戒する。
「地面?」
『無数の気配は地面からだわ…一体何が出現するのかしら?』
背後の地面より小柄の人影が無数に出現したのである。
『此奴は神出鬼没の悪霊!?』
無数の人影は真夜中の暗闇によって姿形の認識が非常に困難であるものの…。正体不明の人影は極度の腐敗と悪臭により神出鬼没の悪霊であると再認識したのである。人影は全身が血塗れの状態であり皮膚の腐敗が原因なのか両目からは眼球が噴出する。彼等の下腹からは体内の臓物が噴出した醜悪なる姿形…。全体的に皮膚と人骨のみの肉塊であり非常にどす黒い醜悪なる風貌である。
『彼等は死滅した亡者達の末路だわ…』
体格的には成人の女性よりも一回り小柄であり初生児の体格であるものの…。姿形による老若男女の判別は出来ない。
『死臭かしら?』
彼等の体表からは死臭らしき悪臭が周囲の空間全体より充満する。彼等の身動きは非常に鈍足であり発語も支離滅裂である。
「悪臭から判断して…」
『彼等は悪霊の【悪食餓鬼】かしら…』
悪食餓鬼とは大昔の戦乱時代…。再起不能の疫病やら飢饉による無念の衰弱死から悪霊へと変貌した醜悪なる亡者達の総称化である。埋葬されなかった悪影響により未来永劫成仏出来ないらしく俗界の各地にて半永久的に徘徊し続ける。彼等の性質上非常に強欲であり極度の空腹感からか生者と遭遇すると即刻敵対視…。悪食餓鬼は新鮮なる人間の生身の血肉を無我夢中に捕食する。新鮮なる人間の生身の血肉こそ悪食餓鬼にとっての嗜好品であり捕食こそが彼等の共通性である。南国の地方では別称として疫病神やら飢餓の亡霊とも呼称される。
『悪食餓鬼の大群なんて久方振りだわ!』
悪食餓鬼の大群は身動きが非常に緩慢であるものの…。彼等は人海戦術により無抵抗の桜花姫へと殺到する。
『即刻面白くなったわね!』
普通の人間であれば極度に戦慄する状況下であるものの…。
『私に大勢で真剣勝負なんて軽佻浮薄だわ!』
桜花姫は無数の悪霊との遭遇を娯楽的に感じられる。
『悪霊は悪霊でも…雑魚の悪食餓鬼が相手なら片手間の妖力で仕留められるわ!』
桜花姫は咄嗟に妖術を発動…。
『神性妖術…』
血紅色であった両目の瞳孔が半透明化した瑠璃色の碧眼へと変化したのである。
『〔天道天眼〕…発動!』
天道天眼とは自然界を翻弄出来る屈指の神性妖術であり多種多様の超常現象を無制限に発動出来るとされる。天道天眼を発動すると妖力が一時的に通常の状態よりも数百倍から数千倍へと急上昇させられる。天道天眼を開眼した妖女は念力の妖術やら摩訶不思議の超常現象は勿論…。応用出来れば現存する多種多様の超自然を自由自在に発揮出来る。天道天眼から発動される妖術は非常に怪力乱神であり噂話では広大無辺の森羅万象をも翻弄させる超自然的超常現象を実現化させられるとも…。存命中の妖女でさえも天道天眼の秘密は不明瞭であり誰一人として明確化出来なかったのである。特定の地方では別名として万能の眼光やら神族の眼光とも呼称される。月影桜花姫が一握りの最上級妖女として認識されるのも神性妖術の天道天眼の影響である。
『私も人気者だわ♪』
彼等が桜花姫の近辺へと到達する寸前…。天道天眼の発動によって殺到し続ける悪食餓鬼の皮膚が超高温の熱量を発生させる。同時に悪食餓鬼は火炎の妖術によって焼殺されたのである。
『醜悪なる亡者達…あんた達は成仏しなさい♪』
悪食餓鬼の肉体は高熱の発火現象によって一瞬で黒焦げに焼殺される。
『悪霊でも所詮は悪食餓鬼…楽勝だったわ♪』
桜花姫の佇立する地面周辺には黒焦げに焼殺された無数の悪食餓鬼の焼死体が周辺の地面を埋没させたのである。
『やっぱり他愛無いわね!神出鬼没の悪霊でも微弱の悪食餓鬼程度が相手なら…火炎の妖術だけでも容易に仕留められちゃうわね!』
すると桜花姫の背後から無数の霊気が感じられる。
「えっ?」
『今度は何かしら?』
背後の地面より無数の悪食餓鬼が出現したのである。
『今度も悪食餓鬼の大群みたいだわ…』
背後から無数の悪食餓鬼が桜花姫に殺到する。
「あんた達は鬱陶しい奴等ね…」
一方の桜花姫は無数の悪食餓鬼に一瞬苛立った様子であるが…。
「あんた達は命知らずだわ…氷結するのね!」
桜花姫の妖力によって彼等の肉体が一瞬で凍結化したのである。氷結の妖術により無数の悪食餓鬼は身動き出来なくなる。
「あんた達も成仏しなさい!」
全身が凍結し始めてから数秒後…。
『念力の妖術…発動!』
桜花姫は念力の妖術によって凍結化した悪食餓鬼の肉体を完膚なきまでに粉砕させる。凍結化した彼等の肉体は一瞬で崩れ落ちたのである。
「えっ?」
今度は悪食餓鬼とは別物の霊気を感じる。
『今度は何が出現するのかしら?悪食餓鬼とは別物みたいだけど…』
すると目前の地面より戦乱時代の甲冑を装備した巨体の人骨が出現したのである。
『此奴は鎧兜の人骨だわ…随分巨体ね…』
甲冑の人骨は非常に巨体であり背丈は大柄の成人男性をも一回り上回る。
『此奴はひょっとして…戦死者達の悪霊【骸骨荒武者】かしら?』
骸骨荒武者とは戦乱時代にて度重なる戦闘で息絶えた戦死者達の無念の集合体とされる。武者を連想させる悪霊である。特定の地域では骸骨荒武者は別名として髑髏武将とも呼称される。悪食餓鬼と同様に骸骨荒武者も俗界の生者を敵対視する。
『こんな場所に埋葬されなかった戦死者達の亡霊が出現するなんてね…』
骸骨荒武者は右手の刀剣で桜花姫に斬撃するものの…。骸骨荒武者の身動きは非常に鈍足であり人一倍身体能力が愚鈍の桜花姫でも容易に回避出来る。
『危機一髪だったわ…』
桜花姫は骸骨荒武者から恐る恐る後退りしたのである。
「戦乱時代の戦死者達…成仏するのね…」
桜花姫は骸骨荒武者に砂金の妖術を発動する。
「あんたは砂金に変化しなさい!」
砂金の妖術を発動した影響により骸骨荒武者の肉体を砂金に変化させたのである。全身が砂金に変化させられた骸骨荒武者の肉体は一瞬で崩れ落ちる。
『所詮骸骨荒武者も他愛無いわね!』
桜花姫は骸骨荒武者を仕留めると一安心するのだが…。
「えっ?」
暗闇の背後より複数の霊気が自身に近寄り続けるのを感じる。
『今度も霊気かしら?』
警戒した桜花姫は恐る恐る背後の様子を確認する。すると桜花姫の背後には三体もの骸骨荒武者が出現したのである。
『骸骨荒武者だわ…今度は三体も出現するなんてね…』
桜花姫にとって悪霊を仕留めるのは余裕であるものの…。
「はぁ…」
先程から出現し続ける悪霊が鬱陶しく感じる。
『鬱陶しい奴等ね…』
桜花姫は体内の妖力を収縮…。両手に高熱の火球を形成したのである。
「巨体のあんた達も…成仏しなさい!」
形成した高熱の火球を発射…。一体の骸骨荒武者を粉砕する。
『今度は骸骨荒武者を二体とも仕留めましょう!』
桜花姫は二体の骸骨荒武者を仕留める直前である。
「えっ!?」
暗闇の背後から何者かにより火縄銃で銃撃され…。一発の銃弾が桜花姫の背中を貫通させたのである。
「ぐっ!」
桜花姫は背後から火縄銃で狙撃され地面に横たわる。
『背後から狙撃されるなんて…迂闊だったわ…』
背後からの銃撃によって背中の傷口からは大量の鮮血が流れ出る。
『一体誰が…狙撃したのよ?』
暗闇の自然林より火縄銃を武装した一体の骸骨荒武者が出現する。暗闇の自然林より桜花姫の背後から無防備状態の桜花姫の背中を狙撃したのである。骸骨荒武者は鈍足の身動きで地面に横たわった状態の桜花姫に近寄り始める。
『彼等は私を如何するのかしら?』
二体の骸骨荒武者も地面に横たわった状態の桜花姫に接近すると護身用の刀剣を抜刀し始める。
『骸骨荒武者に殺されちゃうわね…兎にも角にも一か八かよ!』
彼等に攻撃される寸前に桜花姫は分身の妖術を発動…。血塗れの肉体から白煙が発生したと同時に桜花姫の姿形が一瞬で消滅する。三体の骸骨荒武者は突然姿形が消滅した桜花姫に動揺し始め…。彼等は周囲を警戒したのである。
「残念だったわね!あんた達が攻撃したのは私の分身体なのよ!」
暗闇の自然林から桜花姫の本体が出現し始め…。
「亡者達!成仏なさい!」
桜花姫は両手より高熱の雷撃の妖術を発動したのである。雷撃の妖術によって三体の骸骨荒武者を撃破出来…。彼等を完膚なきまでに仕留めたのである。
『骸骨荒武者は退治出来たわね!』
すると荒神山の無数の悪霊を全滅させた影響からか突如として荒神山から感じられた重苦しい霊気が感じられなくなる。
『悪霊の霊気が感じられなくなったわ…』
桜花姫は周囲を警戒するも悪霊が出現する気配は感じられない。
「如何やら荒神山に蔓延中の骸骨荒武者と悪食餓鬼の大群は全滅したみたいね…」
『荒神山の超常現象は無事解決だわ!』
一安心した桜花姫は恐る恐る荒神山から脱出したのである。
第四話
傷薬
骸骨荒武者と悪食餓鬼の大群との死闘から数分間が経過する。桜花姫は暗闇の山道を移動中…。
「えっ?」
とある山中の獣道にて小柄の老婆と小柄の美少女に遭遇する。
『こんな真夜中の夜道に何者かしら?』
彼女達は非常に小柄の体格である。
「あんた達は薬屋の【蛇体如夜叉】婆ちゃんと山猫妖女の【小猫姫】かしら!?」
「えっ!?ひょっとして桜花姫姉ちゃんなの!?」
小猫姫は純血の山猫の妖女であり外見的には人間の美少女とも間違えられる。彼女は蛇体如夜叉の孫娘であり桜花姫にとっては身内同然の妹分である。
「蛇体如夜叉婆ちゃん!桜花姫姉ちゃんだよ!」
小猫姫は桜花姫との遭遇に大喜びする。
「こんな真夜中の夜道に誰と遭遇したかと思いきや…あんたは最上級妖女の月影桜花姫ちゃんだね?」
蛇体如夜叉は真夜中の山道を一人で出歩く桜花姫に一瞬呆れ果てるものの…。
「久方振りだね桜花姫ちゃん…あんたが元気そうで安心したよ!」
蛇体如夜叉は桜花姫との再会に大喜びする。
「あんた達こそ!」
一方の桜花姫も久方振りの蛇体如夜叉と小猫姫との再会に大喜びしたのである。
「こんなにも暗闇の荒神山で最上級妖女の桜花姫ちゃんと出くわしちゃうなんて奇遇だね…」
蛇体如夜叉は神族と命名される人外種族の一人であり異名は蛇神とも呼称される。蛇体如夜叉は外見のみなら小柄の人間の老婆であり村里の村人達からは小柄の人間の老婆とも間違えられる。神族とは太古の大昔より世界各地に君臨したとされる超自然的存在の一種であり俗界では人外の少数種族である。神族は多種多様の姿形に変化が可能であり蛇体如夜叉は基本的に人前では小柄の老婆の姿形で活動する。太古の古代世界では大勢の神族が世界各地で活動中であったが…。現代では絶滅状態であり蛇神の蛇体如夜叉を除外する神族は皆無である。唯一純血の神族として断定出来るのは桃源郷神国出身者である蛇体如夜叉…。純血の神族は実質彼女のみである。一方蛇体如夜叉の同行者である小猫姫は蛇体如夜叉にとって孫娘であり唯一の家族であるものの…。小猫姫自身は正真正銘の純血の妖女であり神族とは無縁の孤児である。
「あんた達はこんなにも暗闇で物騒なのに大丈夫なのかしら?」
「私は大丈夫だよ♪桜花姫姉ちゃん♪真夜中の夜道は面白いもん!」
小猫姫は真夜中でも平気なのか満面の笑顔で断言する。
「桜花姫ちゃん…あんたみたいな人一倍容姿端麗の小娘が真夜中の夜道を単独で出歩くなんて…人間の小娘なら悪霊に食い殺されるだろうね…」
「こんな私が容姿端麗なんて♪蛇体如夜叉婆ちゃんは大袈裟よね♪」
『私が容姿端麗ですって♪』
桜花姫は蛇体如夜叉に大袈裟と表現するも内心では大喜びしたのである。
「私は毎日が任務で大忙しだからね…真夜中の夜道なんて平気よ!」
「桜花姫姉ちゃんの任務って?」
小猫姫は不思議そうな表情で桜花姫に問い掛ける。
「私の任務はね…とある客人との夜遊びなのよ♪」
桜花姫は満面の笑顔でとある客人との夜遊びと返答したのである。
「夜遊びって面白いのかな?蛇体如夜叉婆ちゃん?」
小猫姫は不思議そうな表情で蛇体如夜叉に問い掛けるのだが…。
『夜遊びって…桜花姫ちゃんは…純粋無垢の小猫姫には悪影響だね…』
蛇体如夜叉は桜花姫の返答に呆れ果てる。
「蛇体如夜叉婆ちゃん?」
「小猫姫…」
蛇体如夜叉は真剣そうな表情で問い掛ける小猫姫に困惑したのである。夜遊びと発言する桜花姫に蛇体如夜叉は呆れ果てた表情で苦笑いする。
「桜花姫ちゃんは今回も悪霊征伐かね?こんなにも不吉の真夜中にあんたも勇猛果敢だね…」
「別に…私自身悪霊征伐は面白いから大丈夫なのよ!内心私にとって悪霊征伐なんて常日頃の道楽だからね!」
桜花姫は満面の笑顔で即答したのである。
「道楽って表現するのは桜花姫ちゃんらしいね!あんたが悪霊征伐の悪影響で過労死しちゃったら大変だからね…私の傷薬でも必要不可欠かな?」
「残念だったわね!私には凡庸の傷薬なんて不必要なのよ…何よりも私にとっての傷薬は私自身の妖力だからね!私の妖力は万能の傷薬なのよ!」
桜花姫は自身の妖力の強大さを自慢する。
「蛇体如夜叉婆ちゃんこそ常日頃の薬品の研究なんかで過労死しないでよ!」
「あんたが心配せずとも私は過労死しないよ…最上級妖女の桜花姫ちゃんには私の傷薬は不必要みたいだね…」
『桜花姫ちゃんには私の傷薬が不必要だったか…』
蛇体如夜叉は内心残念がったのである。
「達者でね!桜花姫姉ちゃん!」
「あんた達こそ達者でね!蛇体如夜叉婆ちゃん!小猫姫!」
すると蛇体如夜叉と小猫姫は暗闇の荒神山より退去する。
『私も即刻…西国の村里に戻ろうかしら…』
桜花姫は祖国である西国の家屋敷へと無事に戻ったのである。
第五話
天神山
西国の領内には天神山と命名される裏山が存在する。荒神山での亡者達との戦闘から三日後の真夜中の時間帯である。
「えっ…」
不寝番の桜花姫は自宅の居室で寝転び続けるのだが…。不吉の霊気に反応する。
『複数の霊気だわ…一体何かしら?』
西国の故山である天神山から複数の霊気を感じる。
『場所は…近隣の天神山みたいね…』
天神山とは太古の大昔に天空の女神が降臨したとされる伝説から天神山と命名されたのである。十数年前は天神山に七軒もの集落家屋が建築され村人達が住居したものの…。今現在は無人の廃屋のみが残存した状態であり居住者達の行方は不明とされる。行方不明者達の捜索は継続中であるが…。今現在でも居住者達の消息は確認出来ない現状である。居住者達は神出鬼没の悪霊によって食い殺されたのではと噂話が西国全域に出回り始める。真相が気になった桜花姫は即座に問題の天神山へと直行する。桜花姫の自宅から天神山への距離は三町程度であり比較的近辺だったのである。
『如何やら天神山に悪霊が出現したみたいね…』
自宅から移動してより十数分後…。桜花姫は天神山の近辺に到達したのである。
『胸騒ぎだわ…』
天神山に接近すると極度の胸騒ぎを感じる。
「気味悪いわね…」
『天神山では一体何が出現したのかしら?』
極度の胸騒ぎに桜花姫は警戒するものの…。彼女は恐る恐る天神山の天辺へと移動したのである。暗闇の山道を移動中…。
『こんな場所に六地蔵かしら?』
山道の道端には罅割れた六地蔵が確認出来る。
『気味悪いわね…悪霊が出現しそうな雰囲気だわ…』
すると周辺の天然林より蛍光色の無数の鬼火が飛来し始める。
『無数の鬼火だわ…』
無数の鬼火は天神山の天辺に移動したのである。
『天神山の天辺に無数の鬼火…気になるわね…』
数分間が経過すると桜花姫も天神山の天辺へと到達する。天神山の天辺には荒廃した廃墟神社と劣化状態の鳥居が確認出来る。
『廃墟の神社かしら?』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る劣化状態の鳥居を潜り抜ける。
『廃墟神社から不吉の霊気を感じるわね…』
鳥居を潜り抜けたと同時に不吉の霊気を感じる。
『此処では一体何が出現するかしら?』
桜花姫は恐る恐る周辺の様子を警戒し続けるのだが…。桜花姫の周囲は蛍光色の鬼火ばかりで悪霊らしき物体は何一つとして確認出来ない。
『霊気は感じられるけれど…悪霊の正体は一体何かしら?』
直後…。
「えっ?」
『何かしら?』
背後より極度の悪寒戦慄が桜花姫の全身を膠着させる。
『何が出現したのかしら?』
桜花姫は背後を警戒し始め…。恐る恐る背後の存在を凝視したのである。
「霊気の正体は…あんただったのね…」
桜花姫の背後に出現したのは空中を浮遊し続ける女性の頭部らしき巨体の生首…。本体とされる頭部の全長は推定五尺程度であり非常に巨体である。
「あんたは悪霊の【亡霊生首】だったかしら…」
『此奴は相当気味悪いわね…』
亡霊生首とは全身の肉体が巨大頭首のみの異形の悪霊であり戦乱時代の最中大勢の匪賊達に暴行され…。最終的に斬首された女性と子供達の無念の集合体とされる存在である。亡霊生首は色白の女性の生首であるが…。頭部である本体は規格外に巨大であり不吉の大目玉が桜花姫を直視すると不吉の笑顔で微笑み始める。
『亡霊生首と遭遇したのは十四年前以来だったかしら?』
桜花姫は十四年前の少女時代にも亡霊生首の別種と遭遇したのである。
「えっ…」
すると今度は赤子らしき産声が天神山の頂上全域に響き渡る。
『今度は子供の産声かしら?』
暗闇の天然林より浮遊する赤子らしき巨体の頭首が三体も出現したのである。
『今度は子供の亡霊生首かしら?』
桜花姫は合計四体もの亡霊生首に包囲される。
『天神山の集落で村人達が行方不明なのは亡霊生首の仕業っぽいわね…』
天神山の行方不明事件は亡霊生首の仕業であると予想する。すると四体の亡霊生首は口先を開口し始め…。
「えっ!?」
桜花姫は亡霊生首の行動に警戒する。
『亡霊生首は一体何を?』
亡霊生首は周辺の鬼火を洗い浚い吸収したのである。
『亡霊生首…周囲の鬼火を吸収したわ…』
四体の亡霊生首が周辺の鬼火を吸収した結果…。先程よりも亡霊生首の霊気が強大化したのである。
『周辺の鬼火を吸収した影響かしら?先程よりも亡霊生首の霊気が増幅されたみたいね…非常に厄介そうだわ…』
桜花姫は両目を瞑目すると体内の妖力が増大化し始め…。
『天道天眼…発動!』
神性妖術の天道天眼を発動させたのである。天道天眼の効力により桜花姫の妖力が数十倍へと急上昇したのである。
『私は天道天眼さえ発動しちゃえば数多の妖術を使用出来るのよね♪』
天道天眼は伝説の神性妖術であり天道天眼を開眼した妖女は数多の妖術を発動出来…。あらゆる超自然的超常現象を発現させられる。天道天眼の発動により桜花姫の妖力は通常よりも数十倍へと増大化したのである。
「あんた達は鬱陶しいから成仏しなさい♪」
桜花姫は火炎の妖術を発動…。両手から超高温の火球を発射したのである。発射された火球は真正面に対峙する女性の亡霊生首に直撃…。女性の亡霊生首は即座に爆散したのである。周辺の地面には無数の血肉が飛散する。
『楽勝だわ♪他愛無いわね…』
親玉である女性の亡霊生首を仕留めたかと思いきや…。
「えっ?」
飛散した亡霊生首の血肉からは猛毒の黒煙が発生する。
「なっ!?」
『ひょっとして瘴気かしら?』
亡霊生首の血肉から発生した猛毒の瘴気は非常に強力であり周辺の地面を溶解させたのである。
『亡霊生首は仕留められた直後に霊能力を発動するのね…』
桜花姫は妖女と人間の混血であり多少の瘴気であれば平気であるものの…。肉体的には通常の人間と同様に脆弱である。
『私でも多少の瘴気なら大丈夫だけれど…』
桜花姫は妖力こそ随一であるが…。肉体の屈強さのみなら純血の妖女を下回る。
『私自身は勿論…西国全体が亡霊生首の瘴気で汚染されちゃうわね…』
地面の草木が猛毒の瘴気で枯死し始める。
「ぐっ!」
一方の桜花姫も猛毒の瘴気により息苦しくなる。
『瘴気かしら?息苦しいわね…』
最早瘴気によって毒死するのは時間の問題である。
『止むを得ないわね…猛毒の瘴気に対抗するなら…』
桜花姫は一か八か浄化の妖術を発動する。
『浄化の妖術…発動!』
自身の妖力で浄化の涼風を生成…。亡霊生首の血肉から発生した猛毒の瘴気を浄化の涼風で浄化させたのである。同時に浄化の涼風に影響された三体の赤子の亡霊生首が笑顔で消滅…。彼等は浄化の涼風によって成仏したのである。
『赤子の亡霊生首は成仏したみたいね♪一件落着だわ♪』
赤子の亡霊生首は成仏出来…。桜花姫は一安心する。すると先程火炎の妖術で粉砕された女性の亡霊生首は土壌へと戻ったのである。猛毒の瘴気で汚染された地面の草木が元通りに生成されたのである。
『瘴気で汚染された自然も元通りに戻ったわね♪』
天神山全域を覆い包んだ不吉の霊気も亡霊生首を浄化させた影響により消滅する。
『天神山の悪霊を征伐出来たし…』
「私は家屋敷に戻って熟睡しましょう♪」
無事に天神山の事件が解決すると桜花姫は自宅へと戻ったのである。
第六話
和菓子屋
荒神山での重苦しい闇夜から一週間後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。東国とは国内最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桃源郷神国でも比較的老熟した城下町であり全国一の歓楽街としても知られる。総人口も桃源郷神国では国内最多である。
『非常に美味だわ♪』
桜花姫は和菓子屋にて大好きな餡蜜と桜餅を頬張り始める。
『やっぱり和菓子は最高ね!』
桜花姫は無我夢中に和菓子を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
『誰かしら?僧侶っぽいわね…』
桜花姫の隣席には錫杖を所持した僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
『彼には見覚えが…』
桜花姫は恐る恐る隣席の僧侶を凝視し続ける。
『誰だったっけ?ひょっとすると僧侶は…』
僧侶らしき人物とは一週間前の闇夜の荒神山にて対面した僧侶の八正道だったのである。奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店…。八正道と再会したのである。
「ひょっとしてあんたは…僧侶の…」
桜花姫は恐る恐る僧侶らしき人物に…。
「八正道様だったかしら?」
「えっ?貴女様は?」
一方の八正道も桜花姫の存在に気付いたのである。
「誰かと思いきや…貴女様は最上級妖女の月影桜花姫様でしたか!?南国の荒神山からは無事に戻られたのですね♪」
「勿論よ♪山中の悪霊も退治出来たわよ♪」
「悪霊を退治されたので荒神山は一安心ですね♪」
八正道は荒神山の悪霊が退治され…。大喜びしたのである。
「本当に八正道様だったのね♪こんな場所で八正道様と再会出来るなんてね♪」
「本当ですね♪桜花姫様♪ですがこんな茶店で桜花姫様と再会出来るなんて非常に奇遇ですな♪」
八正道は桜花姫との再会に大喜びする。
「如何して八正道様が和菓子屋なんかに?」
「茶店で満喫するのは私にとって道楽ですからね♪」
八正道は満面の笑顔で即答したのである。
「奇遇だわ…勿論私もね♪」
桜花姫は無我夢中に机上の和菓子を頬張り続ける。
「ひょっとして桜花姫様にとっても和菓子は道楽なのですから?」
桜花姫は満面の笑顔で即答する。
「勿論よ♪私以外に和菓子を愛好する人間は存在しないでしょうけど…ひょっとすると八正道様も和菓子は好物かしら?」
八正道も笑顔で返答したのである。
「勿論私も和菓子は大好きですよ♪私にとっても和菓子屋は醍醐味ですからね♪」
すると八正道は突発的に顔色を変化させ恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「桜花姫様?」
「何かしら?八正道様?」
八正道は一瞬沈黙すると恐る恐る…。
「桜花姫様は悪霊捕食者として粉骨砕身されたと各村落の村人達から拝聴したのですがね…」
「えっ…何よ?」
八正道は一息したのである。
「近頃の噂話なのですがね…」
八正道は小声で発言し始める。
「噂話ですって?一体何かしら?」
桜花姫は即座に八正道からの噂話を拝聴する。
「近頃の出来事ですが…北国の各村落では何者かによる赤子の神隠しが頻発したらしいのですよ…」
近頃北国の村里では幼子の行方不明事件が頻発したのである。近辺の村人達は必死に行方不明の子供達を捜索するのだが…。行方不明の子供達は誰一人として発見出来なかったのである。近隣の武士団も捜索に協力するのだが…。依然として行方不明の子供達は誰一人として発見出来なかったのである。神出鬼没の悪霊による神隠しか匪賊達による人攫いであるとの根も葉もない噂話が各地の村里に出回り始める。
「赤子の神隠しですって?」
桜花姫は事件の内容に興味深くなる。
「神隠しなんて非常に興味深いわね♪一体何が原因なのかしら?」
「村人達の噂話では一昨日の出来事ですかね?神隠しが匪賊達による悪逆無道なのか…神出鬼没の悪霊の仕業なのかは不明瞭とされますが…」
「一昨日の出来事ね…」
『非常に面白そうだわ♪私の出番が到来したかしら♪』
桜花姫は突発的に闘争心が充溢したのである。
「八正道様!如何やら今回の大事件は私の出番みたいね♪」
「ひょっとして桜花姫様…」
桜花姫は満面の笑顔で即答する。
「勿論悪霊なら徹底的に征伐するわよ!人攫いの悪霊は即刻仕留めないとね♪」
「ですが桜花姫様…」
八正道は心配そうな表情で…。
「何よ?八正道様?」
「現段階では今回の神隠しの主原因が悪霊の仕業なのか如何なのかは不明瞭ですよ…極悪非道の匪賊達による人攫いかも知れませんし…神隠しが悪霊の仕業であるとは断言出来ません…」
八正道は極度の心配性なのか非常に不安視したのである。
「村人達の噂話では桜花姫様は敵対者が極悪非道だったとしても人間には手出しされないとの内容ですが…今回の敵対者が極悪非道の匪賊達であれば如何されるのですか?」
桜花姫は極度に不安視する八正道に即答する。
「無論…人一倍温厚篤実の私でも…極悪非道の匪賊達であれば即刻仕留めちゃうからね!相手が非力の人間だからって私は手加減しないから大丈夫よ!八正道様は本当に心配性ね!」
普段は温厚篤実の桜花姫であるものの…。非力の人間であっても残虐非道の匪賊達には滅法無慈悲である。反面自身に手出ししないか無抵抗であれば相手が極悪非道の匪賊でも手出ししない。
「であれば一安心ですね!桜花姫様は極楽浄土の女神様を連想する人物ですからね!相手が人間の匪賊達であれば困惑されるのではと私自身心配しちゃいましたよ!正直余計でしたね…」
「私が極楽浄土の女神様ですって!?こんな私が極楽浄土の女神様なんて八正道様も大袈裟ね!」
極楽浄土の女神様と同一視された桜花姫は内心では大喜びする。
「私に手出し出来る人間がこんな島国の桃源郷神国に実在するのかしら?最上級妖女の私に手出し出来るのであれば是非とも対面したいわね!」
莫大なる妖力を保有する最上級妖女の桜花姫にとって多人数による人海戦術は無意味である。桜花姫が単独であったとしても戦力的には全国各地の武士団全勢力に匹敵するのではと各村落の領主達が独自で推測…。各地の村人達には間違っても最上級妖女の月影桜花姫だけには絶対に手出しするなとこっ酷く忠告したのである。
「ですが桜花姫…今回の神隠しの敵対者が極悪非道の匪賊だとしても油断大敵ですよ!桜花姫様の多用される妖術は天下無双かも知れませんが…油断すれば絶体絶命へと直結するでしょう…」
「えっ…はぁ…」
『八正道様は極度の心配性だわ…』
彼女自身内心では八正道が口喧しいと感じるものの…。八正道に感謝する。
「助言感謝するわね…八正道様…」
桜花姫は即座に北国へと出掛けたのである。
「桜花姫様…」
『彼女は電光石火みたいですね…』
八正道は城下町から疾走する桜花姫を見届ける。
第七話
墓場
東国の城下町から移動を開始してより数十分後…。桜花姫は東国と北国の国境に位置するとある片田舎へと到達する。
『此処が北国との国境みたいね…』
北国の村里は非常に殺風景であり過疎化した麦畑ばかりである。
『北国って随分と殺風景の田舎町なのね…』
不可解にも国境の村里には村人が誰一人として確認出来ない。
『無人地帯だわ…』
桜花姫は適当に麦畑を眺望し続ける。
「えっ?」
すると赤子を抱き抱えた白装束の長髪の女性が村里にて発見…。女性は麦畑近辺の村道に佇立する桜花姫を凝視し続ける。
『村里の親子かしら?』
一方の桜花姫は赤子を抱き抱えた女性を発見すると恐る恐る女性へと近寄る。
『母親は大怪我したみたいね…』
母親の白装束は彼方此方が血塗れであり皮膚の表面には無数の外傷が確認出来る。
『彼女に一体何が?』
桜花姫は一瞬戦慄するものの…。
「一寸?あんた…大丈夫かしら?大怪我したの?」
桜花姫は恐る恐る女性の安否を確認する。一方の母親は無表情であったものの…。恐る恐る近寄る桜花姫を凝視し続けると無言の様子で睥睨したのである。
「えっ…」
『腹立たしいわね…此奴…何様かしら?』
見ず知らずの母親に睥睨された桜花姫は内心母親の態度に腹立たしくなる。
「あんた…何よ?」
桜花姫も母親に睥睨し返したのである。すると数秒後…。
「えっ!?一寸!?」
母親は無言の様子で一目散に逃走し始めたのである。
『如何して母親は私から逃走しちゃったのかしら?』
桜花姫は即座に逃走中の母親を追跡する。
『彼女って…俗界の人間だったのかしら?』
母親の様子は異質的であり母親の正体が人間の女性なのか非常に気になる。
『彼女の正体…気になるわね…』
一方正体不明の母親は墓場へと潜入したのである。
『此処は墓場だわ…』
桜花姫は只管に正体不明の母親を追尾し続ける。
『母親は?』
桜花姫も恐る恐る墓場へと潜入したのである。
「先程の母親は一体何者だったのかしら?」
『彼女からは霊気らしい霊気は感じられなかったけれども…』
桜花姫は赤子を抱き抱えた母親らしき人物が俗界に存命する人間なのか如何なのかを疑問視し始める。
「母親の雰囲気と姿形から判断して…」
『ひょっとすると彼女の正体って俗界とは無縁の化身なのかも知れないわね…母親は黄泉の世界の亡霊なのかしら?』
桜花姫は母親の正体が黄泉の世界の亡霊であると推測する。正体不明の母親を追尾してより数分後…。先程の母親らしき女性と再度遭遇したのである。桜花姫は即刻母親らしき女性に近寄ろうかと思いきや…。
「えっ!?」
桜花姫は異様の光景に驚愕する。
「あんたは如何して全裸なのよ!?」
母親は白装束を脱衣した状態であり裸体の状態だったのである。
『恥知らずだわ…彼女は正気なの?』
彼女は赤子を抱き抱えた状態から母乳と赤子の前頭部を密着させる。
「一寸あんた!?赤子に何するのよ!?」
目前の光景は処女の桜花姫にとって非常に不愉快であり一瞬膠着化する。桜花姫は恐る恐る墓石から母親の様子を観察したのである。
『母親は一体何を!?』
すると赤子の肉体が液体化したのである。
「えっ…」
『赤子が…』
全身が液状化した赤子は全身の肉体諸共母親の体内へと一瞬で捕食され…。
「ひっ!」
赤子は母親の体内に吸収されたのである。
『彼女…赤子の肉体を吸収するなんて…』
桜花姫は予想外の出来事により愕然とする。
『人間の血肉を吸収出来る特質…』
桜花姫は母親の正体を確信したのである。
『母親の正体は…』
一方の母親は部外者の桜花姫を凝視したかと思いきや…。不吉の表情で桜花姫を冷笑し始める。桜花姫は恐る恐る…。
『ひょっとして神隠しの真犯人は悪霊の【亡霊妖婦】だったのね…』
亡霊妖婦とは人間の赤子を捕食する母親の悪霊であり姿形のみなら人間の女性である。亡霊妖婦の正体は戦乱時代に頻発した戦乱やら疫病によって赤子が死去した母親達の無念の集合体とされ…。人間の赤子を自身の体内へと吸収する性行為も赤子に対する極度の執着心と愛情表現である。別名としては産女やら鬼子母神とも呼称される。
「亡霊妖婦!」
桜花姫は咄嗟に亡霊妖婦の近辺へと接近する。
「私が母親達の霊魂であるあんたを成仏させるわ!」
桜花姫は体内の妖力を蓄積させると落雷の妖術を発動…。
「亡霊妖婦…覚悟するのね!」
小規模の入道雲を近辺の天空へと凝縮させたのである。
「落雷で死滅しなさい…亡霊妖婦!」
近辺の天空全域が黒色の入道雲に覆い包まれたかと思いきや…。小規模の入道雲から落雷攻撃を発動させる。高火力の落雷は亡霊妖婦の頭頂部へと落下したのである。
『落雷が直撃したわね…』
強烈なる落雷攻撃によって桜花姫は一瞬両目を閉眼させる。落雷の破壊力は非常に絶大であり地面を容易く陥没させたのである。
『亡霊妖婦は他愛無いわね♪瞬殺だったわ♪』
亡霊妖婦は常人と同様に肉体が非常に脆弱であり無数の血肉やら手足の肉片は勿論…。体内の臓物が陥没した地面に彼方此方に飛散する。
「亡霊妖婦…」
『彼女を仕留めたかしら?』
桜花姫は恐る恐る両目を見開いたのである。標的の亡霊妖婦を仕留めたか如何なのかを再確認する。
『如何やら亡霊妖婦を完全に仕留めたみたいね♪正直亡霊妖婦相手には過剰攻撃だったでしょうけれど…』
目前の光景は叫喚地獄の光景であるものの…。
『無防備の状態で落雷が直撃しちゃえば誰だって死滅するわよね♪』
桜花姫は今度こそ手応えを感じる。
『亡霊妖婦を無事征伐したから私は西国に戻りましょうかね…』
桜花姫は一安心したのか西国の村里へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ!?」
背後から極度の胸騒ぎを感じる。
『胸騒ぎだわ…』
背後より微弱の霊気を察知したのである。
『何かしら!?』
桜花姫は恐る恐る背後を警戒…。
「えっ…」
背後の様子を確認する。
『亡霊妖婦の血肉が…』
落雷攻撃によって全身の肉体を粉砕された亡霊妖婦の無数の血肉が融合化し始めたのである。
『此奴…再生能力なんて鬱陶しいわね!』
亡霊妖婦の肉体は数秒間で元通りに復活する。
『粉砕された肉体が一瞬で元通りなんて…亡霊妖婦は不死身の肉体なのね…』
桜花姫は元通りの亡霊妖婦に苛立ったのである。
『彼女は生命力と治癒力だけなら規格外だわ…』
亡霊妖婦は桜花姫の愕然とした表情を凝視すると不吉の表情で微笑み始める。すると亡霊妖婦は口辺から猛毒の溶解液を噴射したのである。
『毒液かしら!?』
桜花姫は咄嗟に妖力で半透明の防壁を形成し始め…。妖力の防壁により猛毒の溶解液から間一髪本体を防備出来たのである。一方妖力の防壁周辺の地面は亡霊妖婦が噴射した猛毒の溶解液によって容易く液状化する。
「如何やら危機一髪だったわ…」
『妖力の防壁を発動しなかったら大怪我したでしょうね…』
桜花姫は一安心するものの…。
『私は亡霊妖婦の霊気を見縊り過ぎたわね…』
桜花姫の表情が険悪化したのである。桜花姫は体内の妖力を蓄積させる。
「亡霊妖婦…今度こそ覚悟なさい!」
桜花姫は念力の妖術を発動…。すると亡霊妖婦は全身の肉体が肥大化し始めたのである。一方の亡霊妖婦は無表情で桜花姫を凝視し続ける。
「亡霊妖婦♪」
亡霊妖婦の皮膚の表面からどす黒い大量の血液が流れ出始める。
「あんたは破裂するのね♪」
超常現象によって亡霊妖婦の体内から全身の肉体を破裂させたのである。周辺の地面には破裂した無数の肉片やら血肉が飛散する。
『亡霊妖婦は再復活するかしら?』
先程発動した念力の妖術は様子見であり亡霊妖婦の肉体が再生能力によって元通りに復活するのか如何なのかを再確認したかったのである。亡霊妖婦の肉体は一瞬で破裂したものの…。破裂した無数の肉片が再度融合化し始める。亡霊妖婦の肉体は数秒間で元通りに戻ったのである。
「亡霊妖婦…本当に再復活したわね…」
『正直亡霊妖婦は鬱陶しい悪霊だけど…私にもこんな不老不死の再生能力が…』
桜花姫は内心亡霊妖婦の再生能力を羨望する。
『亡霊妖婦の再生能力の攻略法は?』
即座に透視能力を発揮出来る心眼の妖術を発動させる。
『亡霊妖婦の弱点は何かしら?』
「えっ?」
心眼の妖術の透視能力によって亡霊妖婦の腹部中心部より正体不明の水晶体を発見したのである。
『亡霊妖婦の体内から水晶体だわ…一体何かしら?』
桜花姫は亡霊妖婦の体内の水晶体を凝視する。
『亡霊妖婦の水晶体が気になるわね…ひょっとして体内の水晶体は亡霊妖婦の本体なのかしら?』
桜花姫は念力の妖術を再発動…。体内から亡霊妖婦の腹部を破裂させたのである。亡霊妖婦の腹部が破裂した直後…。亡霊妖婦の破裂した体内より亡霊妖婦の本体と思しき半透明の水晶体を摘出したのである。
『亡霊妖婦の水晶体だわ♪』
半透明の水晶体が地面へと落下したかと思いきや…。
「ん?」
地面に落下した水晶体は蛍光色へと発光したのである。直後に周辺の地面に散乱した無数の血肉が蛍光色の水晶体へと密着し始める。
『如何やら体内の水晶体こそが亡霊妖婦の本体っぽいわね…』
念力の妖術で粉砕された亡霊妖婦の肉体であるが…。粉砕された亡霊妖婦の肉体は数秒間で元通りに復活したのである。
「亡霊妖婦は元通りに戻ったでしょうけど…弱点さえ見破れちゃったら亡霊妖婦なんて楽勝だわ!覚悟するのね!」
亡霊妖婦の弱点を見破った桜花姫は爆破の妖術を発動すると体内の水晶体を粉砕…。体内の水晶体が粉砕されると亡霊妖婦の再生能力が発動しなくなる。
「亡霊妖婦…完全消滅しなさい…」
即座に火炎の妖術を発動…。
『今度こそ亡霊妖婦を仕留められたわね…』
粉砕された亡霊妖婦の肉体諸共体内の水晶体の破片を完膚なきまでに焼失させる。
「子供を亡くした母親達の霊魂…今度こそ成仏するのね…」
桜花姫は周辺を恐る恐る警戒したのである。
『西国に戻ろうかしら…』
亡霊妖婦との戦闘が終了してより一時間後…。桜花姫は無事に西国の村里へと戻ったのである。
『彼女は…』
「亡霊妖婦は予想外に手強かったわね…」
無事に家屋敷へと戻った桜花姫は一息すると寝転び始める。
『随分派手に妖術を連発しちゃった影響かしら?』
妖力を余分に連発した結果…。
『極度に息苦しいわね…』
体内の妖力を過剰に消耗したのである。
「亡霊妖婦は私より格下の相手だったけれど…」
『最上級妖女である私が格下の悪霊を相手に消耗戦なんてね…』
桜花姫は今回の出来事から自分自身の傲慢さと力不足を痛感する。
『今回は完全に軽率だったわね…』
桜花姫は極度の疲労困憊の影響からか熟睡したのである。
第八話
路地裏
母親達の無念の集合体…。亡霊妖婦との血みどろの戦闘から二日後の出来事である。近頃…。南国の村里では若齢の村娘達が衰弱化する不吉の超常現象が頻発したのである。
『今回も面白そうな事件ね!今度は一体何が出現したのかしら?』
彼女達の噂話を聴取した桜花姫は欣喜雀躍の気分で南国の村里へと直行する。移動を開始してより一時間半後…。
『此処が今回の事件現場みたいね…』
桜花姫は南国の村里へと到達したのである。
『今回も悪霊の仕業かしら♪ひょっとして今度も面白そうな悪霊が出現するかしら♪』
桜花姫は目的地である南国の村里へと到達したものの…。南国の村里は非常に物静かであり外出中の村人は誰一人として確認出来ない。
『過疎地だからかしら?此処では人気が感じられないわね…住宅街は如何かしら?』
住宅街へと移動するのだが…。
『やっぱり人気は皆無ね…』
村里全体が重苦しい空気であり極度の息苦しさを感じさせる。
「不吉だわ…」
『村里の空気も重苦しいし…即刻事件を解決して西国に戻りましょう…』
すると直後…。
「えっ?」
各家屋敷から無数の物音が響き渡る。
『何かしら?』
各家屋敷より出刃包丁やら鈍器を所持した老若男女の村人達が同時に外出する。
『彼等は村人達!?』
村人達の様子は非常に殺伐とした雰囲気であり桜花姫は大勢の村人達に包囲されたのである。
「あんた達…一体何よ?」
桜花姫は村人達に警戒する。
「正気かしら?」
『彼等の様子が可笑しいわね…』
村人達の表情を観察すると彼等は無表情であり誰一人として自身に対する殺気は勿論…。精気は感じられない。
『無感情の傀儡人形みたいな雰囲気だわ…村人達は如何しちゃったのかしら?』
村人達は無表情で桜花姫を直視し続けた直後…。
「あんた達は何よ?」
村人達は無言の様子で彼女に殺到したのである。
「本気なの?」
『人間の分際で私に手出しするなんて無謀なのよ!』
桜花姫は即座に睡眠の妖術を発動…。
「悪いけど…非力のあんた達は私の妖術で熟睡しちゃいなさい!」
睡眠の妖術により殺到する村人達を気絶させたのである。
『所詮相手は非力の人間!他愛無いわね!』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る何人かの村人達に接触する。
「非常に不自然だったわね…」
『村人達は何者かによって洗脳された状態だったわ…一体誰が村人達を洗脳したのかしら?』
直後…。
「きゃっ!」
近辺の路地裏から人間の少女らしき悲鳴が響き渡る。
「えっ?」
『少女の悲鳴だわ…一体何事かしら?』
気になった桜花姫は即座に路地裏へと急行したのである。
第九話
幻術
桜花姫が急行した同時刻…。村道の路地裏では一人の若齢の村娘が花魁らしき色白の女性に捕捉されたのである。
「あんたは私からは逃げられないわよ♪好い加減観念しなさい♪」
「きゃっ!誰か!誰か!」
村娘は必死に抵抗するものの…。花魁らしき色白の女性は小柄の外見とは裏腹に非常に力強く村娘の力量では抵抗すら出来ない。
「あんたは大人しくするのね…村里で無事なのは小娘のあんただけよ♪あんたの清心を頂戴するわね!覚悟なさい!」
色白の女性は赤面した表情で無理矢理に村娘に接吻…。
「ぎゃっ!ぐっ!」
村娘は色白の女性に口移しされた直後である。
「はぁ…」
村娘は全身が脱力し始め…。意識が喪失した状態であり地面に横たわったのである。色白の女性は満足気に…。
「美味しかったわね!人間の少女の清心は純真無垢だから非常に美味だったわ!」
色白の女性は村娘の清心を洗い浚い完食…。
「今度は!」
即座に村里から脱出する直前である。
「えっ?何者かしら?」
何者かが色白の女性の背後に出現する。
「一部始終様子を目撃しちゃったけど…如何やら今回の事件はあんたの仕業だったみたいね♪」
「誰かと思いきや…」
色白の女性は背後の桜花姫を直視した直後…。冷笑し始める。
「あんたは最上級の妖女…月影桜花姫だったかしら♪」
「あんたは悪霊の【亡霊花嫁】だったわね♪悪霊なのに人語で喋れるなんて…」
亡霊花嫁とは亭主に殺害された令夫人の亡霊である。姿形こそ素肌が色白であり煌びやかな花柄の着物姿の女性であるが…。亡霊花嫁は正真正銘女性の悪霊であり人間界の公用語で他者とも会話出来る。亡霊花嫁は他者との接吻によって人間の清心を吸収出来…。純真無垢の女子の清心こそ悪霊の亡霊花嫁にとっては最高の嗜好品である。
「所詮は悪霊の分際なのに♪ひ弱の女の子を相手に接吻なんてね…あんたは余程の悪趣味みたいね♪悪霊らしいけれど♪」
桜花姫に挑発された亡霊花嫁であるが…。彼女は不吉の笑顔で返答する。
「あんたは口喧しい小娘だわ…折角だからね♪口喧しいあんたの清心も吸収しちゃおうかしら♪」
「私の清心ですって?あんたなんかに出来るかしら♪亡霊花嫁♪」
一方の桜花姫は再度亡霊花嫁に挑発したのである。
「私は其処等の人間の女の子みたいに♪簡単には接吻出来ないわよ♪」
「月影桜花姫…無論あんたは人外の妖女だから手加減しないからね…」
亡霊花嫁は笑顔の表情から険悪化した表情に一変する。
「あんたの身動きを無力化するわ…覚悟するのね…」
亡霊花嫁は幻術を発動したのである。
「えっ?」
周辺の地面より半透明化した触手が無数に出現したかと思いきや…。
『半透明の触手かしら!?』
半透明の無数の触手が桜花姫の全身に密着し始める。
「きゃっ!」
半透明の触手は桜花姫の身体髪膚を拘束したのである。
「ぐっ!」
桜花姫は半透明の触手によって身動き出来なくなる。
『ひょっとして触手は亡霊花嫁の幻術かしら?身動き出来ないわ…』
亡霊花嫁は一歩ずつ膠着状態の桜花姫に近寄り始める。
「いい気味だわ♪桜花姫♪触手で拘束された気分は如何かしら?」
亡霊花嫁は冷笑した様子で桜花姫に問い掛ける。
「私の幻術で身動き出来なくなったわね♪最上級妖女の月影桜花姫♪先程の威勢は如何しちゃったのかしら?」
亡霊花嫁は桜花姫の目の前へと近寄ると桜花姫の頬っぺたに接触する。
「折角の機会だからね♪暇潰しにあんたの清心も頂戴するわね♪月影桜花姫♪」
亡霊花嫁は非常に興奮したのか表情が赤面し始める。
「私に遭遇したのが不運だったのよ…月影桜花姫♪あんたは観念するのね♪」
亡霊花嫁は身動き出来なくなった桜花姫に口移ししたのである。
「ぎゃっ!」
『体内の妖力が…彼女に吸収されちゃうわ…』
桜花姫は亡霊花嫁の口移しによって体内の妖力が吸収される。
「あんたは腹立たしい妖女だったけれど…あんたの清心も美味だわ♪」
『衰弱死するのね…桜花姫♪』
亡霊花嫁は大喜びした直後…。
「ん!?ぎゃっ!」
亡霊花嫁は突然気味悪くなったのか口先から大量の鮮血を吐血したのである。
「えっ!?」
『一体何が…』
一方の桜花姫は亡霊花嫁の突然の吐血に何事かと驚愕する。
『如何して亡霊花嫁は吐血したのかしら?』
吐血した亡霊花嫁は恐る恐る桜花姫から後退りし始める。
「ぐっ…月影桜花姫…」
『あんたは…純真無垢の清心とは程遠い存在だったみたいだわ…私を吐血させるなんてね…』
亡霊花嫁は膠着状態の桜花姫を睥睨したのである。
「如何して桜花姫の心情は…人一倍どす黒く下劣なのかしら?あんたみたいな不潔と遭遇したのは久方振りね…」
一方の桜花姫は亡霊花嫁の不潔発言に苛立ったのか腹立たしくなる。
「なっ!?誰よりも温厚篤実の女神様である私に不潔ですって!?」
亡霊花嫁の失言に反応したのか桜花姫の金縛りが解除されたのである。亡霊花嫁に怒号した桜花姫は即座に天道天眼を発動…。亡霊花嫁の幻術を無力化したのである。桜花姫の全身に密着する半透明の触手も幻術の無力化によって消滅し始める。
「あんたは…私の幻術を自力で解除するなんてね…」
亡霊花嫁は自力で幻術を解除させた桜花姫に驚愕したのである。
「残念だったわね♪亡霊花嫁♪神性妖術の天道天眼を発動しちゃえばあんたの幻術だって容易に無力化出来るのよ♪」
「なっ!?」
亡霊花嫁は桜花姫の発言に動揺し始める。
「天道天眼ですって!?」
『こんな妖女の小娘が…神性妖術の天道天眼を…』
亡霊花嫁は桜花姫に畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
「亡霊花嫁♪私に対する恐怖心かしら?今度は私が反撃するからね♪」
「反撃ですって…」
桜花姫は一歩ずつ亡霊花嫁に近寄り始める。
「あんたは覚悟なさい♪亡霊花嫁♪」
桜花姫は亡霊花嫁に変化の妖術を発動…。
「女神様の私に不潔って失言した天罰よ♪あんたは飴玉に変化しちゃいなさい♪」
十八番である変化の妖術により亡霊花嫁の肉体を自身の大好きな果実の飴玉に変化させたのである。
「亡霊花嫁は飴玉に変化したわね♪成仏しなさい♪」
桜花姫は即座に果実の飴玉に変化した亡霊花嫁を頬張る。
『本来が悪霊だとしても果実の飴玉に変化させれば美味だわ!』
すると直後…。
「えっ…私は…」
先程亡霊花嫁に清心を吸収された村娘が恐る恐る目覚めたのである。
「私は…一体何を…悪霊は?単なる悪夢だったのかしら?」
村娘の様子に桜花姫は一安心する。
『如何やら亡霊花嫁に吸収された村人達の清心が無事に戻ったみたいね…』
「一先ずは一件落着ね!」
事件が解決すると桜花姫は即刻西国の村里へと戻ったのである。
第十話
土偶
花魁の悪霊…。亡霊花嫁との死闘から四日後である。北国の山奥には黄金山と呼称される大山が存在する。黄金山は古代文明の宝庫とされ…。古代文明時代に使用された数多くの土器やら宝物が発見されたのである。黄金山は古代文明の宝庫として有名であるが…。近頃の出来事である。黄金山の洞窟に存在するとされる祭壇には四体の土偶が安置されたのだが…。真夜中の深夜帯にて祭壇に安置された四体の土偶が勝手に動き出すとの噂話が北国の村里全域に出回ったのである。
『真夜中に土偶が動き出すなんて不吉ね…今回も悪霊の仕業なのかしら?』
最上級妖女の桜花姫は真夜中に動き出す土偶の噂話を傾聴…。即座に北国の村里へと移動したのである。北国の村里から移動してから二時間後…。桜花姫は北国の山奥に聳え立つ黄金山へと到達したのである。
『如何やら此処が問題の黄金山みたいね…』
時間帯は真夜中の深夜帯であり人気は感じられず…。山中の風音と川音が物静かに響き渡る。
『洞窟を探索しましょう…』
桜花姫は洞窟の探索を開始したのである。洞窟の探索を開始してより数十分後…。
『洞窟だわ…』
山中の洞窟らしき場所を発見したのである。
『問題の場所は此処かしら?』
時間帯が真夜中であり洞窟内部は漆黒の暗闇であったが…。
『こんな場合こそ♪』
桜花姫は発光体の妖術を駆使したのである。
『視界が暗闇でも安心して移動出来るわね♪』
桜花姫の周囲より複数の鬼火が出現し始め…。空中を浮遊する。
『こんな場合こそ発光体の妖術は便利なのよね♪』
発光体の妖術により視界が安定化したのである。
『洞窟内部へと移動しましょう…』
桜花姫は暗闇の洞窟を直進し続ける。洞窟を直進してより十数分後…。大昔の祭壇らしき場所へと到達したのである。
『祭壇だわ…』
古代遺跡の祭壇らしき場所には身長三尺程度の土偶が四体確認出来…。
『四体の土偶だわ…如何やら此処が問題の聖域みたいね…』
此処が事件現場であると確信する。桜花姫は警戒した様子で恐る恐る四体の土偶に近寄り始め…。一体ずつ土偶の表面に接触したのである。
『土偶…今夜は動き出すのかしら?』
数分間が経過するのだが…。
『別に…大丈夫そうだけど…』
四体の土偶からは悪霊特有の霊気も感じられなかったのである。
「はぁ…」
『当然だけど土偶は動き出さないわね…』
何も進展せず…。桜花姫は落胆する。
「悪霊の霊気も感じられないし…今迄の苦労は何だったのかしら?」
『戻って熟睡しましょう…』
桜花姫は西国の村里へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ!?」
突如として四体の土偶の両目が蛍光色に発光し始める。両目が発光し始めた数秒後…。四体の土偶が空中を浮遊したのである。
『土偶が…空中を!?』
桜花姫は突然の超常現象に驚愕する。
「彼等の正体は…」
『【霊魂土偶】かしら?』
霊魂土偶とは亡者の霊魂が器物である土偶に憑霊…。誕生したとされる器物の悪霊の一種として知られる。特定の地方では別名として古代文明の亡霊やら土偶の付喪神とも呼称される。
『真夜中に動き出す土偶の正体は…霊魂土偶だったのね…』
すると四体の霊魂土偶は侵入者である桜花姫を敵対視し始め…。発光した両目からは微細の殺人光線を射出したのである。
『両目から殺人光線ね…』
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。霊魂土偶の殺人光線を無力化したのである。
「こんな程度の攻撃なんて…私には通用しないわよ!」
桜花姫は念力の妖術を発動…。
「あんた達は砕け散りなさい!」
浮遊し続ける四体の霊魂土偶を念力で粉砕したのである。
「霊魂土偶は…他愛無いわね…」
周辺の地面には霊魂土偶の破片が飛散する。
『片付けられたし…西国の村里に戻ろうかしら…』
桜花姫は西国の村里に戻ろうかと思いきや…。背後より複数の気配を感じる。
「えっ…」
『何かしら?気配…』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後の様子を確認する。
『如何やら…簡単には仕留められないわね…』
粉砕された四体の霊魂土偶が再生し始め…。数秒間で元通りに戻ったのである。
『霊魂土偶の再生能力は亡霊妖婦に匹敵するわね…』
すると四体の霊魂土偶は両目が蛍光色に点滅し始める。
『霊魂土偶の両目が点滅したわ…』
桜花姫は霊魂土偶の異変に警戒する。
『一体何が?』
警戒した直後…。四体の霊魂土偶が同時に全身の肉体が発光し始めたのである。
「きゃっ!」
桜花姫は霊魂土偶の突然の発光に瞑目する。
「えっ…」
四体の霊魂土偶は全身が発光した状態で融合化し始め…。
『四体の霊魂土偶が…』
四体の霊魂土偶は一体の巨大霊魂土偶として一体化したのである。
『如何やら本領みたいだわ…』
一体化した霊魂土偶は六尺程度の体躯へと巨大化する。
『一体化した影響かしら?先程の霊魂土偶よりも霊気が上昇したわね…』
融合化の効力により霊魂土偶の霊気は倍以上に上昇したのである。すると霊魂土偶は敵対者の桜花姫の方向を直視する。両目から殺人光線を射出するのだが…。融合化した霊魂土偶は殺人光線を広範囲に拡散させたのである。
『一体化した霊魂土偶は光線を拡散させられるの!?』
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。間一髪霊魂土偶の殺人光線を無力化する。霊魂土偶の攻撃は無力化出来たものの…。
「えっ…」
霊魂土偶は浮遊した状態から高速移動で桜花姫の腹部に突進したのである。
「きゃっ!」
桜花姫は霊魂土偶の突進により吹っ飛ばされ…。
「ぐっ!」
背中が背後の岩壁に強打したのである。桜花姫は地面に横たわる。
「ぐっ…」
『迂闊だったわ…突進攻撃なんて…』
桜花姫は全身の強打により背中の一部を骨折…。極度の苦痛により身動き出来なくなる。一方の霊魂土偶は地面に横たわった状態の桜花姫の目前へと着地…。再度両目が発光し始める。
『こんな悪霊を相手に…』
桜花姫は霊魂土偶に変化の妖術…。所謂事象の変化を発動する。
『霊魂土偶…桜餅に変化しろ!』
霊魂土偶が殺人光線を射出する寸前…。霊魂土偶は桜花姫の変化の妖術により大好きな桜餅へと変化したのである。
「はぁ…」
桜花姫は安堵する。
『危機一髪だったわね…』
数秒間が経過すると背中の骨折も治癒の妖術により元通りに再生したのである。
「骨折部分も元通りに再生出来たわ…」
『早速…』
桜花姫は小皿に配置された桜餅を一口で平らげる。
『霊魂土偶を捕食した影響ね…』
洞窟内部の霊気が鎮静化したのである。
『悪霊事件は無事に解決出来たわね!今度こそ西国に戻りましょう…』
桜花姫は暗闇の洞窟を無事に脱出出来…。西国の村里へと戻ったのである。
第十一話
猛吹雪
土偶の付喪神…。霊魂土偶との戦闘から二日後の出来事である。とある三人の匪賊達が北国の過疎化したばかりの廃村へと侵入する。
「頭領!頭領!此処は無人の廃村みたいですぜ!」
小柄の匪賊が満面の笑顔で近寄る。
「無人の廃村か…」
大柄の匪賊が周辺を眺望したのである。
「如何やら人気は無さそうだな…」
小柄の匪賊が満面の笑顔で発言する。
「無人の廃村なら俺達の潜窟として思う存分に利用出来そうですぜ!」
廃村は人気が全体的に皆無である。
「非常に好都合だ…であれば早速此処の廃村を占拠するか…」
潜窟として利用するのであれば非常に好都合であると判断する。
「頭領!頭領!」
すると中柄の匪賊が小声で恐る恐る…。
「今度は何事だ?」
大柄の匪賊は面倒臭そうな様子で反応する。
「村娘ですよ!此処の村娘を発見しましたぜ!」
「ん?こんな無人の廃村に村娘だって?本当なのか?」
中柄の匪賊は仲間の二人を案内したのである。無人の廃村中心地にはとある祭壇が設置され…。祭壇の近辺には小柄の女性が徘徊中だったのである。女性は素顔こそ不明であるものの…。女性は黒髪の長髪であり服装は白装束の着物姿である。三人の匪賊達は近辺の民家から恐る恐る白装束の女性を観察する。
「如何やら本当みたいだな…」
「彼奴は一体何を?」
すると小柄の匪賊が赤面した様子で…。
「彼奴…可愛らしい雰囲気ですね!胸部の谷間とか…」
「えっ…」
「此奴は相当の物好きだな…」
二人は赤面する小柄の匪賊に苦笑いしたのである。
「ですが如何してこんな場所に村娘が一人で?」
中柄の匪賊が身震いした様子で発言する。
「ひょっとして彼奴の正体…女人の悪霊とか?俺の考え過ぎかも知れないが…」
中柄の匪賊の発言に二人は困惑したのである。
「はっ?悪霊って…」
「其方は馬鹿者か!?村娘は人間の小娘だろう!所詮悪霊なんて単なる子供騙しだな…悪霊が本当に存在するなら一度遭遇したいぜ!」
二人の匪賊は悪霊の存在を全否定するのだが…。
「ですがこんなにも人気の無さそうな無人の廃村で…人間の村娘が一人で行動するなんて絶対に可笑しいですよ!不自然ですぜ!」
「大袈裟だな…」
すると小柄の匪賊が恐る恐る…。
「えっ…村娘は?」
「ん?」
先程祭壇の近辺で徘徊中だった村娘を見失ったのである。
「村娘は雲隠れしたのか?」
中柄の匪賊が畏怖した様子で…。
「恐らく彼女は廃村の地縛霊ですよ!即刻廃村から逃げましょう!こんな場所に長居し続ければ俺達は村娘の悪霊に呪い殺されちまいますよ!」
畏怖し続ける中柄の匪賊に匪賊の頭領が怒号する。
「馬鹿者が!何が悪霊だ!大体村娘が悪霊だって証拠は?彼奴の正体が本物の悪霊だって確証出来るのか!?」
大柄の匪賊が怒号した直後…。背後より極度の悪寒戦慄と気配を感じる。
「えっ…」
彼等は背後を警戒…。恐る恐る背後の様子を確認する。
「ひっ!」
彼等の背後には先程祭壇の近辺で徘徊中だった白装束の女性が三人の背後に佇立したのである。
『此奴…一瞬で移動しやがったのか?』
白装束の女性は美的の容姿であるが青色の口紅…。両目の瞳孔は血紅色であり人間の女性とは無縁の雰囲気だったのである。大柄の匪賊は恐る恐る…。
「此奴は…本物の悪霊なのか!?」
すると白装束の女性は冷笑した表情で大柄の匪賊に接触し始めたのである。
「ん?あんたは…一体何を?」
直後…。
「なっ!?」
大柄の匪賊は一瞬で全身が氷結され肉体が崩れ落ちる。
「ひっ!此奴は本物の悪霊だぞ!」
「俺達も悪霊に打っ殺されちまう!逃げろ!」
二人の匪賊は極度の恐怖心からか一目散に逃走したのである。二人は廃村の郊外にて一休みする。
「はぁ…はぁ…」
「俺達…廃村で本物の悪霊と遭遇しちまうなんて…」
「最悪だな…頭領は小娘の悪霊に打っ殺されちまったし…」
「今後は…如何するよ?」
直後である。
「えっ?」
「寒気か?」
再度極度の寒気を感じる。
「ひょっとして寒気の正体は…」
すると小柄の匪賊の左側真横より先程の白装束の女性が笑顔で凝視する。
「ひっ!小娘の悪霊!?」
彼等は白装束の女性との遭遇に落涙し始めると一目散に逃走…。全身全霊で疾走したのである。同日の真昼…。桃源郷神国全域にて猛吹雪による寒風が各農村地帯で頻発したのである。突如として頻発した猛吹雪は農村の村人達を衰弱死させる。
『こんな季節に暴風雪が頻発するなんて…暴風雪の主原因は一体?』
僧侶の八正道はとある蔵屋敷の窓際から恐る恐る外部の雪景色を眺望したのである。
『ひょっとして今回も悪霊が出現した悪影響なのでしょうか?であれば非常に不吉ですね…』
八正道は突如として発生した猛吹雪を超常現象の悪影響であると認識する。
『超常現象による天変地異ですかね?』
猛吹雪の発生により誰しもが外出出来なくなったのである。
第十二話
雪国
猛吹雪が発生した翌日の真昼…。最上級妖女の桜花姫は自宅にて無我夢中に大好きな小倉汁粉を頬張ったのである。
『非常に美味だわ♪』
単独での間食であるものの…。人一倍食いしん坊の桜花姫は一瞬で小倉汁粉を平らげたのである。
『如何してこんな季節に…突然猛吹雪が発生したのかしら?』
桜花姫は極度の胸騒ぎを感じる。
『こんなにも猛吹雪が発生するなんて不吉だわ…』
桜花姫は突然の猛吹雪が気になったのか天道天眼を発動したのである。
「えっ…」
『妖力かしら?』
すると北国の廃村より珍妙なる妖女特有の妖力を察知する。
「北国の廃村から妖力を感じるわ…」
即座に北国の廃村へと出向いたのである。
『ひょっとして今回の猛吹雪は妖女の仕業かしら?』
桜花姫は亡霊妖婦での悪戦苦闘により極度の胸騒ぎを感じる。
『今回の相手は一体誰なのかしら?』
桜花姫は移動を開始してから一時間後…。
「此処ね…」
目的地である北国の廃村へと到着したのである。
『目的地の廃村だけれども…正真正銘雪国なのね…』
廃村全域が雪景色一色であり村人は誰一人として確認出来ない。
『如何やら廃村は無人地帯みたいね…当然だけど人間の気配は感じられないわ…』
乱層雲と極度の猛吹雪の悪影響により妖力を感じられなくなる。
『暴風雪の悪影響かしら?超常現象の正体を特定出来ないわね…』
桜花姫は適当に探索し始めた直後…。
『人肉の悪臭だわ…一体何かしら?』
積雪より大勢の凍結化した村人達が確認出来る。
『村人達は凍結化で息絶えたのね…』
桜花姫は再度天道天眼を発動したのである。
「なっ!?」
胸騒ぎが桜花姫の身体髪膚を突発的に膠着化させる。
『極度の殺意と妖力を感じるわ…』
今回は神出鬼没の悪霊ではなく妖力を察知…。
『如何やら今回の相手は純血の妖女みたいね…』
相手は同種の妖女であると確信する。
「えっ?」
桜花姫の背後から莫大なる妖力の気配が接近したのである。
『私の背後かしら…』
桜花姫は恐る恐る背後を凝視する。
『女性だわ…一体誰かしら?』
白装束の長髪の女性が桜花姫の隣接へと無表情で接近したのである。白装束の女性が自身に接近した直後…。
「きゃっ!」
白装束の女性は突如として口移しにより桜花姫に接吻したのである。
「突然何するのよ!下手物!」
一方白装束の女性に接吻された桜花姫は非常に気味悪がる。
「あんたね…見ず知らずの女性に突然口移しなんて不潔だわ…」
女性の破廉恥さから桜花姫は恐る恐る後退りする。
「あんたの感触…ひょっとして氷水かしら?」
先程の口移しにより白装束の女性から極度の悪寒戦慄を感じる。
「ぐっ!」
『接吻の影響かしら?体内の妖力が…』
白装束の女性による接吻の悪影響からか桜花姫の妖力が微量に消耗する。
「誰かと思いきや…あんたは粉雪妖女の【雪美姫】だったのね…」
粉雪妖女の雪美姫とは純血の妖女であり氷雪系統の妖術を多用する妖女の一人である。雪美姫は恐る恐る後退りし始めた桜花姫に不吉の表情で冷笑し始める。
「今回の猛吹雪の主原因は雪美姫…あんたの仕業だったのね…」
『不吉だわ…』
雪美姫は純血の妖女であるのだが…。
『雪美姫は生者なのに…彼女の全身からは悪霊特有の霊気が感じられるわ…一体何故かしら?』
雪美姫の肉体から僅少の霊気が感じられたのである。
『兎にも角にも雪美姫を仕留めないと!』
「雪美姫!覚悟するのね!」
桜花姫は雪美姫に火炎の妖術を発動させる。超高温の火炎の妖術によって雪美姫の肉体が一瞬で崩れ落ちたのである。
『雪美姫を仕留めたかしら?』
すると桜花姫の周辺の積雪から無数の女体が形作られ…。元通りの雪美姫の姿形に変化する。
「えっ!?」
『ひょっとして雪美姫は粉雪分身の妖術を?』
雪美姫は粉雪分身の妖術で自身の分身体を無数に形作ったのである。
『厄介だわ…彼女達は雪美姫の分身体かしら?』
雪美姫の分身体は冷風を放出するものの…。
「私にはあんたの攻撃は通用しないわよ!」
桜花姫は咄嗟に妖力の防壁を発動したのである。雪美姫の放射する寒冷の冷風から本体を防備…。雪美姫の冷風を無力化したのである。
『粉雪の分身なんて面倒臭いわね…』
雪美姫の本体の判別は非常に困難であるものの…。
「雪美姫にとって私は相性的に最悪だったわね♪」
桜花姫にとって火炎系統の妖術は得意中の得意妖術である。
「雪美姫♪あんたは敵対する相手を間違えたわね♪」
桜花姫は氷雪系統の妖術を多用する雪美姫を相手に余裕の態度である一方…。雪美姫は警戒したのである。
「其処等の凡庸の妖女が最上級妖女の私に真剣勝負なんて無謀なのよ♪」
すると雪美姫は氷柱の妖術を発動する。
『氷柱の妖術かしら?』
雪美姫の周辺より無数の氷柱が形作られる。
『氷柱を武器に利用するみたいね…』
桜花姫は警戒したのである。一方の雪美姫は無数の氷柱を浮遊させた直後…。桜花姫を標的に攻撃したのである。
『雪美姫…氷柱で攻撃するなら…』
桜花姫は火炎の結界を発動…。雪美姫の氷柱攻撃を無力化したのである。
「雪美姫の氷雪攻撃は私には通用しないわ♪あんたは最上級妖女の私に敵対されたのを後悔するのね♪」
氷雪系統の妖術を多用する雪美姫にとって桜花姫は相性的にも最悪の天敵である一方…。桜花姫は雪美姫に冷笑し始める。
「雪美姫♪あんたは喋れなくても恐怖心は感じられるのね♪」
雪美姫は冷笑し始める桜花姫に戦慄したのである。
「覚悟するのね…雪美姫ちゃん♪」
桜花姫は神性妖術の天道天眼を発動…。
「本体諸共完膚なきまでに死滅しなさいね♪雪美姫♪」
天空より無数の火球を廃村全域に落下させたのである。
「雪美姫…最上級妖女の私に挑戦したのを後悔するのね!」
猛烈なる火球の猛攻撃によって雪美姫の無数の分身体を完膚なきまでに完全焼失させる。落下した火球の破壊力は非常に強力であり猛攻撃による超高温の火炎攻撃が雪美姫本体を一瞬で焼失させたのである。
『雪美姫は死滅したかしら?』
雪美姫の悲痛の阿鼻叫喚が廃村全域へと響き渡る。
『猛吹雪が沈静したわ…』
雪美姫を仕留めた影響からか各地の猛吹雪が沈静化する。
『雪美姫を仕留めた影響かしら?』
極度の寒風も感じられなくなる。
『如何やら天変地異は無事解決ね!』
「即刻村里に戻ろうかしら…」
雪美姫による天変地異は無事終息出来…。一段落すると桜花姫は西国の村里へと戻ったのである。
第十三話
粉雪
粉雪妖女の雪美姫との戦闘から一時間が経過する。
『今回の相手は同族の妖女だったけれど…相性的にも楽勝だったわね!』
一安心した桜花姫は家屋敷の居室で寝転び始めるものの…。
『やっぱり気になるわね…如何して雪美姫は純血の妖女なのに彼女の肉体から悪霊特有の霊気が感じられたのかしら?』
桜花姫は先程雪美姫の肉体から感じられた霊気が非常に気になる。
『ひょっとして雪美姫は悪霊に憑依されたのかしら?』
雪美姫の霊気を彼是と思考した直後である。
「ん?」
左耳より極度の悪寒戦慄を感じる。
「きゃっ!」
悪寒戦慄に身震いした桜花姫は恐る恐る左辺を直視…。すると先程焼殺した雪美姫が寝転んだ状態で桜花姫を凝視し続ける。
「えっ!?あんたは雪美姫!?」
桜花姫は突然の出来事により驚愕したのである。
『如何して彼女はこんな場所に!?』
一方の雪美姫は桜花姫を凝視…。驚愕する表情の桜花姫を冷笑したのである。すると雪美姫は不吉の笑顔で…。
「あんたは人一倍容姿端麗の妖女だわ♪」
雪美姫は人間の口言葉で発言したのである。
「えっ!?」
『雪美姫って普通に喋れるの!?』
桜花姫は人間界の公用語で発語する雪美姫に愕然とする。
「あんたは最上級妖女の月影桜花姫だったわね♪」
すると雪美姫は満面の笑顔で桜花姫に接触したのである。直後…。
「ぎゃっ!」
『金縛りの妖術かしら?身動き出来なくなるなんて…』
桜花姫は雪美姫の発動した金縛りの妖術によって身動き出来なくなる。
「桜花姫♪残念だったわね♪あんたが雪国で死滅させたのは私の分身体なのよ♪こんなにも簡単に追尾が成功するなんてね♪」
雪美姫は粉雪分身の妖術で形作った分身体の欠片のみでも残存した場合…。雪美姫の本体が死滅したとしても容易に復活出来る。
「私は分身体からでも復活出来るから本体が焼殺されたとしても大丈夫だからね♪油断大敵よ…最上級妖女の月影桜花姫ちゃん♪」
先程は雪国にて氷雪の欠片を桜花姫の着物に密着させた状態から桜花姫の家屋敷に潜入出来…。雪美姫は桜花姫の追尾に成功したのである。
『氷雪の欠片から復活ですって!?此奴…』
雪美姫は桜花姫に密着し始める。
「私はね…あんたみたいな妖女の小娘が人一倍大好きなのよ♪あんたみたいな小娘とこんな小部屋で二人きりだと接吻したくなっちゃうわ♪我慢出来ないのよ…」
雪美姫は表情が赤面すると再度桜花姫に口移ししたのである。雪美姫によって無理矢理に口移しされた直後…。
「ぐっ!」
桜花姫の体内の妖力が雪美姫の吸収能力によって吸収されたのである。
「えっ…」
『体内の妖力が雪美姫に吸収されちゃうわ…』
妖力の消耗によって衰弱死するかと思いきや…。桜花姫の肉体が白煙により一瞬で消滅したのである。
「えっ!?桜花姫は?」
『如何して彼女は消滅しちゃったの!?』
雪美姫の背後より何者かが背中に接触する。
「きゃっ!」
雪美姫は驚愕したのである。
「残念だったわね!粉雪妖女の雪美姫!あんたが笑顔で口移ししたのは私の分身体なのよ!」
「桜花姫!?」
桜花姫は雪美姫に接吻される直前に分身の妖術を発動…。雪美姫の吸収能力の無力化に成功する。雪美姫の口移しによって吸収された妖力は実質微量だったのである。
「桜花姫!分身体で私を欺瞞するなんて…あんたは悪知恵だけは一人前だわ!」
雪美姫は激怒…。鬼神の形相で桜花姫を睥睨したのである。
「雪美姫…所詮は悪因悪果よ!今度こそ死滅するのね!」
桜花姫は変化の妖術を発動する。変化の妖術とは事象の変化を実現させる妖術である。森羅万象のあらゆる物体を別の物体に変化させられる変幻自在の妖術…。桜花姫の十八番であり前回の霊魂土偶にも使用した荒唐無稽の妖術である。
「雪美姫!あんたは桜餅に変化しなさい!」
すると雪美姫の肉体が桜花姫の大好きな桜餅に変化…。
「変化の妖術は大成功ね♪」
桜花姫は変化の妖術が成功すると大喜びしたのである。
『美味しそうな桜餅だわ♪』
桜花姫は変化の妖術によって桜餅に変化した雪美姫を捕食…。雪美姫を食い殺したのである。
「桜餅♪」
『やっぱり美味だわ♪』
桜餅に変化させた雪美姫を捕食すると吸収された妖力が一瞬で回復する。変化の妖術で食べ物に変化させた対象物を摂取すれば消耗した妖力も回復させられる。
『彼女に吸収されちゃった妖力も戻ったし♪』
「一石二鳥ね♪」
今度こそ粉雪妖女の雪美姫を征伐出来たのである。
『事態は一件落着ね♪今度こそ熟睡するわよ♪』
桜花姫は再度寝転んだのである。
第十四話
巨大蜘蛛
粉雪妖女の雪美姫との死闘から四日後の真夜中…。東国と西国の国境の山道にて五人の匪賊達が一休みする。
「今日は大量でしたね!米俵を二石も入手出来るなんて…大儲けですぜ!」
小柄の匪賊が満面の笑顔で発言したのである。
「明日は如何しますかい?」
中肉中背の匪賊が周囲の者達に問い掛ける。すると小柄の匪賊が笑顔で…。
「明日は西国の村里を襲撃するなんて如何かな!?西国は片田舎だし食糧を分捕るには最適の場所ですぜ!」
小柄の匪賊の発言に大柄の匪賊が身震いしたのである。
「西国って…貴様は馬鹿者か!?」
「えっ!?誰が馬鹿者だって!?」
大柄の匪賊の馬鹿者発言に小柄の匪賊は腹立たしくなる。
「此奴!俺と喧嘩したいのか!?」
大柄の匪賊は恐る恐る…。
「貴様は知らないのか?不寝番の月影桜花姫の存在を…」
「不寝番の月影桜花姫だって?一体誰だよ?ひょっとして遊女の名前なのか?桜花姫なんて知らない名前だな…」
「貴様は本当に世間知らずだな…」
周囲の者達は小柄の匪賊に呆れ果てる。
「西国の村里って最上級妖女の月影桜花姫が居住する殺伐とした魔窟だぞ…」
今度は中肉中背の匪賊が発言する。
「西国の村里なんか襲撃すれば…俺達みたいな其処等の凡人なんて桜花姫に瞬殺されちまうだろうな…俺は御免だぜ…」
「桜花姫って妖女は最強なのか?」
小柄の匪賊が問い掛けると大柄の匪賊が即答したのである。
「勿論最強だぞ…噂話だが桜花姫は其処等の妖女とは別格に最強らしいし…俺達みたいに爪弾きされた人間にも容赦しないだろうよ…」
桜花姫は神出鬼没の悪霊が出現しなければ時たまであるが匪賊を征伐する。すると今度は別の小柄の匪賊が赤面した表情で…。
「月影桜花姫って…世間の噂話では絶世の美女らしいな!俺は本物の桜花姫に遭遇出来るなら遭遇したいぜ!」
「貴様は相当の物好きだな…外見が絶世の美女だとしても桜花姫は人外の妖女だからな…所詮妖女なんて神出鬼没の悪霊と同類だろうに…」
大柄の匪賊は妖女の桜花姫を神出鬼没の悪霊と同一視して揶揄したのである。
「兎にも角にも…明日は西国以外の人気の少なそうな村里を襲撃するか?」
「決定だな!」
「仕方ないな…」
すると直後…。
「うっ…」
突如として中肉中背の匪賊が極度の寒気により凍え始める。
「ん?」
「大丈夫か?」
「突然寒気が…悪寒戦慄だろうか?気味悪いぜ…」
極度の寒気からか全身が身震いしたのである。すると今度は大柄の匪賊が突然の寒気により凍え始める。
「俺も…寒気だ…」
「大丈夫かよ!?風邪か?」
直後…。周囲より気配を感じる。
「ん!?」
「気配だ…」
「気配だと?人気か?」
「ひょっとして武士団の奴等か!?」
「武士団だとしたら面倒だな…」
突然の気配に匪賊達は警戒したのである。中肉中背の匪賊は恐る恐る…。
「此奴は人気なのか?」
中肉中背の匪賊は気配の正体が人外であると察知する。
「気味悪いな…恐らくだが雰囲気的に人外っぽいぞ…」
「人外だと!?本当なのか!?」
「人外であれば気配の正体は山犬だろうか?」
匪賊達は恐る恐る護身用の刀剣を抜刀したのである。
「何が出現するか?」
目前の樹海より正体不明の人影を確認…。正体不明の人影はふら付いた様子で匪賊達に急接近する。
「彼奴は人影みたいだぞ…」
「人影か…物の怪の一種だろうか?」
正体不明の人影が接近してより数秒後…。暗闇の樹海より全身の皮膚が腐敗した小柄の怪物が出現したのである。
「ひっ!此奴は…」
「悪食餓鬼って悪霊だったよな!?」
「悪霊でも此奴なら其処等の子供でも打っ殺せるぜ!全員で袋叩きだ!悪食餓鬼を打っ殺しちまえ!」
小柄の匪賊は警戒した様子で悪食餓鬼に近寄ると悪食餓鬼の頭部を斬首…。一体の悪食餓鬼を仕留めたのである。
「大丈夫か?」
「此奴…仕留めたのか?」
周囲の匪賊達は警戒した四数で身動きしなくなった悪食餓鬼に恐る恐る近寄り始める。悪食餓鬼は何一つとして動作しない。
「此奴は身動きしなくなったぞ…」
「此奴は本当に雑魚みたいだな…其処等の子供でも仕留められそうだ…」
悪食餓鬼は非常に脆弱の悪霊として知られる。悪食餓鬼の脆弱さは頑張れば人間の子供でも容易に仕留められる程度である。
「如何してこんな場所に悪霊が出現しやがった?」
「悪霊は神出鬼没らしいからな…突然出現しやがるぞ…」
「兎にも角にも…悪霊は仕留めたからな…一休みしないか?」
匪賊達は再度休憩するのだが…。再度寒気を感じる。
「今度も寒気を感じるぞ…」
「ひょっとして今度も悪霊が出現しやがったのか?」
匪賊達は再度警戒し始め…。即座に刀剣を抜刀したのである。
「今度は何が出現するのかな?悪霊か!?山犬か!?」
直後…。
「此奴は現実なのかよ?大群とは…」
周辺の樹海より数十体もの悪食餓鬼が出現したのである。
「今度は悪霊が大量に出現したぞ…如何するよ?」
「相手するのか?」
すると大柄の匪賊が恐る恐る…。
「馬鹿者が!多勢に無勢だぜ!悪食餓鬼が雑魚だとしても相手が大群では俺達が打っ殺されちまうよ!」
悪霊は悪霊でも悪食餓鬼は比較的非力の子供でも仕留められる程度の脆弱さであるが多勢に無勢であり圧倒的に不利である。
「一か八かだ!此処から逃げないか?」
「同感だ!俺もこんな場所では死にたくないからな!」
不本意であるが彼等は逃走を決意したのである。
「畜生が!止むを得ないか!」
彼等は悪食餓鬼の大群から逃走する寸前…。
「ん?」
突如として悪食餓鬼の大群は身動きしなくなる。
「えっ!?一体何が?」
身動きしなくなった悪食餓鬼の大群に匪賊達は何が発生したのか不思議がる。悪食餓鬼の大群は恐る恐る後退りし始め…。鈍足の身動きで逃走し始めたのである。
「悪霊の奴等…如何して俺達から逃げやがった?」
「何はともあれ…俺達は命拾い出来たな!」
「はぁ…人騒がせな悪霊だぜ!」
匪賊達は命拾いに安堵するのだが…。
「えっ…」
背後より不吉の気配を感じる。
「今度は…」
五人の匪賊達は警戒した様子で恐る恐る背後を直視…。
「ひっ!」
「うわっ!此奴は蜘蛛の怪物だ!」
匪賊達の背後に存在するのは正体不明の巨大蜘蛛らしき異様の怪物が出現する。
「蜘蛛の怪物に食い殺されちまう!今度こそ逃げろ!」
匪賊達は一目散に逃走したのである。
第十五話
悪戦苦闘
翌日の真昼…。西国に隣接する荒廃化した廃村の地面より野良犬に咀嚼されたと思しき大量の血肉やら人骨が無数に発見されたのである。近隣の村人達からは無間地獄の亡者達を目撃…。出没したとの噂話が国全体に出回り始める。同時刻…。東国近辺の辺境地より悪食餓鬼の大群が隣接する各地に出没したのである。村人達の噂話が気になった桜花姫は即刻問題の廃村へと直行する。
「廃村の無数の人骨と肉片…東国に出没した悪食餓鬼の大群…」
『無数の悪霊が出現した因果関係は一体何かしら?』
西国から非常に近辺なのか数分間で到着する程度の近距離である。桜花姫は恐る恐る廃村の様子を眺望する。
「随分殺風景ね…」
『廃村だから当然かしら?』
廃村は誰一人として村人が定住しない魔窟であり無人の廃村から無数の霊気を察知したのである。
『廃村から無数の霊気を感じるわ…悪霊なのかしら?』
人気は皆無であり廃村の雰囲気から黄泉の世界を連想させる。
「廃村は気味悪いわね…」
『空気も息苦しいし…』
廃村は非常に息苦しい場所であり普通の人間であれば卒倒しそうな雰囲気である。
「今回の超常現象では何が出現するのかしら?」
『恐らく今回出現した悪霊は…亡霊花嫁は勿論…亡霊妖婦よりも面倒臭いかも知れないわね…』
桜花姫は廃村の重苦しい空気からか非常に気味悪くなる。廃村の雰囲気から気力が無気力化するものの…。
『廃村中心部の楼閣が非常に不吉だわ…』
廃村中心地の楼閣から非常に重苦しい無数の霊気を察知したのである。
『妖力を消耗するのも面倒臭いからね…此処は力任せで強行突破よ!』
桜花姫は鈍足であるものの…。真正面から荒廃した廃村へと突入する。
「えっ?」
周辺より無数の気配を感じる。
『何かしら?』
すると周辺の地面より無数の悪食餓鬼が出現…。
『悪食餓鬼の大群だわ…私に対する彼等なりの挨拶かしら?』
悪食餓鬼の大群は移動中の桜花姫に殺到したのである。
『悪食餓鬼にとって私は嗜好品みたいね…』
桜花姫は即座に神性妖術の天道天眼を発動…。半透明化した妖力の防壁を発動したのである。防壁の表面より半透明化した血紅色の魔手を無数に出現させる。
『鬱陶しい奴等だわ…』
妖力の防壁から出現した無数の魔手は桜花姫に殺到する無数の悪食餓鬼の猛攻撃から桜花姫の本体を防備…。妖力の防壁から出現した血紅色の魔手は桜花姫に殺到し続ける悪食餓鬼の大群を縦横無尽に蹴散らせる。
『人気者も災難だわ♪』
桜花姫は泰然自若とした様子である。一方悪食餓鬼の大群は只管我先にと桜花姫に接近し続ける。
「あんた達は相当の命知らずね!」
無謀にも殺到し続ける悪食餓鬼の大群を容易に死滅させたのである。桜花姫の発動した魔手に接触した悪食餓鬼は一瞬で肉体が粉砕され…。彼等は完膚なきまでに蹴散らされたのである。桜花姫が通過した直後…。悪食餓鬼の無数の肉片やら血肉が桜花姫の路傍に散乱したのである。一方の桜花姫は只管一直線に驀進し続ける。移動を開始してより十数分後…。桜花姫は廃村中心部の楼閣へと到達する。
『楼閣から悪食餓鬼以外の霊気を感じるわね…』
楼閣の最上階から不吉の霊気が感じられる。
『楼閣には何が出現したのかしら?』
桜花姫は一息する。
『潜入しましょうかね…』
警戒した様子で恐る恐る楼閣内部へと潜入したのである。各居室には異国風の調度品が散乱した状態であり居住者は誰一人として確認出来ない。
『如何やら大昔は富裕層の居住地だったみたいね…』
楼閣の各室内は全面的に洋式風の雰囲気だったのである。
『室内の雰囲気は異国を意識したのかしら?室内だけが異世界みたいだわ…』
洋式風の調度品ばかりであり室内全体が異世界みたいに感じられる。
『最上層に移動しましょう…』
階段を利用すると楼閣の最上層へと到達する。
『此処は骨董品の博物館みたいな場所だわ…』
楼閣の最上階に到達すると最上層には骨董品の貯蔵庫であり桜花姫は無尽蔵の異国風の骨董品に魅了されたのである。
『楼閣の骨董品を競売しちゃえば私も富裕層の仲間入りかしら!』
すると貯蔵庫の中心部には摩訶不思議なる骨董品を発見…。
「えっ…」
中心部の骨董品が非常に気になったのである。
「何かしら?」
『ひょっとして能面?』
桜花姫が気になった代物とは精巧に形作られた能面であるものの…。
『能面の表情が気味悪いわね…』
能面は非常に不自然であり等身大の人間と同程度の巨大さである。表情も気味悪く目前の相手を冷笑するかのように感じられる。
『芸術的だけど非常に悪趣味だわ…能面って外見的にも不吉なのよね…』
桜花姫は巨大能面を直視し続けると全身に鳥肌が立つのか非常に気味悪くなる。
『私には所有者の感受性が理解出来ないわね…』
桜花姫は非常に気味悪くなるのだが…。警戒した様子で恐る恐る巨大能面へと近寄ったのである。
『能面なんて気味悪いだけなのよ…私は大嫌いだわ…』
迂闊にも巨大能面の表面に接触する。
『普通の能面よりも随分特大なのね…単なる装飾品なのかしら?』
先程から不思議に感じるのか桜花姫が楼閣へと潜入した数分後…。
「えっ?」
室内全体に充満した霊気が完全に消失したのである。
「先程から内部の霊気が感じられないのよね…」
『内部の悪霊は別の場所に移動しちゃったのかしら?』
室内では霊気が皆無であると判断…。
『仕方ないわ…此処は出直しね…』
桜花姫は撤収を余儀無くされる。
『一先ずは楼閣から脱出しましょう…』
桜花姫は恐る恐る外部の庭園へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ!?」
突如として背後から物音が響き渡る。
『物音!?』
桜花姫は即座に背後の様子を警戒し始め…。
『一体何事なの!?』
先程の巨大能面に注目する。
『能面?』
巨大能面の両目部分が蛍光色へと変色した状態であり八本の人間の細腕らしき脚部が形作られる。姿形は巨大化した巨大人面蜘蛛であり中心部の胴体部分が巨大能面である。
「ひょっとしてあんたは器物の悪霊…【小面袋蜘蛛】かしら!?」
『こんな場所で厄介なのが出現するなんてね…』
小面袋蜘蛛とは器物である巨大能面に悪霊が憑霊した憑依系統の悪霊…。南国では別名巨大能面の付喪神やら肉食能面とも呼称される。小面袋蜘蛛の性質上…。器物に憑霊出来る呪力によって天道天眼を保有する最上級妖女の桜花姫をも錯覚させたのである。
『楼閣から感じられた気配の正体は小面袋蜘蛛だったのね…』
すると小面袋蜘蛛の胴体部分である巨大能面の両目が桜花姫を凝視し始め…。
「げっ!?」
小面袋蜘蛛は不吉の形相で桜花姫を冷笑し始める。
『此奴は気味悪いわね…』
桜花姫は不吉の形相で冷笑し続ける小面袋蜘蛛に気味悪くなる。すると巨大能面の口先より粘着性の蜘蛛の白糸を噴出したのである。
「きゃっ!」
小面袋蜘蛛の粘着性の白糸が桜花姫の皮膚に接触した直後…。
「ぐっ!」
『何かしら?妖力が消耗するなんて…』
桜花姫は体内の妖力が急速に消耗したのである。体内の妖力が一瞬で半減したのか肉体の身動きすらも負担に感じられる。
『迂闊だったわ…巨大能面の正体が悪霊の小面袋蜘蛛だったなんて…如何して今迄小面袋蜘蛛の存在に気付けなかったのかしら?』
小面袋蜘蛛の粘着性の白糸に接触すると莫大なる妖力を一瞬で消耗する。大量の妖力を駆使する攻撃法では小面袋蜘蛛を仕留めるのは非常に困難である。莫大なる妖力と天道天眼による多種多様の妖術を保有化…。妖術を自由自在に扱える桜花姫にとって小面袋蜘蛛は相性的にも最悪の天敵だったのである。
『私は小面袋蜘蛛の餌食に…』
桜花姫は莫大なる妖力の消耗によって力尽きたのか床面へと横たわる。
『小面袋蜘蛛…』
床面に横たわった状態の桜花姫の隣接にて小面袋蜘蛛が急接近する。
『私を食い殺したければ食い殺しなさいよ…』
桜花姫は小面袋蜘蛛に捕食されるのを覚悟したのである。
『最上級妖女の私が…格下の悪霊を相手にこっ酷く圧倒されるなんて皮肉ね…』
捕食されるのを覚悟した桜花姫であるが…。
『やっぱりこんな場所で食い殺されるのは御免だわ!』
桜花姫は僅少の妖力によって時空間停止の妖術の使用を決意する。
『止むを得ないわね…一か八かの大博打よ!』
桜花姫は時空間停止の妖術を発動したのである。
『小面袋蜘蛛…身動きしなくなったわね…』
直後…。小面袋蜘蛛は一時的に身動きしなくなる。時空間停止の妖術とは一定時間のみ周囲の時間と空間を急停止させられる高等妖術の一種…。自身の肉体のみは自由自在に身動き出来るが周囲の時空間は何もかもが急停止した状態だったのである。
『時空間停止の妖術…一先ずは成功ね…』
桜花姫は周囲を警戒…。時空間停止の妖術成功に安堵したのである。
『今度は…』
今度は空間移動の妖術を発動する。空間移動の妖術とは所謂瞬間移動の一種であり瞬時に安全地帯に移動出来る移動系統の妖術である。桜花姫は空間移動の妖術の駆使によって楼閣から無事脱出出来…。近辺の山道へと移動したのである。
「はぁ…はぁ…」
『危機一髪だったわ…一瞬小面袋蜘蛛に食い殺されるかと…』
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒…。無事に楼閣から脱出出来たのである。
『脱出には成功したみたいね…』
桜花姫は妖力の消耗によって妖術の使用は不可能であり一時的に退却を余儀無くさせられる。
『時空間停止の妖術は解除されたし…』
桜花姫は大量の妖力消耗によって妖術が使用出来なくなる。
『こんな状態では小面袋蜘蛛は勿論…悪食餓鬼にも対抗出来ないわね…』
桜花姫は不本意であるが…。
『即刻西国に戻らないと…妖力が空っぽだわ…』
一時的に退却しなくては悪霊征伐が出来なくなる。
『こんなにも妖力を消耗した状態では妖術を駆使出来ないわね…』
桜花姫は西国の村里へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
周囲の地面より数体の悪食餓鬼が出現する。
『今度は悪食餓鬼!?』
彼等は地面に横たわった状態の桜花姫へと殺到したのである。
『こんな場所でも無数に出現するなんて…』
最早桜花姫は妖力を消耗した満身創痍の状態であり数体の悪食餓鬼さえも仕留められなくなる。
『本調子の私だったら悪食餓鬼なんて片手間の妖術で片付けられちゃうのに…』
本調子の桜花姫にとって悪食餓鬼の大群相手は片手間の存在であるものの…。大量の妖力を消耗した状態では複数の悪食餓鬼でさえも仕留められなくなる。彼等は地面に横たわった状態の桜花姫へと無我夢中に殺到したのである。
「きゃっ!」
桜花姫は数体の悪食餓鬼に戦慄し始め…。恐る恐る後退りする。
『私は悪食餓鬼に食い殺されちゃうのね…』
数体の悪食餓鬼が桜花姫の肉体に接触する直前…。
「えっ!?」
悪食餓鬼は突発的に身動きしなくなる。
『如何して彼等は身動きしなくなったのかしら?』
恐る恐る地面を注視し始め…。
「きゃっ!」
『蜘蛛の白糸だわ…』
悪食餓鬼の身動きを封殺したのは小面袋蜘蛛の白糸だったのである。
『ひょっとして小面袋蜘蛛かしら?』
彼等の背後には標的である桜花姫を追撃中の強豪…。小面袋蜘蛛が近寄り始める。
「小面袋蜘蛛!?」
小面袋蜘蛛に戦慄した桜花姫は身体髪膚が膠着したのである。
『私は今度こそ小面袋蜘蛛に食い殺されちゃうわ…』
金縛りの妖術によって楼閣から危機一髪脱出出来たものの…。小面袋蜘蛛は強大なる桜花姫の妖力を目印に桜花姫の居場所を察知する。必死に逃走する桜花姫の行方を見逃さなかったのである。小面袋蜘蛛は体内から噴出させた蜘蛛の白糸によって身動き出来なくなった数体の悪食餓鬼を捕食し始める。
『神出鬼没の悪霊が悪霊を共食いするなんて…』
桜花姫は悪霊が悪霊を食い殺す残虐非道の場面に気味悪くなる。食い殺される悪食餓鬼みたいに自分自身も小面袋蜘蛛に食い殺されるのではと想像すると希死念慮が根強くなる。小面袋蜘蛛は地面に横たわった状態の桜花姫に近寄ったかと思いきや…。小面袋蜘蛛の鋭利の脚部が桜花姫の腹部を抉り抜いたのである。
「ぎゃっ!」
桜花姫は小面袋蜘蛛に急所を抉り抜かれた直後…。
「ぐっ!」
桜花姫は吐血したのである。自身の着物は勿論…。周辺の地面は桜花姫の大量の出血により血紅色へと変色する。
『結局私は…小面袋蜘蛛に捕食されちゃうのね…』
桜花姫は致命傷であり失血死寸前の瀕死状態である。最早全身の無感覚によって痛覚すらも感じられなくなる。
『私はもう少しだけ…長生きしたかったな…』
完全に身動き出来なくなった桜花姫は今度こそ自身の最期を覚悟したのである。すると直後…。
「きゃっ!」
両目を瞑目すると耳元より強烈なる爆発音が耳元全体に響き渡る。
「えっ!?」
『爆発音かしら?』
恐る恐る両目を見開くと無数の血肉が確認出来る。
『一体何が発生したの?』
桜花姫は恐る恐る周囲を確認すると肉体を粉砕された小面袋蜘蛛の血肉が散乱した状態だったのである。
「えっ…」
『小面袋蜘蛛!?如何してこんな状態に…』
死滅した小面袋蜘蛛の背後には携帯式の榴弾砲を武装した僧服の何者かが地面に横たわった状態の桜花姫に恐る恐る近寄る。
『誰なのかしら?人間の僧侶?』
僧服の人物とは以前南国の荒神山で遭遇した僧侶の八正道だったのである。精神的にも肉体的にも衰弱化した桜花姫にとって僧侶の八正道は守護神にも感じられる。
「危機一髪でしたね…桜花姫様…」
「あんたはひょっとして…八正道様?」
「私ですよ…月影桜花姫様…大丈夫ですか?」
八正道は桜花姫の抉り抜かれた胸背の外傷を直視…。
「えっ…桜花姫様…」
『胸背が…』
八正道は桜花姫の傷口に戦慄したのである。
『桜花姫様は致命傷ですね…最早こんな状態だと桜花姫様は…』
桜花姫の外傷を直視した八正道は生存は絶望的であると感じる。
「私なら大丈夫よ…八正道様…外傷なら自力で治癒出来るから…」
「自力で治癒ですと?」
すると桜花姫の傷口は体内の妖力によって治癒されたのである。
「なっ!?致命的外傷も一瞬で元通りなんて…」
『桜花姫様の妖力は正真正銘万能薬ですね…』
八正道は桜花姫の再生能力に驚愕する。
『ですが桜花姫様は出血多量の悪影響によって衰弱化された状態ですね…』
桜花姫は多量の出血により肉体的にも精神的にも疲弊した状態だったのである。
「如何して人間の八正道様が悪霊の小面袋蜘蛛を仕留められたのかしら?小面袋蜘蛛って悪霊でも段違いに強敵なのよ…」
「小面袋蜘蛛は妖力を無力化させる器物の悪霊ですよね?妖力を多用すれば悪戦苦闘は必須でしょうが妖力の未利用である攻撃法によって撃退出来るのでしょうね…今回の悪霊は莫大なる妖力を行使する妖女では最悪の天敵かと…」
八正道は妖力を利用しない物理的攻撃法こそが器物の悪霊小面袋蜘蛛にとって唯一の弱点であると推測する。小面袋蜘蛛は摩訶不思議の妖力を多用する妖女では相性的にも最悪であるものの…。武装化した人間には滅法脆弱であり通常の装備でも小面袋蜘蛛は容易に撃退出来るとされる。
「ですが一安心ですね…桜花姫様…桜花姫様が無事なのが何よりですから…」
「はぁ…八正道様…」
桜花姫は落涙し始め…。涙腺から大粒の涙が零れ落ちる。
「八正道様!」
桜花姫は八正道の腹部に力一杯密着したのである。
「桜花姫様!?突然如何されましたか!?」
八正道は突如として密着した桜花姫に動揺するものの…。
『桜花姫様の様子…純粋無垢の幼子みたいですね…』
桜花姫の様子は幼女であり純情可憐に感じられる。
「桜花姫様…」
八正道は疲弊した桜花姫を直視し続けると悲痛に感じる
『余程辛苦だったのですね…桜花姫様…』
八正道は落涙する桜花姫を直視し続けると人一倍病弱だった愛娘の存在を想起したのである。
『私の愛娘は一昨年…疫病によって…』
八正道は一昨年不治の疫病で死去した愛娘を追想し始め…。一瞬であるが八正道も落涙したのである。
第十六話
罪悪感
桜花姫が落涙し始めてから数分後…。
「桜花姫様?空腹なのでは?」
「えっ…」
八正道は空腹の桜花姫に俵型の麦飯を手渡したのである。
「麦飯ですが…如何でしょう?桜花姫様は疲労の様子ですし…」
「御免あそばせ…八正道様…こんな貴重品を私なんかに大丈夫なのかしら?八正道様の食事が…」
「先程の戦闘で桜花姫様が空腹状態なのは一目瞭然ですし…桜花姫様が無事なのが何よりですからね!桜花姫様が気になさらなくても私なら大丈夫ですよ!」
「八正道様…」
桜花姫は八正道と一緒の雰囲気が一瞬父親との距離感を想像したのである。すると感情が高揚したのか桜花姫の両目から再度大粒の涙が零れ落ちる。
『父親との距離感って…こんな雰囲気なのかしら?』
桜花姫は力一杯麦飯を平らげる。一瞬で麦飯を完食したのである。
「桜花姫様は相当空腹だったのですね…」
八正道は一瞬で麦飯を完食した桜花姫に苦笑いする。
「小面袋蜘蛛に体内の妖力を消耗させられちゃったからね…妖力を回復させないと妖術は駆使出来ないわ…」
すると桜花姫は恐る恐る八正道に告白したのである。
「私…一瞬だけど八正道様が私の父親だったらって…妄想しちゃったわ…」
「えっ!?私が桜花姫様の父親ですと?」
八正道は桜花姫の発言に一瞬驚愕するものの…。
『こんな私が桜花姫様の父親ですか!』
八正道は桜花姫との親子関係を想像すると内心大喜びしたのである。
「八正道様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
桜花姫は叫喚地獄だった幼少期の出来事から悪霊捕食者として活動し始めた経緯を八正道に一部始終追憶する。
「大昔の私はね…」
桜花姫の血筋は名門の武家一族…。月影一族の一人娘であり桜花姫の家系は分家に分類される。桜花姫の父親は東国武士団夜番警備隊所属の最上級武士【月影鉄鬼丸】であり母親は人魚妖女の【月影春海姫】…。人間の鉄鬼丸と純血の妖女である春海姫の混血が愛娘の桜花姫である。父親の鉄鬼丸は世界暦四千九百九十二年四月六日に死去…。同年四月七日の桜花姫の出産日前日での出来事だったのである。月影鉄鬼丸の死後…。桜花姫は母親の春海姫と一緒に生活したのである。東国武士団の最上級武士であった鉄鬼丸の財産によって毎日が暖衣飽食の生活であり非常に裕福であったものの…。桜花姫は春風駘蕩の毎日が非常に退屈であり武陵桃源の暖衣飽食に極度の倦怠感を感じる。四六時中憂鬱であった幼少期であるが…。桜花姫にとって人生最大の変化が到来したのである。不運にも十二歳の誕生日後日…。断崖絶壁の落石に直面する。不運にも桜花姫は突然の落石によって背中を手酷く損傷したのである。
「落石ですか…」
「私は落石で絶体絶命だったのよね…」
落石による事故後…。桜花姫は半死半生の瀕死状態であったものの背中の外傷が一瞬で自然治癒したのである。落石による外傷が全治した直後…。血紅色であった半透明の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光し始める。桜花姫は伝説の神性妖術として認識される天道天眼を唐突に開眼したのである。突如として体内の妖力が通常の妖女よりも桁違いに増大化…。規格外の妖力の覚醒により日に日に強大化し続ける桜花姫は体内で蓄積された妖力を自力で抑制出来なくなる。
「当時子供だった私はね…妖力を自由自在に扱えなかったのよ…」
二年後の十四歳の時期である。妖力を抑制出来なくなった桜花姫は不本意にも妖力の暴走によって唯一の肉親である母親の春海姫を殺害…。
「私は肉親の母親を殺害した…極悪非道の重罪犯なのよ…」
「えっ!?桜花姫様…」
『温厚篤実の桜花姫様が血縁者である母君様を…殺害ですと!?』
衝撃の事実に八正道は驚愕する。
「桜花姫様が母君の月影春海姫様を殺害されたなんて非常に信じ難い内容ですが…先程の内容は事実なのでしょうか?」
八正道は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「残念だけど…私が母様を殺したのは事実なのよね…」
「ですが正直…先程の内容は非常に信じ難いですね…温厚篤実の桜花姫様が母君の春海姫様を殺害されたなんて…」
八正道は桜花姫自身の誤認識であると感じる。
「八正道様は全否定したいかも知れないけれどね…私は正真正銘…残虐非道の殺人鬼である事実は否定出来ないのよね…」
残虐非道の殺人鬼として明断された桜花姫は東国武士団の看守達により一時的に身柄を隔離される。東国の監獄にて武士団の看守達から一晩中拷問されたものの…。看守達は桜花姫の規格外の生命力に戦慄したのである。看守達は桜花姫の常人をも超越した生命力に戦慄…。不本意であるが武士団の看守達は彼女を監獄から釈放されたのである。人間達にとって害悪である悪霊から村人達を守護する不寝番としての活動を必須要件として神出鬼没の悪霊は勿論…。大勢の匪賊達を問答無用に征伐したのである。妖力の順応化は非常に困難であったものの日に日に妖力を多用し続けた結果…。十六歳の中頃には神性妖術の天道天眼を自由自在に駆使出来る程度に抑制出来たのである。
「桜花姫様が悪霊捕食者として活動された理由とは…不本意にも春海姫様を殺害された自分自身の罪悪感だったのですね…」
「内心…忘却したい黒歴史なのよね…」
「ですが桜花姫様は人一倍勇猛果敢の女神様ですよ…勿論誰よりも♪」
桜花姫は八正道の女神様発言に返答する。
「私が女神様なんて…八正道様は随分表現が大袈裟なのね…」
「桜花姫様は不本意にも幼少期に春海姫様を殺害されたのは否定したい事実なのかも知れません…ですが何よりも桜花姫様は春海姫様への罪滅ぼしとして今迄に無数の悪霊は勿論…極悪非道の匪賊達から村人達を守護する悪霊捕食者として粉骨砕身されたのも事実なのですからね!」
「八正道様…」
桜花姫の顔色が変化したのである。
「所詮妖女も神族も森羅万象の一部であり微細の生命体なのですよ!森羅万象に現存する生命体とは善悪の集合体であり非常に複雑ですからね!勿論こんな私自身にも邪心は存在しますよ!所詮私も一人の人間ですからね…」
桜花姫は八正道の鼓舞激励によって微弱であるものの…。
「八正道様♪八正道様には大変感謝するわ…」
桜花姫は八正道の発言に笑顔が戻ったのである。
「桜花姫様♪笑顔が戻りましたね♪私自身桜花姫様に役立てただけでも恐悦至極に感じられますよ♪」
「八正道様♪」
桜花姫は八正道の鼓舞激励に一安心する。
「桜花姫様…今後は如何されますか?」
「無数の霊気が国全体に分散しちゃったみたいだからね…」
『亡者達が国全体に徘徊し続けると私でも対処出来なくなるわ…』
突如として莫大なる無数の悪食餓鬼の気配を察知したのである。
「なっ!?国全体に無数の霊気ですと!?一大事ですね…即刻神出鬼没の悪霊を撃退しなければ被害が国全体に拡大するでしょうね…」
「悪食餓鬼が増大化した悪影響ね…」
「ですがこんなにも突発的に悪食餓鬼の大群が出現するなんて…一体何が原因なのでしょうか?」
「正直私にも何が何やら…如何してこんなにも悪食餓鬼の大群が各地の村里に出現しちゃったのかしら?」
すると桜花姫は八正道に協力を要望する。
「八正道様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
「今回ばかりは八正道様の協力が必要不可欠なのよ…正直今回の悪霊征伐は私だけで解決するのは心細いわ…」
正直今回も単独で悪霊事件を解決させたい桜花姫であるが…。先程の予想外の悪戦苦闘によって極度に心細くなる。八正道は桜花姫にとって最高の協力者へと昇格する。
「勿論ですとも♪桜花姫様♪」
八正道は桜花姫の要望に大喜びで承諾したのである。
「私は是非とも桜花姫様に協力しますよ♪何よりも神出鬼没の悪霊は放置出来ませんからね…」
「八正道様と一緒なら心強いわ♪」
「私と一緒に極悪非道の悪霊を征伐しましょう!桜花姫様!」
二人は早速行動を開始する。
第十七話
中心街
移動を開始し始めてから一時間が経過したのである。桜花姫と八正道は増大化した無数の霊気を感じる東国内地へと到達…。
「城下町の中心街みたいね…」
「桜花姫様…潜入しましょう…」
桜花姫と八正道は警戒した様子で恐る恐る城下町の中心街に潜入したのである。東国の絶景は全域が主戦場であり城下町の地面には腐敗した無数の肉片は勿論…。散乱した血塗れの臓器やら血肉が無数に確認出来る。
「桜花姫様…此処は本物の地獄絵ですね…東国の城下町では一体何が?」
先程遭遇した悪食餓鬼の大群が無数に出現したのである。悪食餓鬼は大勢で逃走中の町民達に殺到…。彼等は人間の血肉を無我夢中に捕食したのである。
「町民達が…」
八正道は前代未聞の惨劇に戦慄する。
「彼等にとって人間の血肉は嗜好品だからね…」
すると徘徊中の無数の悪食餓鬼が移動中の桜花姫と八正道に殺到し始める。
「桜花姫様!?悪食餓鬼が!」
彼等は大勢で襲撃するものの…。
「止むを得ないわね…」
桜花姫が念力の妖術を発動すると悪食餓鬼の大群は容易に瞬殺される。
「鬱陶しい悪霊だわ…」
桜花姫と八正道の地面周辺には悪食餓鬼の血肉やら体内の臓器が無数に散乱する。
『桜花姫様は直接手出ししなくとも悪霊を確実に征伐出来るなんて…妖術とは摩訶不思議ですが…私が想像する以上に荒唐無稽なのですね…』
八正道は桜花姫の天道天眼の効力に驚愕したのである。
「桜花姫様の妖力を肉眼で拝見しましたが…こんなにも天下無双とは非常に心強いですな…」
「私にとって悪食餓鬼は大群でも片手間よ♪」
「なっ!?桜花姫様…こんな大群を相手に片手間ですと!?」
『ですが桜花姫様の妖力がこんなにも強力であれば私の協力なんて無意味なのでは?正直悪霊征伐なら桜花姫様だけで事足りるでしょうね…私の出番は無さそうですが…』
八正道は内心最上級妖女の桜花姫には同行者の協力は不必要なのではと感じる。
「鬱陶しい奴等ね…」
桜花姫は苛立った様子であり町民達の血肉を無我夢中に捕食し続ける悪食餓鬼の大群に猛反撃したのである。無数の悪食餓鬼の頭部を念力の妖術によって破裂させる。頭部が破裂した悪食餓鬼は途端に身動き出来なくなる。
「相手が微弱の悪食餓鬼であれば…桜花姫様の妖力は天下無敵ですね♪」
「私にとって悪食餓鬼なんて問題外よ…」
最上級妖女の桜花姫にとって其処等の悪霊やら通常の妖女であれば滅法天下無双であるものの…。
『悪食餓鬼が問題外でも…妖力の消耗戦で私自身疲弊状態なのよね…』
先程の予想外の悪戦苦闘により妖力の消耗戦が影響したのか息苦しい深呼吸が目立ち始めたのである。
「桜花姫様?」
「八正道様…何かしら?」
「大丈夫ですか?何やら桜花姫様の顔色が…」
八正道は息苦しそうに深呼吸し続ける桜花姫を心配する。
「別に…私なら大丈夫よ…八正道様…」
「ですが桜花姫様の顔色が…」
桜花姫は内心過剰に心配する八正道が口煩いと感じる。
「八正道様は人一倍心配性なのね…」
『桜花姫様…空元気ですね…本当に大丈夫なのでしょうか?』
桜花姫が空元気なのは一目瞭然である。
「八正道様が心配しなくても私なら大丈夫よ…」
桜花姫は苦し紛れであるが自身は大丈夫であると断言する。
「心配したって仕方ないわ…兎にも角にも…城下町の中心地に直行しましょう!」
「勿論ですとも…桜花姫様…」
二人は移動を開始してより数分後…。中心地区域内に到達したのである。
「桜花姫様…城下町の中心地に到達しました…」
「城下町の中心地?」
二人は城下町の中心地区域内へと到達するものの…。
「城下町は無人地帯だわ…此処では人気は感じられないわね…」
東国の町民達は誰一人として確認出来ない。
「町民達の居場所は?」
「東国の町民達は武士団の本拠地である根城へと避難されたみたいですね…最早東国全域が大勢の亡者達によって占拠されましたからね…最早城下町には神出鬼没の悪霊以外は存在しません…」
「城下町は悪霊の魔窟みたいね…」
すると八正道は桜花姫に助言する。
「桜花姫様の妖術は変幻自在かも知れませんが…先程の小面袋蜘蛛みたいな最上級の悪霊にでも遭遇すれば確実に苦戦するでしょう…桜花姫様には護身用の装備品が必要不可欠かと!油断大敵ですぞ!」
「護身用の装備品ですって?」
「備えあれば患いなしですよ!」
八正道は桜花姫を道案内…。
「武士団の駐屯地で装備品を確保しましょう!私が道案内しますから…」
桜花姫と一緒に武士団の駐屯地へと移動したのである。
第十八話
敗走
二人が移動を開始してより数分後…。桜花姫と八正道は目的地である武士団の駐屯地へと到達する。
「此処が武士団の駐屯地かしら?無人の廃屋っぽいわね…」
「武士団の駐屯地も悪食餓鬼の大群に占拠されましたからね…」
二人は恐る恐る無人の駐屯地へと潜入したのである。
「武士団は撤退しちゃったのかしら?」
駐屯地は無人化した廃屋であり東国武士団の守備隊は悪食餓鬼の猛攻撃によって危機一髪撤退…。彼等は一時的に本拠地である武士団の根城へと退却したのである。
「彼等は此処を放棄したのでしょうね…」
通路は血塗れの刀剣やら甲冑が彼方此方に散乱…。人気は皆無である。
「如何やら今回は空前絶後の非常事態みたいね…」
「何しろ今回の相手は神出鬼没の悪霊ですからね…」
二人は桃源郷神国が滅亡するのは時間の問題であると実感する。
「武士団の守備隊が少数精鋭であったとしても現実的に無数の悪霊を撲滅させるなんて夢物語でしょう…ですが彼等が撤退した恩恵によって武器庫へは容易に潜入出来ましたからね…」
最早守備隊の駐屯地は無防備の状態であり非武装の町民達でも容易に潜入出来る。
「駐屯地への行き来は自由に出来そうね…」
「先程は私も駐屯地の武器庫で榴弾砲を確保出来ましたからね…」
桜花姫と八正道は恐る恐る無人の武器庫へと入室する。武器庫には多種多様の火縄銃やら手榴弾は勿論…。
「異国の銃火器ばかりだわ…此処は武器屋かしら?」
異国で購入された最新式の散弾銃やら携帯式の迫撃砲が無尽蔵に確認出来る。
「桜花姫様?連発銃なんて如何でしょうか?」
「連発銃ですって?」
「連発銃であれば誰でも手軽に扱えるでしょう…護身用で使用するのであれば連発銃は持って来いですね…」
八正道は軽量化された携帯式の連発銃を桜花姫に手渡したものの…。
「八正道様…残念だけど私には連発銃は相応しくないわね…」
「桜花姫様?」
桜花姫は連発銃の使用を拒絶する。
『私自身砲術は未経験だからね…連発銃なんて代物は私には扱えないわ…』
基本的に荒唐無稽の妖術を駆使する桜花姫にとって自身の肉体を行使する砲術やら武芸は不向きであり連発銃の使用法は滅法専門外の領域である。
『短刀の懐刀だったら愚鈍の私でも…』
桜花姫は体術やら武術を多用する兵法は不向きであるものの…。比較的誰にでも扱えそうな短刀の懐刀を護身用に所持する。
「八正道様…即刻武器庫から脱出しましょう…」
「承知しました…桜花姫様…」
すると通路より物音が響き渡る。
『通路から物音だわ…相手は悪食餓鬼かしら?』
通路より無数の霊気を察知したのである。
「気になるわね…移動しましょう!」
『無数の霊気が密集した状態だわ…正体は何かしら!?』
桜花姫は恐る恐る武器庫から脱出…。
「えっ…」
物音の正体に桜花姫は驚愕する。
『怪物!?』
通路に佇立する正体不明の怪物とは無数の悪食餓鬼が融合化した一頭身の肉団子の悪霊である。
『此奴は悪食餓鬼とは別物だわ…悪霊の変異体かしら?』
姿形のみなら肉団子を連想させる一頭身の肉塊人間であるものの…。巨体の体格であり全身の皮膚の表面には醜悪なる悪食餓鬼の顔面が無数に確認出来る。
『先程から感じる無数の霊気って…肉団子の怪物だったのね…』
八正道も恐る恐る武器庫から退室する。
「ひょっとして悪霊の【百鬼悪食餓鬼】では?」
「百鬼悪食餓鬼ですって?」
「悪食餓鬼の集合体でしょうね…」
「悪食餓鬼の集合体?」
八正道は桜花姫に解説したのである。
「百鬼悪食餓鬼は…」
百鬼悪食餓鬼とは通常の悪食餓鬼の亜種とされる強化型の悪霊であり別名としては悪食餓鬼の親玉やら疫病神の集合体とも呼称される。特徴的なのは一頭身の巨体は勿論…。全体像の皮膚の表面には数十体から数百体もの悪食餓鬼の頭部やら顔面が全身の彼方此方に確認出来る。
「征伐された彼等の…無数の悪食餓鬼の怨恨が具現化した悪霊の親玉でしょうね…」
「無数の悪食餓鬼の怨恨が具現化ですって…」
図体は等身大の人間と同程度であり一体のみの悪食餓鬼の霊気は非常に微弱であるものの…。百鬼悪食餓鬼は悪食餓鬼の集合体であり霊気のみなら非常に強力である。
「傍迷惑なのが出現したわね…こんな場所で親玉の百鬼悪食餓鬼と遭遇するなんて私達は不運だわ…」
悪食餓鬼の大群が無数に融合化した影響によって最上級妖女である桜花姫も百鬼悪食餓鬼から恐る恐る後退りする。
『畜生…私が万全の状態であれば…悪食餓鬼の集合体なんて片手間の妖術で仕留められちゃうのに…』
桜花姫は妖力の消耗戦により百鬼悪食餓鬼との徹底抗戦は非常に難局である。
『迂闊にも小面袋蜘蛛から大量の妖力を消耗させられちゃったからね…』
すると百鬼悪食餓鬼の全体像から確認出来る表面の悪食餓鬼の口辺より超高温の熱風を放射する。桜花姫は咄嗟に霊気の防壁を発動…。同行者である八正道にも妖力の防壁を発動したのである。
「八正道様…命拾い出来たわね!」
危機一髪百鬼悪食餓鬼の熱風から八正道を守護する。
「感謝しますよ!桜花姫様!ですが…」
八正道は桜花姫に感謝するのだが…。
『桜花姫様は先程の妖術で妖力を消耗された様子ですね…』
桜花姫は妖力の消耗により息苦しくなる。
「はぁ…はぁ…」
八正道は不安そうな様子で恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「桜花姫様…先程の妖術で妖力を消耗されたのでは?」
すると桜花姫は苦し紛れに…。
「大丈夫よ…八正道様!即刻百鬼悪食餓鬼を撃退して…」
「桜花姫様…無理は禁物ですよ!限界なのでは?」
桜花姫の空元気は一目瞭然である。
「はぁ…八正道様は一目瞭然みたいね…」
『先程の妖力の防壁で私の妖力が空っぽの状態なのよね…』
桜花姫は妖力が空っぽの状態であり親玉の百鬼悪食餓鬼と応戦としたとしても敗戦は確実である。
『正直こんな状態では百鬼悪食餓鬼に反撃なんて出来ないわね…』
桜花姫は度重なる妖力の消耗戦により満身創痍の状態であり一休みしたくなる。
『一休みしないと親玉の百鬼悪食餓鬼を仕留められないわ…』
妖力を消耗した状態では圧倒的に不利であり悪食餓鬼の集合体である百鬼悪食餓鬼は勿論…。相手が格下とされる悪食餓鬼の大群だったとしても絶体絶命である。桜花姫は敗北が濃厚だと判断したのか苦し紛れに…。
「八正道様!即刻だけど…一か八か駐屯地から脱出しましょう!」
不本意であるものの桜花姫は八正道に逃走を合図したのである。
「承知しました!桜花姫様…一時的に退却しましょう!」
桜花姫と八正道は全力疾走により駐屯地から無事脱出出来たのである。桜花姫は恐る恐る背後を警戒…。
「はぁ…はぁ…」
『脱出には成功出来たけれど…』
桜花姫は悪霊の襲撃に注意深く用心したのである。
「八正道様…危機一髪だったわね!」
すると八正道は恐る恐る…。
「御免なさいね…桜花姫様…」
八正道は桜花姫に謝罪したのである。
「えっ…八正道様?一体如何したのよ?」
桜花姫は突然の謝罪に動揺し始める。
「こんな私を守護したばかりに…桜花姫様には無理させちゃいましたね…」
八正道は内心足手纏いなのではと思考したのである。
「八正道様!気にしないで!」
桜花姫は満面の笑顔で返答する。
「桜花姫様…」
八正道は桜花姫の様子に安堵するものの…。桜花姫は限界であり恐る恐る本音を告白したのである。
「大半の妖力を消耗した状態では悪食餓鬼の大群を相手するだけでも正直悲痛なのよね…西国の〔精霊故山〕の露天風呂にでも入浴出来れば妖力の問題は解決出来るのだけれどね…」
「精霊故山の露天風呂ですか?」
精霊故山とは西国に聳え立つ丘陵地であり俗界の温泉郷と命名される。人外の妖女にとって精霊故山の露天風呂は消耗した妖力を回復させられる正真正銘の妖力補給所であり俗界の極楽浄土である。
「西国の露天風呂なら思う存分に妖力を回復させられるのよね…」
「西国は俗界の温泉郷との異名ですからね…常日頃の疲労を回復させるのに温泉は最適ですね!」
西国は桃源郷神国唯一の温泉郷とも呼称されるものの…。不運にも東国から片田舎の西国は遠距離である。
「距離的にも西国の村里からは遠距離なのよね…」
困惑し続ける桜花姫と八正道であるが…。
「桜花姫様!?百鬼悪食餓鬼ですよ!私達に接近中です!」
二人の背後より先程遭遇した百鬼悪食餓鬼が二人に接近する。
「彼奴…私達を追尾したみたいね!」
『如何やら私達に選択肢は皆無みたいだわ…西国の村里に戻りましょう…』
桜花姫と八正道は止むを得ず一目散に逃走したのである。
「八正道様…超特急で西国の村里に戻りましょう!」
桜花姫は不本意であるが…。一時的に西国への撤収を決意する。
「承知しました!桜花姫様!」
桜花姫と八正道は恐る恐る悪霊の襲撃を警戒…。山中の獣道にて西国へと全力疾走したのである。親玉の百鬼悪食餓鬼は勿論…。百鬼悪食餓鬼の格下とされる悪食餓鬼の身動きは非常に鈍足であり彼等から追尾されなかったのである。
第十九話
妖獣
桜花姫と協力者の八正道が百鬼悪食餓鬼から逃走し始めた同時刻…。北国のとある山奥の山道での出来事である。蛇神の蛇体如夜叉と山猫妖女の小猫姫は旅先にて悪食餓鬼の大群に追撃され…。彼等から必死に逃亡したのである。
「ぐっ!」
獣道の道中にて蛇体如夜叉は地面に横たわる。
「蛇体如夜叉婆ちゃん!大丈夫!?」
蛇体如夜叉は北国の山奥にて悪食餓鬼の大群から必死に逃走中…。蛇体如夜叉は極度の腰痛により身動き出来なくなる。
「御免よ…小猫姫…」
蛇体如夜叉は小猫姫に謝罪する。
「畜生が…」
『こんな状況下で腰痛なんて…不運だね…私は…』
蛇体如夜叉は自分自身の脆弱さに呆れ果てる。
「蛇体如夜叉婆ちゃん!悪食餓鬼の大群が!奴等に食い殺されちゃうよ!」
すると彼女達の背後より無数の悪食餓鬼が急接近する。
「はぁ…」
背後の光景に蛇体如夜叉は絶望したのである。
『如何やら今日が…私の命日かね?』
蛇体如夜叉は恐る恐る背後の悪食餓鬼の大群を直視する。
『今回の大騒ぎは五百年前の悪霊大事件を想起するね…当時の再現だろうかね?今回は何者の…仕業だろうかね?』
太古の五百年前にも全国規模で同様の大規模悪霊事件が発生したのである。
「小猫姫…残念だけれど…本日で神族も絶滅するかも知れないね…」
蛇体如夜叉は小声で発言する。
「蛇体如夜叉婆ちゃん…」
「小猫姫…」
蛇体如夜叉は自身の死期を覚悟したのである。
「小猫姫…あんただけでも此処から逃げな…」
すると小猫姫は無表情で…。
「蛇体如夜叉婆ちゃん…私は…」
「如何したのかい?小猫姫?」
小猫姫の体内より強大化した妖力を感じる。
「えっ!?小猫姫!?」
『小猫姫の肉体から強大化した妖力を感じられるね…一体彼女の体内で何が発生したのか?』
小猫姫の全身の皮膚から秘められた妖力が表面化したかと思いきや…。表面化した妖力が蛍光色に発光し始める。
『肉眼でも小猫姫の妖力が直視出来るなんて…』
小猫姫の妖力は非常に絶大であり肉眼でも小猫姫の体内に秘められた潜在的妖力が直視出来る。
「小柄の小猫姫に…こんなにも潜在的妖力が…」
『ひょっとすると小猫姫は妖力だけなら幼少期の桜花姫ちゃんに匹敵するかも知れないね…』
蛇体如夜叉は小猫姫の潜在的妖力に驚愕したのである。
「小猫姫…」
すると小柄だった小猫姫の肉体に変化が発生し始め…。小猫姫は神話の神獣を連想させる伝説の妖獣へと変化したのである。
「ひょっとして伝説の…妖獣!?」
『子供の小猫姫が…伝説の妖獣に変化出来るなんて…』
小猫姫の潜在的能力に蛇体如夜叉は勿論…。悪霊の悪食餓鬼でさえも伝説の妖獣へと変化した小猫姫に愕然とする。
『悪霊でも恐怖するとは…』
彼等は妖獣形態の小猫姫に畏怖した様子であり一瞬後退りし始め…。蛇体如夜叉は悪食餓鬼の反応に意外であると感じる。
『小猫姫…迫力だけなら桜花姫ちゃん以上だね…』
一方の小猫姫は背後の蛇体如夜叉を凝視する。
「私はこんな場所で蛇体如夜叉婆ちゃんを絶対に死なせないからね!神族は絶滅させないから安心してね…蛇体如夜叉婆ちゃん!」
小猫姫は神族の絶滅を否定したのである。
「小猫姫…あんたは…」
小猫姫は再度前方の悪食餓鬼を凝視…。睥睨したのである。
「亡者達!私の蛇体如夜叉婆ちゃんには…誰一人として手出しさせないからね!覚悟しなよ!」
伝説の妖獣に変化した小猫姫は悪食餓鬼の大群へと力一杯突進…。真正面に位置する数体の悪食餓鬼を力任せに撃退する。極度に腐敗した悪食餓鬼の肉体は非常に脆弱であり伝説の妖獣に変化した小猫姫が力一杯突進するだけで容易に粉砕されたのである。悪食餓鬼の大群が再度妖獣の小猫姫に殺到するものの…。小猫姫は口先を開口すると体内の妖力を凝縮させる。すると直後…。小猫姫は口先から高熱の雷球を射出したのである。高熱の雷球により獣道は焦土化…。悪食餓鬼の大群を一瞬で消滅させ獣道の推定二町規模の界隈が焦土化したのである。
『小猫姫…一撃で悪食餓鬼の大群を一掃するなんてね…』
蛇体如夜叉は小猫姫の絶大なる破壊力に驚愕する。圧倒的妖力により悪食餓鬼の大群を消滅させた小猫姫であるが…。小猫姫は莫大なる妖力の消耗によって元通りの少女の姿形へと戻ったのである。
「はぁ…はぁ…」
小猫姫は精神的にも肉体的にも疲弊したのか地面に横たわる。
「小猫姫!?大丈夫かい!?」
蛇体如夜叉は地面に横たわった状態の小猫姫を心配したのである。すると小猫姫は疲れ果てた表情で返答する。
「蛇体如夜叉婆ちゃん…私なら大丈夫だよ…疲れ果てただけだから…妖力を消耗しちゃったな…」
「小猫姫…」
『あんたは未熟なのに無茶しちゃって…』
小猫姫の様子に蛇体如夜叉は一安心したのである。
「蛇体如夜叉婆ちゃん?桜花姫姉ちゃんは…大丈夫かな?」
小猫姫は桜花姫が大丈夫なのか非常に気になる。
「桜花姫ちゃんなら恐らく…小猫姫が心配しなくても大丈夫だよ♪桜花姫ちゃんの場合妖女は妖女でも最上級の妖女だからね♪彼女の妖力は其処等の妖女とは別格だよ…」
蛇体如夜叉は満面の笑顔で断言する。
「桜花姫姉ちゃんなら…私が心配しなくても大丈夫だよね♪」
「桜花姫ちゃん…彼女なら今頃は…」
蛇体如夜叉は桜花姫の行動を想像したのである。
第二十話
精霊故山
小猫姫が悪食餓鬼の大群を一掃してより同時刻…。桜花姫と八正道は無事に西国の村里へと到達する。
「如何やら西国に到達したみたいですね♪西国は桜花姫様の祖国ですか?」
「勿論よ♪無事に西国の村里に戻れたから一安心だわ…」
時間帯は真夜中であり物静かな暗闇の夜空を眺望し続けると桜花姫と八正道は一安心したのである。
「夜空だわ…」
「星空が非常に神秘的ですね…」
桜花姫と八正道は物静かな夜空を眺望し続ける。すると八正道は笑顔で…。
「西国は悪食餓鬼の大群による襲撃は皆無だったみたいですね♪桜花姫様の祖国が無事なので一安心ですよ♪」
西国の村里は片田舎であり過疎地である。総人口も比較的少数であり神出鬼没の悪食餓鬼も片田舎の西国へは襲撃せず…。桜花姫と八正道は西国の村里が武陵桃源であると実感する。
「油断大敵だけれどね…西国は正真正銘武陵桃源だったみたいだわ…」
桜花姫と八正道は月影家の桜花姫の自宅近辺に隣接する近山…。目的地の精霊故山へと直行したのである。
「此処が目的地の精霊故山よ…」
「精霊故山とは…こんなにも低山だったのですね…」
八正道は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「ですが精霊故山の露天風呂なんかで…先程の戦闘により消耗された妖力を回復させられるのでしょうか?」
「精霊故山の露天風呂は私達妖女にとって極楽浄土だからね♪精霊故山の露天風呂なら消耗しちゃった妖力だって思う存分に回復させられるわ♪」
精霊故山は全体的に物静かな雰囲気であるが桜花姫は極度に周囲を警戒…。恐る恐る精霊故山の天辺へと到達したのである。
「桜花姫様…此処が精霊故山の露天風呂なのですね…」
精霊故山の天辺中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「精霊故山は本物の幻想郷みたいですね♪邪心が浄化されますね♪」
八正道は精霊故山の雰囲気に感動する。
「精霊故山は神秘の場所なのよ♪私にとって精霊故山の露天風呂で入浴するのが毎晩の醍醐味だからね♪」
桜花姫は毎晩精霊故山の露天風呂で入浴するのが一日の日課である。
「自然界での入浴とは非常に健康的ですからね♪」
すると桜花姫は人前であるものの…。
「兎にも角にも♪」
特段気にならなかった様子であり着物を脱衣し始めたのである。
「なっ!?桜花姫様!?突然何を…」
八正道は突如として公明正大に着物を脱衣し始める桜花姫に驚愕…。
「桜花姫様…」
八正道は桜花姫の突発的行動に動揺し始める。
「えっ?何かしら?八正道様…」
桜花姫は無表情で返答したのである。
「桜花姫様は…人前で何を!?」
一方の桜花姫は平気そうな表情で…。
「何って…私は入浴するから着物を脱衣しただけよ…えっ?八正道様にとって不都合かしら?」
「えっ…別に不都合では…」
桜花姫は全裸の状態であり八正道の表情が赤面し始める。すると桜花姫は満面の笑顔で赤面し始めた八正道の苦し紛れの反応に…。
「八正道様は大袈裟ね!」
桜花姫は赤面し続ける八正道の様子に微笑ましくなる。
『生真面目の八正道様も悩殺しちゃったわね…私は脱衣しただけなのに♪』
八正道は人前で脱衣しても平常心である桜花姫に愕然とする。
「私にとって八正道様は特別だから大丈夫なのよ!別に全裸だからって私は気にしないからね!」
「気にしないって…人外の妖女であっても桜花姫様は正真正銘女性なのですよ!」
桜花姫は全裸の状態であろうとも平常心の様子だったのである。
「私自身全裸でも特段気にならないのよね!人前で全裸だからって何よ?八正道様は大袈裟ね!」
「妖女とは…」
『妖女は超自然的存在ですが…私達人間とは感覚が別次元なのでしょうね…やっぱり妖女って人間の私が想像する以上に摩訶不思議ですね…』
八正道は摩訶不思議の妖女が人間とは異質的であると再認識する。
「折角だからね!早速変化の儀式を発動するわよ…」
「変化の儀式ですと?桜花姫様は一体何を開始されるのでしょうか?」
すると桜花姫の全身の皮膚が虹色に変化したかと思いきや…。
「なっ!?桜花姫様!?」
八正道は強烈なる無数の発光体によって両目を瞑目させる。すると桜花姫の血紅色であった両目が瑠璃色へと変化したのである。直後…。桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化し始める。桜花姫は人間の女性から美貌を感じさせる人魚の肉体へと変化したのである。黒毛だった頭髪が銀髪へと変色する。
「えっ…下半身が魚体に?」
『桜花姫様の肉体が…本物の人魚に!?』
変化の妖術は変幻自在の妖術であり万物の物体を別物に変化させられるが…。自分自身の肉体さえもあらゆる動植物やら器物に変化させられる。八正道は雰囲気の一変した桜花姫に驚愕の様子であるものの…。
『非常に魅力的ですな!桜花姫様!』
内心では人魚に変化した桜花姫に見惚れる。
「八正道様…如何かしら?」
人外の人魚に変化した桜花姫は普段の体格を一回り上回る程度の巨体である。桜花姫は満面の笑顔では人魚の状態で露天風呂に入浴したのである。
『桜花姫様が人外の人魚に変化出来る理由とは天道天眼の効力なのでしょうか?』
「桜花姫様は妖術で人魚にも変化出来るのですね…」
「私の母様が人魚の血筋だからね!」
桜花姫の母親である月影春海姫は純血の人魚の血筋であり桜花姫自身も春海姫の血筋に影響されたのか人魚に変化出来る。
「折角だからね!八正道様も私と一緒に混浴しないかしら?適度の湯加減よ!」
「えっ!?」
八正道は混浴の一言に反応…。驚愕したのである。
「私が桜花姫様と混浴ですと!?」
八正道は桜花姫に満面の笑顔で混浴を歓迎されたものの…。
「桜花姫様…生憎なのですが今回ばかりは桜花姫様との混浴は遠慮しますよ…」
八正道は緊張したのか今回ばかりは桜花姫との混浴を拒否したのである。
「私は無事超常現象が解決してから桜花姫様と一緒に混浴でも…」
八正道は赤面した様子で返答する。
「八正道様は遠慮深いのね!」
桜花姫は満足気の様子である。度重なる悪戦苦闘により消耗した妖力が桜花姫の体内に蓄積され…。万全の状態へと戻り始めたのである。
『如何やら温泉の効力で桜花姫様の妖力が回復したみたいですね…』
八正道は露天風呂の水面下で水遊び中の桜花姫を見守り続けるものの…。
『今更なのですが…』
八正道は後悔したのである。
『私も桜花姫様と一緒に混浴したかったな…如何して私は折角の機会なのに遠慮しちゃったのか?』
無我夢中に水遊び中の桜花姫の様子を注視し続けると内心彼女と混浴したくなる。
「やっぱり精霊故山の露天風呂は極楽浄土だわ…先程の悪戦苦闘が単なる悪夢だったって感じられるのよね…」
桜花姫は先程の戦闘が悪夢だったと感じる。
「ですが桜花姫様は今後如何されるのですか?悪食餓鬼の大群は勿論ですが…百鬼悪食餓鬼の暴走を黙殺し続ければ国全体が彼等に占拠されましょう…」
八正道は東国の城下町の状況が気になり騒然とし始める。
「体力と妖力を回復させたら即刻猛反撃するからね♪私が全身全霊で悪食餓鬼の大群と親玉の百鬼悪食餓鬼を蹴散らしちゃうわよ!」
「であれば桜花姫様の反撃を期待しますよ…」
八正道は桜花姫の反撃を期待したのである。
「もう少しだけ入浴させてね…八正道様…」
「承知しました…桜花姫様…」
桜花姫は真夜中の夜空を眺望し続ける。
第二十一話
別行動
桜花姫が入浴し始めてより数分後…。
「温泉の効果で妖力と体力が戻ったわ!」
温泉の効力によって桜花姫は消耗した妖力と体力が完全に回復したのである。
「変化の妖術を解除するわね!」
桜花姫は変化の妖術を解除…。桜花姫は一瞬で人魚の状態から人間の姿形へと戻ったのである。
「桜花姫様!元通りに戻りましたね!」
入浴終了後…。桜花姫は即座に脱衣した着物を着衣する。
「八正道様…妖力は万全よ!万全の状態なら悪食餓鬼の大群は勿論…親玉の百鬼悪食餓鬼が襲撃したとしても容易に撃退出来るわ!」
「桜花姫様…如何やら本調子が戻ったみたいですね!」
「八正道様!東国に移動しましょう!」
桜花姫は満面の笑顔で八正道に接触したのである。
「えっ?桜花姫様?」
直後…。桜花姫と八正道は一瞬で東国の国境へと到達したのである。
「えっ!?此処は東国の国境!?」
八正道は驚愕し始める。
「こんなにも一瞬で移動出来るなんて…」
「瞬間移動の妖術…成功ね!」
「瞬間移動の妖術ですと?」
桜花姫は小面袋蜘蛛との戦闘で使用した瞬間移動の妖術を駆使…。二人は一瞬で西国の村里から東国郊外へと移動したのである。
「やっぱり桜花姫様の妖術は摩訶不思議ですね…」
「私は万全の状態だからね!」
すると八正道は突発的に桜花姫に提案したのである。
「桜花姫様?突発的なのですが…此処から別行動は如何でしょうか?」
「別行動ですって?」
「桜花姫様は東国の城下町に出現した悪食餓鬼の大群と彼等の親玉である百鬼悪食餓鬼の征伐に全身全霊を…私は彼等の大群が出現した主要因を徹底的に探索します!」
「百鬼悪食餓鬼は勿論…東国の城下町には神出鬼没の悪食餓鬼の大群が徘徊中なのよ!人間の八正道様が単独で出歩くのは自害するのと一緒だわ…八正道様は私と一緒に行動しましょうよ!一人で行動するのは危険過ぎるわ!」
桜花姫は非常に危惧するものの…。
「桜花姫様!私は先程武器庫で無尽蔵の弾薬と護身用の連発銃を確保出来ましたからね!心配せずとも私なら大丈夫ですよ!」
八正道は大丈夫であると断言する。八正道は完全武装の状態であり悪食餓鬼程度の悪霊なら容易に撃退出来る。
「悪霊が大群であれば即座に避難するのよ…八正道様…」
「承知しました!桜花姫様!」
八正道は桜花姫の心配事を把握…。恐る恐る東国の城下町へと戻ったのである。此処から桜花姫と八正道は本格的に別行動を開始する。
「八正道様は単独で大丈夫かしら?」
『八正道様が心配だわ…』
桜花姫は八正道が単独で大丈夫なのか非常に不安視したのである。
『私に妖力が戻ったし…行動を再開しましょう!』
桜花姫は十八番の天道天眼を再発動…。東国の中心街を徘徊する悪食餓鬼の大群と百鬼悪食餓鬼の居場所を察知する。
『百鬼悪食餓鬼の気配を感じるわ…』
通常の悪食餓鬼と比較して百鬼悪食餓鬼の霊気は規格外であり周辺には無数の悪食餓鬼が徘徊中であるものの…。容易に百鬼悪食餓鬼の居場所を特定出来る。
「百鬼悪食餓鬼だけは規格外だからね…霊気が目立ち過ぎだわ!」
『百鬼悪食餓鬼は霊気が強力過ぎるから容易に居場所を特定化出来るのよね♪』
桜花姫は即座に東国の城下町へと直行する。獣道にて徘徊中の無数の悪食餓鬼に遭遇するものの…。
「あんた達は邪魔よ!」
即座に念力の妖術を発動したのである。容易に徘徊中の彼等を蹴散らせる。
『周辺の妨害者達が鬱陶しいわね!』
無数の悪食餓鬼が大勢で殺到するものの…。桜花姫の本体に接触する直前に彼等の肉体が念力の妖術によって粉砕されたのである。温泉の効力からか先程よりも桜花姫の妖力が増強化する。移動してから数分後…。
『百鬼悪食餓鬼は中心街で徘徊中みたいね…』
桜花姫は東国の中心街へと到達する。
『百鬼悪食餓鬼は私が仕留めるからね♪』
「覚悟しなさいよ!」
桜花姫は恐る恐る東国の中心街へと潜入したのである。
「えっ…」
『町民達だわ…』
中心街は悪食餓鬼の大群に襲撃され…。
『非常に心苦しい光景ね…』
惨殺された町民達の血肉やら無数の肉片が彼方此方に散乱する。
「気の毒に…」
『彼等は悪食餓鬼の襲撃によって惨殺されたのね…』
すると地面に横たわった状態の町民達が突発的に身動きし始めたのである。彼等は通行中の桜花姫に殺到する。
「きゃっ!」
桜花姫は咄嗟に念力の妖術を発動…。
『生身の人間が相手なのは不本意だけどね…』
「あんた達…死滅しなさい!」
不本意であるが桜花姫は殺到する町民達の腹部を念力の妖術で破裂させたのである。町民達を仕留めたかと思いきや…。
「えっ!?」
念力の妖術で仕留められた町民達は上半身のみの状態で身動きしたのである。
『彼等は上半身だけで身動き出来るなんて…』
彼等は上半身のみの状態で桜花姫に急接近する。桜花姫は即座に念力の妖術を再活用…。悪食餓鬼へと変化した村人達の頭部を粉砕したのである。
『やっぱり彼等も脳味噌を粉砕しちゃえば身動き出来なくなるみたいね…』
町民達は頭部を粉砕された影響からか身動きしなくなる。
『如何して悪食餓鬼に食い殺された町民達が身動きしたのかしら?』
桜花姫は悪食餓鬼によって殺害された町民達が何故…。突発的に身動き出来たのかを思考したのである。
『ひょっとすると悪食餓鬼に食い殺された人間も…悪食餓鬼の仲間として復活しちゃうのかしら?』
「悪食餓鬼の毒素は想像以上に厄介そうね…再起不能の疫病みたいだわ…」
通常の悪食餓鬼であれば捕食されても悪食餓鬼には変化しなかったが…。今回の天災地変で出現した悪食餓鬼は強毒性なのか今迄に出現した悪食餓鬼とは完全に別物だったのである。彼等に捕食…。殺害された人間は悪霊の悪食餓鬼として復活するのである。
『悪食餓鬼に襲撃された人間達が悪霊の悪食餓鬼として復活するのであれば相当厄介だわ…』
今回の悪霊大事件は今迄とは桁外れの被害が予想される。
『東国は勿論…最悪桃源郷神国が滅亡するかも知れないわね…』
最早祖国存亡の瀬戸際であり最悪の場合…。悪食餓鬼の増大化による桃源郷神国の滅亡が危惧される。
「えっ…」
すると突発的に胸騒ぎを感じる。
『霊気かしら!?』
彼女の背後には無数の人面が融合化した百鬼悪食餓鬼が佇立する。
『百鬼悪食餓鬼だわ…こんな場所で再会するなんてね…』
百鬼悪食餓鬼の無数の人面が桜花姫を睥睨の眼力で凝視し始め…。全身の体表から超高温の熱風を放射したのである。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。放射された超高温の熱風から本体を防備したのである。
『危機一髪だったわね♪』
天道天眼の効力により百鬼悪食餓鬼の頭頂部から雷撃の妖術を発動する。
「百鬼悪食餓鬼…死滅しなさい!」
すると高熱の落雷によって地面は陥没…。百鬼悪食餓鬼の肉体が粉砕される。
『百鬼悪食餓鬼を仕留めたかしら?』
落雷で粉砕された無数の肉片が小柄の人型を形成し始めたかと思いきや…。無数の悪食餓鬼へと分裂したのである。
『粉砕された肉片が無数の悪食餓鬼に分裂したのね…』
桜花姫は超高温の火炎の妖術を発動…。
「亡者達…あんた達も成仏しなさい!」
分裂した悪食餓鬼の大群を火炎の妖術で焼殺する。火炎の妖術により悪食餓鬼の大群は数秒間で完全焼失したのである。
『悪食餓鬼は焼失したわね…楽勝だったわ♪』
桜花姫は手応えを感じる。
『八正道様は大丈夫かしら?』
桜花姫は八正道が無事なのか如何なのか非常に気になる。
第二十二話
元凶
桜花姫が百鬼悪食餓鬼を仕留めた同時刻…。八正道は無事に東国の住宅街へと到達したのである。各家屋敷の路地裏を移動中…。
「ん?彼女は…」
『町内の女性みたいですが…』
八正道はとある血塗れの女性と遭遇したのである。
『彼女は悪霊の襲撃で大怪我されたのでしょうか?』
八正道は恐る恐る血塗れの女性に近寄る。
「大丈夫ですか?」
女性は無表情であり目前の八正道を凝視し続けるだけである。
「如何されましたか?」
『失礼かも知れませんが…彼女は非常に不吉ですね…』
女性の様子は不自然であり八正道は非常に気味悪くなる。すると数秒後…。無表情の女性は突発的に卒倒したのである。
「うわっ!」
女性の突然の卒倒に八正道は驚愕する。
『一体…何が?』
恐る恐る地面に横たわった状態の女性の皮膚に接触したのである。
「如何やら彼女は失血死したみたいですね…」
『女性は悪霊の猛毒によって死亡されたのでしょうか?非常に無念です…』
すると数秒後…。
「えっ…」
失血死した女性の身体髪膚が一瞬で腐敗したのである。
『肉体が一瞬で腐敗するなんて…不吉ですね…』
八正道は気味悪がる。
「ん?」
地面に横たわった状態の女性が腐敗したかと思いきや…。
「なっ!?」
『此奴は悪食餓鬼か!?』
腐敗した女性の体内から小柄の悪食餓鬼が出現したのである。
『ひょっとして悪食餓鬼によって殺害された人間は彼等と同様に悪食餓鬼として復活するのでしょうか?』
突如として女性の体内から出現した悪食餓鬼が生者の八正道を凝視…。八正道に接近し始める。
『止むを得ないですね!』
一方の八正道は即座に護身用の連発銃で悪食餓鬼の頭部を狙撃したのである。
「霊界の亡者よ…御免!」
悪食餓鬼は頭部を狙撃された直後に即死…。完全に身動きしなくなる。
『如何やら悪食餓鬼は即死したみたいですね…』
八正道は恐る恐る即死した悪食餓鬼の肉体に接触する。
『今回の厄災は…疫病みたいですね…』
「ん?」
すると背後より無数の殺気を感じる。
『殺気か!?』
八正道は恐る恐る背後を警戒…。背後の様子を観察したのである。
『彼等は悪食餓鬼の大群と…町民達でしょうか?』
無数の悪食餓鬼と血塗れの町民達が大勢で山奥へと移動する。
『彼等は大名行列みたいですね…』
「彼等の目的地は一体?」
彼等の行動が気になった八正道は彼等の背後から恐る恐る追尾したのである。彼等の同行を追尾してより数分後…。八正道は日和山と命名される低山へと到達したのである。日和山の天辺には虹色に光り輝く摩訶不思議の広葉樹が確認出来る。
『虹色の広葉樹とは…摩訶不思議ですな…』
広葉樹は非常に神秘的であったが…。殺伐した雰囲気も感じられる。
『無数の殺気でしょうか?人間の私でも感じられるとは…広葉樹の正体は一体?』
すると無数の悪食餓鬼と血塗れの町民達が虹色に発光する広葉樹の表面へと殺到したのである。直後…。
「なっ!?」
広葉樹の表面から無数の触手が出現したのである。
『樹木から…無数の触手?』
樹木の表面に密着する悪食餓鬼と血塗れの町民達は広葉樹の表面より出現した触手によって肉体諸共捕食…。血肉は樹体へと吸収されたのである。
『広葉樹が悪食餓鬼の大群と大勢の町民達を捕食するなんて…此奴は樹木の悪霊なのでしょうか?』
数秒後…。
「えっ!?」
広葉樹の表面より無数の悪食餓鬼の集合体とされる百鬼悪食餓鬼が二体も出現したのである。
「百鬼悪食餓鬼が二体も!?」
『悪霊の親玉が二体も出現するなんて…』
八正道は目前の光景が気味悪くなり恐る恐る後退りしたのである。
『摩訶不思議の広葉樹…此奴が黄泉の亡者達を出現させた悪霊事件の元凶だったのでしょうか?』
「広葉樹が悪霊事件の元凶であれば早速…桜花姫様に報告しなくては!」
元凶の正体を明確化した八正道であるが…。突然である。
「ぐっ!」
八正道は金縛りによって全身が身動き出来なくなる。
『一体何が!?突然身動き出来なくなるなんて…金縛りでしょうか!?』
八正道は身動き出来なくなった状態から突発的に衰弱化したのである。
「ん?」
『突然眠気が…』
八正道は疲れ果てた様子で地面に横たわる。
『桜花姫様…私は…』
八正道の視界は暗闇に覆い包まれたのである。
第二十三話
神通力
八正道が衰弱化した同時刻…。
『突然八正道様の気配が感じられなくなったわ…』
八正道の気配を感じられなくなった桜花姫は即座に東国近辺に位置する日和山へと急行したのである。
『八正道様は一体何に遭遇しちゃったのかしら?』
低山の日和山から悪食餓鬼の無数の霊気とは別物の神通力を感じる。
「悪食餓鬼の霊気なら感じるけれども…」
『中心部から百鬼悪食餓鬼を上回る霊気?摩訶不思議の神通力を感じるわ…』
未知なる神通力に畏怖…。全身が身震いし始める。
『神通力の正体は一体何かしら?』
すると道中である。
「えっ…悪霊の大群かしら?」
桜花姫の背後より無数の悪食餓鬼は勿論…。二体の百鬼悪食餓鬼が出現したのである。彼等はふら付いた身動きで桜花姫に接近する。
『こんな場所に大物の百鬼悪食餓鬼が二体も出現するなんて…』
一方の桜花姫は大物の出現に大喜びしたのである。
『今日は贅沢三昧の一日だわ!』
悪食餓鬼の大群と二体の百鬼悪食餓鬼が桜花姫に殺到し始める。
『鬱陶しい奴等だわ…多勢に無勢なら♪』
こんなにも絶体絶命の状況下であるものの…。桜花姫は余裕なのか平常心の様子だったのである。
「亡者達…あんた達は桜餅に変化しなさい♪」
桜花姫は変化の妖術を発動すると無数の悪食餓鬼は勿論…。二体の百鬼悪食餓鬼を自身の大好物である高級そうな桜餅に変化させたのである。
「美味しそうな桜餅だわ♪」
『桜餅で消耗しちゃった妖力を回復させられるわね♪』
桜花姫は無尽蔵の桜餅を鱈腹頬張り始める。
『桜餅♪やっぱり美味しいわね♪』
桜花姫は無我夢中に無尽蔵の桜餅を鱈腹頬張り続けるものの…。
『私はこんな場所で桜餅を味見して如何するのよ!?八正道様の安否を確認しないと!私は馬鹿者だわ…』
すると桜花姫の背後より四人の匪賊達が近寄る。
「よっ♪花魁の姉ちゃんよ♪」
桜花姫は警戒した様子で背後を確認したのである。
「えっ?あんた達は何者よ?」
四人の匪賊達は桜花姫を包囲し始める。
「花魁の姉ちゃん♪あんたは俺達に畏怖したか?」
「俺達は手出ししないから安心しろよ♪花魁の姉ちゃん♪」
「私が花魁ですって?」
彼等の花魁の一言に腹立たしくなる。
「私は十中八九普通の小町娘だからね…花魁なんかと勘違いしないでよね…」
桜花姫は接触中の匪賊達に苛立ったのである。
『面倒臭いわね…ひょっとして彼等は命知らずの匪賊達かしら?こんな場所で匪賊と遭遇するなんて私も不運だわ…』
正直面倒だと感じるものの…。彼等の装備品は刀剣やら携帯式の連発銃である。
『武器だわ…』
桜花姫は彼等の装備品に警戒し始め…。
『非常に厄介ね…』
恐る恐る後退りしたのである。
「小町娘の姉ちゃんよ♪不用意に警戒しなくても大丈夫だからな♪俺達に大人しく金品を手渡しちまえば小町娘の姉ちゃんには手出ししないからよ♪」
「俺達は誰よりも温厚篤実の若武者だからな♪大人しく俺達に服従しろよ♪」
「小町娘の姉ちゃんだってこんな場所では手出しされたくないだろう?手出しされたくなかったら所持品の金品を手渡しちまいな♪」
「大人しく俺達に服従するのが無難だぜ♪如何するよ?小町娘の姉ちゃん♪」
桜花姫は彼等の発言に呆れ果てる。
「はぁ…あんた達が温厚篤実の若武者なんて末期的ね…」
『滑稽だわ…匪賊の分際で何が温厚篤実の若武者よ…』
桜花姫は温厚篤実の若武者を自称した彼等を軽蔑する。
「私はあんた達みたいな田舎町の荒武者とは大違いで常日頃から大忙しなのよ…死にたくなければあんた達こそ逃走するのね…」
桜花姫は無表情で反論したのである。
「はっ?死にたくなかったらって姉ちゃんは非力そうだが…随分と強気だな…」
「こんな状況下で姉ちゃんは随分と余裕だな…あんたは大怪我したいのか?」
「姉ちゃんよ…あんたは俺達を相手に本気かよ?」
彼等は桜花姫の無関心そうな態度に腹立たしくなる。腹立たしくなると同時に四人の大男達に包囲されても動揺しない桜花姫の態度に驚愕する。
「俺達を田舎町の荒武者って軽蔑するなんて片腹痛いぜ♪小町娘の姉ちゃんよ♪」
「小町娘の姉ちゃんは余程の命知らずみたいだな♪」
「如何やら此奴には折檻が必要かな?小娘は如何するべきか?」
彼等は桜花姫の発言に苛立ち始めたのである。
「命知らずなのはあんた達でしょう?こんなにも前代未聞の天災地変なのよ…あんた達だって其処等の悪霊に食い殺されるかも知れないのに死にたいのかしら?」
桜花姫は只管に無表情で反論する。対する彼等は極度の怒気からか身震いし始める。
「如何やら此奴は本当に打っ殺されたいらしいな!非力の小娘風情が!」
「此奴は止むを得ないな…相手は所詮非力の小娘一人だ!力尽くでも小娘から金品を強奪しちまえ!」
抜刀した匪賊達は桜花姫に殺到したのである。
「あんた達に会話は通用しないわね…鬱陶しい奴等だわ…」
桜花姫は彼等に非常に呆れ果てる。
『所詮相手は匪賊だし…止むを得ないわね…』
即座に天道天眼を発動…。桜花姫の妖力が数百倍にも増幅されたのである。
『非力の雨蛙に変身しちゃえ♪』
巨漢の匪賊を標的に変化の妖術を発動…。
「えっ?」
変化の妖術によって巨漢の匪賊を微弱の雨蛙に変化させたのである。すると三人の匪賊達は桜花姫の変化の妖術で雨蛙に変化させられた匪賊を恐る恐る凝視し始め…。
「なっ!?此奴は現実なのか!?」
彼等は突然の超常現象に驚愕したのである。
「ひっ!如何して人間が雨蛙に!?妖術なのか!?」
「此奴は…小娘は荒唐無稽の妖術を駆使しやがったのか!?」
すると小柄の匪賊が恐る恐る…。
「ひょっとして貴様は…」
「私が誰かって?」
桜花姫は笑顔の表情で名前を名乗る。
「私は悪霊捕食者の桜花姫…不寝番の月影桜花姫よ♪留意しなさいね♪」
「なっ!?不寝番の月影桜花姫って…」
彼等は満面の笑顔で自身の名前を名乗り始める桜花姫に驚愕したのである。
「桜花姫って冗談だろ…」
匪賊達は極度の恐怖心からか恐る恐る桜花姫から後退りし始める。
「貴様が最上級妖女って噂話の…不寝番の月影桜花姫なのか!?」
「此奴は本物の桜花姫かよ!?」
匪賊達は桜花姫から恐る恐る後退りするものの…。
「馬鹿者が!こんな小娘を相手に狼狽えるな!」
中肉中背の匪賊が恐る恐る連発銃に弾丸を装填させたのである。
「月影桜花姫が最上級の妖女だとしても所詮は単なる小娘風情だ!連発銃で狙撃しちまえば最上級の妖女だって打っ殺せるさ!」
対する桜花姫は匪賊の発言に呆れ果てた様子であり失笑し始める。
「最上級妖女の私を打っ殺すなんて♪あんたは本気なのかしら?如何やらあんたは余程の命知らずみたいね♪脳味噌は空っぽなのかしら?」
桜花姫は中肉中背の匪賊に挑発したのである。
「此奴…桜花姫!覚悟しやがれ!」
中肉中背の匪賊は連発銃から弾丸を装填…。発砲したのである。一方の桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。
「私に連発銃は通用しないわよ…」
桜花姫は妖力の防壁によって発砲された弾丸を無力化したのである。
「畜生が!此奴は荒唐無稽の妖術で連発銃の弾丸を無力化しやがったか!」
桜花姫は不本意であるものの…。
「状況が状況だから仕方ないわね…」
『人間に対する禁断の妖術…発動しちゃおうかしら♪』
桜花姫は匪賊の一人に人間に対する禁断の妖術を発動する。
『果実の飴玉に変化しちゃえ!』
すると連発銃を武装した匪賊が桜花姫の人間に対する禁断の妖術によって自身の大好きな果実の飴玉に変化したのである。
「うわっ!人間が妖術で飴玉に変化したぞ!」
周囲の者達は桜花姫の妖術に驚愕し始める。
「折角だから♪飴玉を頂戴するわね♪」
一方の桜花姫は満面の笑顔で飴玉に変化した匪賊を捕食したのである。
「えっ…捕食しやがったぞ…」
「捕食しちまうなんて…此奴は正気なのか?」
匪賊達は桜花姫の悪食に戦慄する。一方の桜花姫は無表情で周囲の者達を凝視…。
「今度は誰が…私に食い殺されたいのかしら?」
桜花姫は小声で発言したのである。桜花姫の問い掛けに彼等は戦慄する。
「ひっ!桜花姫に打っ殺されちまうよ!一先ず逃げろ!」
匪賊達は極度の恐怖心により一目散に逃走したのである。
『鬱陶しい奴等だったわ…』
桜花姫は現場へと急行する。
最終話
仙女
極悪非道の匪賊達を撃退してより数分後…。桜花姫は摩訶不思議の神通力を目印に目的地の日和山へと到達したのである。
『虹色の広葉樹だわ…』
天辺の中心部には虹色に光り輝く広葉樹が確認出来る。
『非常に幻想的ね…』
虹色の広葉樹は非常に幻想的であり魅了されたのである。
「えっ?」
広葉樹の近辺には八正道らしき僧侶の人物が地面に横たわった状態で確認出来る。
「八正道様!?」
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る地面に横たわった状態の八正道に近寄るものの…。警戒する。
『彼って八正道様だよね?大丈夫かしら?』
目前の人物は普段の温柔敦厚の八正道とは別人であり非常に薄気味悪い雰囲気だったのである。不吉にも人間である八正道の肉体からは摩訶不思議の神通力を感じる。
『不吉だわ…純血の人間なのに八正道様の肉体から神通力を感じるわ…如何してなのかしら?』
すると地面に横たわった状態の八正道が恐る恐る目覚める。
「八正道様!?大丈夫なの!?」
八正道は無表情で桜花姫を凝視し始める。
「人外の小娘風情よ…私が八正道であると?人違いであるな…」
「えっ!?人違いですって?」
桜花姫は八正道の返答に困惑したのである。
「あんたは八正道様でしょう?」
桜花姫は恐る恐る八正道の様子を観察する。
『姿形は八正道様本人でも…彼自身の中身は完全に別物みたいだわ…』
外見のみなら地上世界の聖人とされる八正道であるが…。
『八正道様の姿形の此奴は一体何者なのかしら?』
桜花姫は八正道の雰囲気の変化に恐る恐る後退りしたのである。一方の八正道らしき人物は桜花姫を睥睨した表情で…。
「私は森羅万象の造物主であり…世界樹とされる【妖星巨木】であるぞ…」
八正道らしき人物は自身を造物主の妖星巨木と名乗り始める。
「あんたは…造物主の妖星巨木ですって!?」
桜花姫は妖星巨木の一言に反応…。驚愕する。
「私は僧侶の肉体に憑霊したのだ…」
妖星巨木の霊魂は一時的に八正道の肉体に憑霊したのである。
『妖星巨木って…大昔の伝承では世界樹だったかしら?』
妖星巨木とは森羅万象の造物主とされ…。太古の古代人達の伝承では古来より地上世界の世界樹として認識される。
『こんな小山みたいな日和山に本物の世界樹と遭遇しちゃうなんてね…』
妖星巨木は太古の大昔に存在した神秘の超自然的樹木であり死滅した神族の鮮血を養分として誕生したのである。妖星巨木は人畜無害の超自然的存在とされる。太古の古代人達からは森羅万象の創造主やら地上世界の世界樹として神格化されたものの…。戦乱時代末期の出来事である。とある片田舎の村娘が妖星巨木の果実を菜食…。人間の女性であり人一倍病弱であった片田舎の村娘は超自然的存在へと覚醒したのである。片田舎の村娘は摩訶不思議の妖力を入手…。人外の化身へと変化したのである。妖星巨木の果実を菜食した村娘こそが事実上唯一無二の元祖妖女であり今現在では空想の昔話として伝承される。
「造物主である私と対峙し続けても正気を維持出来るとは…貴様の正体は…妖女は妖女でも最上級に君臨する一握りの最上級妖女であるな…」
対する桜花姫は八正道の肉体に憑霊した妖星巨木を睥睨したのである。
「妖星巨木…あんたは即刻人間の八正道様を元通りに戻しなさい!」
桜花姫は勇往邁進の気構えで断言する。
「妖女の小娘風情よ…貴様の仲間である僧侶の肉体を元通りに戻したいのであれば…貴様は私の目的に協力するのだ…」
「私があんたの目的に協力ですって?妖星巨木…あんたは一体何が目的なのよ?」
妖星巨木は一息したのである。
「貴様の荒唐無稽の妖術で…全世界の人間達を完膚なきまでに殲滅せよ…」
「はっ?全世界の人間達の殲滅ですって?」
桜花姫は妖星巨木の発言に呆れ果てる。
「貴様の妖力は非常に強力である…最上級妖女の貴様であれば一晩中のみで一国の人間達を全滅させられるだろう…」
桜花姫は苛立った表情で妖星巨木に睥睨する。
「面倒臭いわね…誰があんたの協力なんて…人間達を殲滅したいのであればあんたが一人で実行しちゃえば?人間達を殲滅するなんて面倒臭いし私は御免だわ…」
「であれば貴様の僧侶は一生涯元通りには戻れない…僧侶を元通りに戻したいのであれば私の目的に協力するべきだ…」
桜花姫は妖星巨木に腹立たしくなる。
「あんたは…卑劣だわ…」
「私が卑劣だと?卑劣なのは貴様だって同一の存在であろうに…何を今更…」
桜花姫の卑劣の一言に妖星巨木は反論したのである。
「貴様は自身の妖力で今迄に何人もの人間達を殺害したのだ?不本意だとしても…貴様は自身の母親だって殺害したのだろう?」
「えっ…」
桜花姫は母親の一言に反応する。
『母様…』
桜花姫は実母である月影春海姫の存在を想起すると妖星巨木に反論出来なくなる。すると桜花姫は睥睨した表情で妖星巨木に問い掛ける。
「如何してこんなにも無数の悪霊が俗界に出現したのよ?世界樹のあんただったら天災地変の主要因を特定出来るわよね?一体何が要因でこんな事態に?」
問い掛けられた妖星巨木は断言する。
「今回の騒動…大勢の亡者達を俗界に口寄せしたのは私自身の神通力である…」
『妖星巨木が…』
「神通力って…あんたが今回の悪霊事件の黒幕だったのね!」
桜花姫は突如として表情が強張ったのである。
「今回私が…私自身の神通力によって大勢の亡者達を口寄せさせた主原因とは…所詮人間達の自業自得であるからな…」
「人間達の…自業自得ですって?」
「愚劣なる人間達は戦乱時代以前の太古の大昔から同族同士で殺し合い…自然界の多種多様の動植物を殺戮し続けたからな…」
戦乱時代以前の太古の古代文明時代からも人間達は同族同士で紛争し合い…。地上世界の彼方此方で殺し合ったのである。
「私は彼等の野蛮さと傲慢さにより愚劣なる俗界の人間達を見限ったのだ…地上世界に下劣なる人類は不要なのだ…貴様にも理解出来るだろう?」
表情が強張った桜花姫であるものの妖星巨木の思考に意気投合…。妖星巨木の思考には全否定出来なかったのである。
「妖星巨木…一部だけどあんたの主義主張も理解出来るかも知れないわ…内心私自身も人間達は大嫌いよ…私自身も幼少期は周囲の村人達に人外の妖女だからって迫害されたのよね…人間達って野蛮で強欲よね?」
今現在でこそ桜花姫は悪霊捕食者であり不寝番として各地方で活躍中であるが…。幼少期では一部の村人達から疫病神やら妖怪の子供と嫌悪され迫害されたのである。
「私自身も人間なんて…誰一人として信頼出来なかったわ…」
桜花姫は幼少期に一部の村人達による偏見…。迫害から人間達を憎悪したのである。
「無論である!人間とは卑劣であり醜悪なる生命体であるからな…森羅万象の唯一の汚点であろう!」
妖星巨木は人類が森羅万象の唯一の汚点であると即答する。
「結局人間は誰も信頼出来なかったけれどね…」
「ん?貴様は何を発言したいのであるか?」
桜花姫は妖星巨木に問い掛けられてから数秒後…。
「八正道様…彼だけは私の唯一の理解者であり…私にとって唯一信頼出来る人間だったのよ…」
「僧侶が貴様にとって唯一の理解者であると?」
「私にとって八正道様は家族同然なのよ!」
桜花姫は八正道を一人の家族と表現したのである。
「家族だと?こんな人間の僧侶が貴様にとっての家族なのか?傑作だな♪」
妖星巨木は桜花姫の発言に冷笑し始め…。内心滑稽であると感じる。
「私の家族である八正道様に手出しするなら言語道断よ!あんたが森羅万象の世界樹だからって私は手加減しないからね!」
「であれば折角の機会である…造物主の私と一対一の真剣勝負でも如何かな?最上級妖女の小娘よ…」
妖星巨木は桜花姫に一対一の真剣勝負を提案する。
「私があんたと一対一の真剣勝負ですって?」
「無論最上級妖女の小娘が私に敗戦したならば…貴様の寿命を収縮させる…貴様が自身の家族であると豪語する人間風情の僧侶も未来永劫呪詛し続けるからな…」
すると桜花姫は恐る恐る妖星巨木に質問したのである。
「反対に私が…あんたとの真剣勝負に勝利出来たら如何するのよ?」
妖星巨木は桜花姫の質問に一息するものの…。数秒後に返答したのである。
「小娘風情が私との真剣勝負に勝利したならば貴様の寿命を収縮させないし…貴様が自身の家族であると豪語する人間の僧侶も私の呪詛から無条件に解放するぞ!無数の悪霊による天災地変も私の神通力で鎮静化させるからな!」
桜花姫は一瞬度重なる悪戦苦闘により困惑するものの…。妖星巨木の提案を承諾したのである。
「私は全身全霊であんたを仕留めるからね!妖星巨木!覚悟なさい!」
「であれば決定だ!妖女の小娘よ!貴様こそ覚悟するのだな!」
すると突如として八正道の肉体は脱力し始めたかと思いきや…。地面に横たわったのである。
「八正道様!?」
八正道は意識を喪失…。気絶した状態だったのである。桜花姫は地面に横たわった状態の八正道に一瞬動揺するものの…。
『ひょっとして八正道様は妖星巨木の呪縛から一時的に解放されたのかしら?』
八正道の肉体に憑霊した妖星巨木の神通力が本体である広葉樹の樹体に戻ったのである。八正道の肉体からは妖星巨木の神通力が感じられなくなる。
『如何やら私は此奴を相手に手加減しなくても大丈夫みたいね♪』
桜花姫にとっては手加減無用の相手は好都合だったのである。
「先制攻撃よ!妖星巨木!」
桜花姫は即座に天道天眼を発動…。
『火球の妖術で…妖星巨木の樹体諸共!』
火球の妖術を発動すると手首より超高温の発光体を形成したのである。
「妖星巨木!死滅しなさい!」
発射された超高温の発光体は非常に特大であり妖星巨木の表面に直撃…。爆散したのである。
「直撃♪直撃♪」
超高温の発光体で妖星巨木を仕留めたかと思いきや…。妖星巨木は神通力の防壁を発動したのである。直撃した超高温の発光体を神通力の防壁で無力化…。
『攻撃を無力化されたわ…神通力の防壁かしら?』
発射された超高温の発光体は妖星巨木の樹体に吸収されたのである。
『私の妖術を無力化するなんて非常に厄介ね…』
「当然だけど妖星巨木は一筋縄では対処出来ないわね…」
今度は妖星巨木が神通力で無数の亡魂を口寄せする。
『鬼火かしら?』
妖星巨木の樹木から口寄せされた無数の亡魂は融合化され…。
『此奴は死滅した亡魂の集合体である!覚悟するのだな!』
妖星巨木は特大の鬼火を形作る。
『妖女の小娘よ!貴様は完膚なきまでに死滅するのだ!』
妖星巨木の発動した特大の鬼火は死滅した亡魂の集合体であり桜花姫を標的に放射したのである。一方の桜花姫は即座に寒風の妖術を発動…。寒風の防壁で妖星巨木の鬼火を消失させたのである。
「非常に手緩いわね…妖星巨木♪こんな程度の攻撃では最上級妖女の私は仕留められないわよ♪」
妖星巨木は鬼火を消失させた桜花姫を強豪であると再認識する。
『寒風の妖術のみで私の鬼火を無力化するとは…一筋縄では妖女の小娘は仕留められないな!』
今度は全身の樹体から猛毒の瘴気を放出したのである。
「えっ!?」
『猛毒の瘴気かしら!?』
桜花姫は必死に呼吸を停止させる。
『妖女は妖女でも此奴は片親が人間の血筋か…肉体的には脆弱みたいだな…』
妖星巨木は桜花姫が人間と妖女の混血であると察知したのである。
『如何やら小娘には猛毒の瘴気は有効そうだな…』
一方の桜花姫は瘴気により身動き出来ず…。呼吸すら出来なかったのである。
『如何しましょう?猛毒の瘴気なら…』
桜花姫は浄化の妖術を発動…。妖星巨木の樹体から放出された猛毒の瘴気を浄化させたのである。
『小娘風情が…私の瘴気を浄化するとは…』
対する桜花姫は満面の笑顔で挑発する。
「妖星巨木♪私は最上級妖女だからね♪こんな瘴気では私は仕留められないわよ♪」
すると今度は周辺の地面より半透明の触手を無数に出現…。
『今度は触手の攻撃!?』
桜花姫は咄嗟に妖力の防壁を発動したのである。
「危機一髪ね♪」
妖力の防壁を発動すると半透明の触手の無力化に成功する。
『妖女の小娘よ…』
妖星巨木は精神感応により桜花姫の脳裏に自身の思考を伝達したのである。
『天道天眼の防壁で私の神通力を無力化するとは…』
「妖星巨木!?精神感応かしら?」
『太古の大昔から数多くの妖女が伝説の神性妖術である天道天眼を開眼したが…貴様に匹敵する妖女は誰一人として皆無であった…』
一方の桜花姫も精神感応で返答する。
『勿論♪私は最上級の妖女だからね♪其処等の妖女とは別格なのよ♪』
桜花姫は自身が最強の妖女であると自負したのである。
『無論貴様は屈強の最上級妖女であるが…所詮肉体はか弱き小娘風情!森羅万象の造物主である私には勝利出来ないであろう!』
『私が妖星巨木に勝利出来ないかは…断言するのは早計よ♪』
両手より雷光の光線を発動…。妖星巨木の樹木に直撃させる。
『最上級妖女の小娘…絶大なる雷撃であるが…』
妖星巨木は桜花姫の発動した雷光の光線を吸収したのである。
『私には貴様程度の妖術は通用しないぞ!只管貴様の妖力を吸収し続けるだけだ!』
『妖星巨木は私の妖力を吸収したのね…当然だけど一筋縄ではあんたは仕留められないわね…』
『当然である!私にとっては貴様程度の妖術なんて…』
妖星巨木は金縛りを発動…。
『貴様の身動きを封殺する!今度こそ覚悟するのだな!妖女の小娘!』
一方の桜花姫は妖星巨木の金縛りにより身動きを封殺されたのである。
「ぐっ!」
『身動きが出来ないわ…ひょっとして金縛りかしら?』
桜花姫は妖星巨木の金縛りによって身動き出来なくなる。
『最上級妖女の小娘よ…身動き出来なくなった気分は如何だろうか?貴様の強大なる妖力を完膚なきまでに頂戴するぞ!』
地面より半透明の無数の触手が出現し始め…。桜花姫の全身に接触したのである。
「きゃっ!」
『私の妖力が…妖星巨木に吸収されるわ…』
半透明の触手によって身動き出来なくなった桜花姫は妖星巨木の吸収能力により体内の妖力が一瞬で吸収され…。体力が急速に消耗したのである。
『妖力と体力が…消耗するわね…』
桜花姫は妖力と体力の消耗により地面に横たわる。
『妖力が妖星巨木に吸収されちゃうわ…私…衰弱死しちゃうかも…やっぱり一人では妖星巨木には勝利出来ないのかしら?』
桜花姫は衰弱死を覚悟するのだが…。
「えっ…」
直後である。
『何かしら?白猫!?』
背後の自然林から一匹の白猫が出現したかと思いきや…。
『一体何を!?』
白猫の目力は非常に強力であり全身から衝撃波を発生させたのである。直後…。白猫の発生させた衝撃波は妖星巨木の無数の触手を消滅させたのである。
「きゃっ!」
桜花姫は衝撃波の発生に両目を瞑目させる。
『白猫の体内から妖力を感じるわね…』
白猫の体内からは妖女特有の妖力が感じられる。
『ひょっとして白猫の正体は妖女なのかしら?白猫の正体が妖女だとしたら…』
すると白猫の全身から白煙が発生したのである。
「白猫…ひょっとしてあんたの正体は…」
白猫は人間の少女の姿形へと変化する。
「桜花姫姉ちゃん…大丈夫?」
白猫の正体は誰であろう山猫妖女の小猫姫だったのである。
「あんたは…山猫妖女の小猫姫!?」
小猫姫は変化の妖術を駆使すると人畜無害の白猫にも変化出来る。すると地面に横たわった状態の桜花姫の背後より神族の蛇体如夜叉が恐る恐る近寄り始める。
「桜花姫ちゃんよ…あんたは大丈夫かね?」
「神族の蛇体如夜叉婆ちゃんも?」
「最上級妖女の桜花姫ちゃんがこんなにも衰弱化しちゃうなんてね…相手が相手だから当然かね?」
蛇体如夜叉は自身の特殊能力によって左手を白蛇に変化させたのである。恐る恐る桜花姫の背中に接触し始め…。
「妖力が戻ったわ…」
『蛇体如夜叉婆ちゃんの…神力かしら?』
蛇体如夜叉の左手の白蛇は桜花姫の消耗した妖力を瞬間的に回復させる。
「妖星巨木を相手に命拾い出来たね…桜花姫ちゃん…あんたは幸運だよ…」
「感謝するわね…蛇体如夜叉婆ちゃん♪小猫姫♪」
蛇体如夜叉の特殊能力によって桜花姫の消耗した妖力は完全に回復したのである。蛇体如夜叉は恐る恐る妖星巨木を凝視し始め…。
『今回の相手は世界樹の妖星巨木だけど…』
妖星巨木は本来人畜無害の超自然的存在である。
『姿形は神聖なる樹木でも…此奴の中身は別物だね…恐らく此奴の正体は…』
蛇体如夜叉は妖星巨木の正体を察知する。
「桜花姫ちゃんよ…」
蛇体如夜叉は地面に横たわった状態の桜花姫を直視したのである。
「桜花姫ちゃんらしいけれど…こんな荒唐無稽の造物主を相手に真正面から真剣勝負なんてね…普通の妖女なら暴虎馮河だよ…あんたは死にたいのかね?」
蛇体如夜叉は桜花姫に妖星巨木との真剣勝負は自殺行為であると指摘する。
「私は…八正道様を元通りに戻したかっただけなのよ…」
「八正道様だって?八正道とは一体誰かね?」
「八正道様は…」
蛇体如夜叉は桜花姫の背後の地面に横たわった状態の八正道を凝視し始める。
「誰かと思いきや…此奴は列記とした人間だけど男前の僧侶だね♪」
蛇体如夜叉は八正道を男前の僧侶と表現したのである。
「私にとって八正道様は人間では唯一の理解者だからね…私は如何しても彼を妖星巨木から救済したいのよ…」
『彼が桜花姫ちゃんの理解者とはね…こんな世の中でも温柔敦厚の人間が実在するなんて…』
蛇体如夜叉は微笑み始める。
『今迄人間達を人一倍毛嫌いした桜花姫ちゃんが…本心から一人の人間を救済したがるとはね♪』
蛇体如夜叉は桜花姫の心境の変化に大喜びだったのである。
「小猫姫よ♪」
「何よ?蛇体如夜叉婆ちゃん?」
「折角の機会だからね…あんたは桜花姫ちゃんに協力して妖星巨木の暴走を阻止しな♪思う存分に大暴れしなよ♪小猫姫♪」
小猫姫は大喜びで承諾する。
「勿論だよ♪蛇体如夜叉婆ちゃん♪私は桜花姫姉ちゃんに協力するよ♪」
小猫姫は大喜びで体内の妖力を増強化し始め…。強大なる伝説の妖獣へと変化したのである。
「えっ!?小猫姫が…変化の妖術で伝説の妖獣に!?」
桜花姫は伝説の妖獣に変化した小猫姫に驚愕する。
「私も変化出来るのよ♪桜花姫姉ちゃん!私と一緒に精一杯共闘しましょう!」
「勿論よ♪小猫姫♪私と共闘しましょうね♪」
桜花姫は小猫姫との共闘に心強く感じる。
『小猫姫が伝説の妖獣に変化出来るなんてね…非常に心強いわ!』
一方の妖星巨木は桜花姫と小猫姫の一枚岩に危惧し始める。
『此奴は非常に厄介だな…天道天眼の小娘は勿論…妖獣の小娘も出現するとは…』
妖星巨木の神通力が先程よりも増大化したのである。
『止むを得ないな…強豪の妖女が二人では私も本領を発揮しなくては…』
妖星巨木の神通力によって天空全体が黒雲により覆い包まれる。
「黒雲かしら?先程よりも妖星巨木の神通力が増大化したわ…如何やら妖星巨木は本気みたいね…」
桜花姫は妖星巨木の本気に一瞬身震いしたのである。
「小猫姫…油断大敵よ!如何やら妖星巨木は本領を発揮するみたいよ!」
「桜花姫姉ちゃんこそ油断大敵だからね♪」
彼女達は妖星巨木の反撃に警戒した直後…。
「えっ!?雷撃だわ!」
すると強烈なる落雷攻撃が彼女達の直上より落下する。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。妖星巨木の落雷攻撃を無力化したのである。小猫姫も全身から雷光の防壁を発動…。桜花姫と同様に妖星巨木の発動した落雷攻撃の無力化に成功する。
「死滅しろ!妖星巨木!」
今度は小猫姫が妖力を凝縮…。口先から高熱の雷球を発射したのである。
「直撃!」
小猫姫の高熱の雷球は妖星巨木の樹木表面に直撃するものの…。妖星巨木の吸収能力によって小猫姫の発射した高熱の雷球は無力化されたのである。
「私の攻撃が妖星巨木に吸収されちゃった…やっぱり此奴は容易には仕留められないね!桜花姫姉ちゃん!」
「妖星巨木は本物の世界樹だからね…此奴には私達の妖術は通用しないみたいよ…」
『私と小猫姫は妖力だけなら確実に妖星巨木を上回ったけれども…妖星巨木の吸収能力には私達の妖術は確実に無力化されちゃうし…一体如何すれば世界樹の妖星巨木を仕留められるのかしら?』
桜花姫は妖星巨木の攻略に苦悩する。一方の小猫姫も同様である。
「桜花姫姉ちゃん?如何すれば妖星巨木を退治出来るの?妖力は吸収されちゃうし妖星巨木を退治出来ないよ…」
「残念だけど…現状では不明だわ…」
彼女達は通常の妖術では無力化される妖星巨木に困惑する。
「妖星巨木に対抗出来るとすれば…妖女の私でも此奴に対抗出来る…荒唐無稽の神通力が扱えるなら…」
桜花姫は小声であったが地獄耳の蛇体如夜叉は桜花姫の口走った神通力の一言を傾聴…。反応し始める。
「えっ?桜花姫ちゃんよ…神通力だって?」
蛇体如夜叉は頭陀袋からとある木材の破片を桜花姫に手渡したのである。
「えっ?蛇体如夜叉婆ちゃん?何かしら?木材の破片?」
「何って…此奴は器物の悪霊小面袋蜘蛛の肉片だよ♪」
蛇体如夜叉は満面の笑顔で木材の破片が小面袋蜘蛛の肉片であると即答する。
「げっ!?」
『小面袋蜘蛛の…肉片ですって!?』
桜花姫は木材の破片が小面袋蜘蛛の肉片である事実に一瞬気味悪がる。
「桜花姫ちゃんよ…あんたも摩訶不思議の神通力を入手したいのであれば思う存分に小面袋蜘蛛の肉片を頬張りな♪本来小面袋蜘蛛は妖星巨木の樹体の一部から形作られた能面だからね♪桜花姫ちゃんでも神通力を扱えるかも知れないよ♪」
「私が…神通力を?」
共存共栄の安穏時代でも小面袋蜘蛛が誕生した経緯は不明瞭であり真偽は明確化出来ないものの…。小面袋蜘蛛の正体は一説によると古代世界の古代人達によって迫害された神族の怨恨が器物である巨大能面に憑霊した付喪神の一種であるとも解釈される。
「付喪神である小面袋蜘蛛の肉片を食べちゃえばあんたの天道天眼も覚醒させられるかも知れないよ…」
「天道天眼の覚醒ですって?」
桜花姫は一瞬沈黙する。一方の妖星巨木は神族の蛇体如夜叉にも警戒したのである。
『此奴は姿形のみなら非力そうな人間の老婆だが…純血の神族の一人だな…こんな老婆が小面袋蜘蛛の肉片を入手したとは…』
妖星巨木も小面袋蜘蛛の肉片を察知する。小面袋蜘蛛の肉片を手渡された桜花姫であったものの…。
「えっ…蛇体如夜叉婆ちゃん…」
『こんな代物…食いしん坊の私でも頬張りたくないわね…如何しましょう?』
桜花姫は小面袋蜘蛛の肉片を捕食するべきなのか非常に困惑したのである。
「桜花姫ちゃん…如何するのさ?此奴を頬張らないと造物主の妖星巨木には対抗出来ないよ…」
蛇体如夜叉は真顔で桜花姫に問い掛ける。
「仕方ないわね…」
生理的に無理であり小面袋蜘蛛の肉片を捕食したくない桜花姫であるが…。
『一か八かの大博打よ!』
桜花姫は小面袋蜘蛛の肉片に変化の妖術を発動したのである。
『小面袋蜘蛛の肉片…世界一美味しい桜餅に変化しなさい!』
変化の妖術を発動した直後…。小面袋蜘蛛の肉片は桜花姫の大好きな桜餅に変化したのである。
『変化の妖術…成功ね♪』
桜花姫は変化の妖術の成功に安堵する。
「桜花姫ちゃんらしい判断だけど…小面袋蜘蛛の肉片をあんたの大好きな桜餅に変化させるなんてね…」
「桜花姫姉ちゃんの大好きな桜餅だ…」
蛇体如夜叉と小猫姫は桜花姫らしい発想に苦笑いしたのである。
「桜餅に変化しちゃえば小面袋蜘蛛の肉片だって思う存分に吟味出来るからね♪」
桜花姫は変化の妖術で桜餅に変化した小面袋蜘蛛の肉片を一口で平らげる。
『所詮妖女の小娘が私の樹体の欠片である小面袋蜘蛛の肉片を捕食したとしても扱える神通力は微量…造物主の私には程遠いのだぞ!』
妖星巨木は桜花姫を脆弱であると判断する。
「えっ?」
突如として桜花姫の肉体が粒子状の虹色の発光体に覆い包まれる。
「桜花姫ちゃん!?」
「桜花姫姉ちゃん!?」
蛇体如夜叉と小猫姫は強烈なる虹色の発光体により瞑目したのである。すると数秒後…。無数の発光体の中心部より大宇宙の真理とされる大日如来と天照大神を連想させる巫女装束の仙女が誕生する。
「彼女は地上世界の女神様かな?」
「えっ?あんたは仙女?桜花姫ちゃんなのかい?」
巫女装束の仙女の頭部には金無垢の金冠…。背中には大日如来を連想させる黄金色の光背が形作られる。蛇体如夜叉と小猫姫は恐る恐る巫女装束の仙女に問い掛ける。
「ひょっとしてあんたは…桜花姫ちゃんなのかい?」
「貴女は桜花姫姉ちゃんだよね?」
すると巫女装束の仙女は背後の小猫姫と蛇体如夜叉を直視し始め…。二人の問い掛けに満面の笑顔で返答する。
「蛇体如夜叉婆ちゃん♪小猫姫♪私よ…桜花姫♪私は月影桜花姫よ♪」
蛇体如夜叉は仙女へと覚醒した桜花姫に驚愕したのである。
「えっ…」
『桜花姫ちゃんが容姿端麗の仙女に覚醒するなんて…』
小猫姫は仙女の桜花姫に見惚れる。
「本物の女神様みたいだね♪桜花姫姉ちゃん♪」
「私が女神様なんて…小猫姫は大袈裟ね♪」
『私が女神様ですって♪』
桜花姫は赤面するものの…。内心大喜びしたのである。
『私は…普段よりも妖力が増強化したのかしら?』
対する妖星巨木は精神感応で桜花姫に返答する。
『天道天眼の覚醒によって小娘の体内の妖力が神通力に変化したが…貴様の体内の神通力は私よりも数段階下回るのは周知の事実であるぞ!所詮貴様はか弱き妖女の小娘…貴様程度の微弱の肉体では扱える神通力も微量なのだ!造物主の私を相手取るには程遠いのだぞ…』
「現段階の私だったら…圧倒的に劣勢かも知れないわね♪」
「えっ?桜花姫姉ちゃん?」
桜花姫は満面の笑顔で背後の小猫姫を凝視したのである。
「小猫姫♪」
「何よ?桜花姫姉ちゃん?」
「小猫姫…あんたの妖力を私に♪妖星巨木に対抗するには小猫姫の妖力が必要不可欠なのよ…」
小猫姫は一時的に変化の妖術を解除…。伝説の妖獣から本来の美少女の姿形へと戻ったのである。
「桜花姫姉ちゃん…私の妖力を一思いに吸収しちゃって!」
小猫姫は恐る恐る桜花姫の背中に接触する。すると桜花姫の吸収能力により小猫姫の莫大なる妖力が一瞬で消耗したのである。
「ぐっ!」
『私の妖力が一瞬で…』
小猫姫は妖力の消耗で一瞬息苦しくなる。
「御免あそばせ♪小猫姫…」
『小猫姫…あんたの妖力を頂戴するわね…此奴を仕留めるにはあんたの妖力が必要不可欠なのよ…』
桜花姫は小猫姫に謝罪する。一方の小猫姫は妖力の消耗によって非常に息苦しくなるものの…。
「私なら大丈夫だから…気にしないで…桜花姫姉ちゃん♪」
小猫姫は息苦しい様子であったが笑顔で返答したのである。
「感謝するわね♪小猫姫♪」
桜花姫に吸収された小猫姫の妖力は彼女の体内にて神通力へと変化し始める。すると桜花姫の神通力は先程よりも数段階増大化したのである。
『微弱であった小娘の神通力が造物主である私に匹敵?上回るなんて…』
妖星巨木は急速に神通力が増大化し続ける桜花姫に驚愕する。小猫姫の妖力によって桜花姫の神通力が妖星巨木の神通力を数段階上回ったのである。
「桜花姫ちゃんが天道天眼の覚醒と小猫姫の妖力によって造物主である妖星巨木の神通力を完全に上回るなんてね…」
『ひょっとすると彼女は…』
蛇体如夜叉は仙女に覚醒した桜花姫を見守り続ける。
『桜花姫ちゃんは正真正銘…大昔の戦乱時代に実在した元祖妖女の再来なのかも知れないね…』
蛇体如夜叉は大昔の伝説を連想…。最上級妖女の月影桜花姫が五百年前に実在したとされる元祖妖女の再来なのではと推測する。
「妖星巨木…あんたの本体から戦乱時代の無念の亡者達の霊気を感じるわ…」
桜花姫は瞑目したのである。
「妖星巨木!私があんたの本体に憑霊する亡者達を強制的に成仏させるからね!覚悟しなさい!」
『仙術…〔日輪天光〕!』
桜花姫は虹色の神通力を諸手に凝縮…。両手より虹色に光り輝く螺旋状の発光体を射出する。桜花姫が発動させた虹色の日輪天光は妖星巨木の樹木に直射したのである。
『こんな微弱の小娘風情が!最強の仙術とされる日輪天光を発動させるとは!』
妖星巨木は咄嗟に神通力の防壁にて樹木本体を防備するものの…。
『私の防壁が!?』
仙女へと覚醒した桜花姫の日輪天光は妖星巨木の神通力の防壁を容易に無力化する。妖星巨木の防壁を無力化した日輪天光は妖星巨木の樹木表面に直撃したのである。すると妖星巨木の樹体に憑霊した無数の亡者達の阿鼻叫喚が国全体へと響き渡る。
「ぐっ!」
「きゃっ!」
「小猫姫!?蛇体如夜叉婆ちゃん!?」
妖星巨木の樹木本体に憑霊した無数の亡者達の阿鼻叫喚は蛇体如夜叉と小猫姫は勿論…。近隣の村人達をも卒倒させたのである。
『戦乱時代の亡者達は一筋縄では成仏出来ぬぞ!所詮小娘風情の貴様では亡者達を成仏させるなんて絶対的に不可能なのだ!』
桜花姫は即答する。
「あんたは沈黙するのね!人畜無害の妖星巨木に憑依した悪霊の集合体!」
桜花姫は全身全霊の神通力を発動…。
「戦乱時代の亡者達!あんた達は好い加減成仏しなさい!」
『私の亡魂が…浄化される…こんな小娘風情を相手に!?何故なのだ!?』
桜花姫の全身全霊の神通力によって妖星巨木に憑霊する無念の亡者達の阿鼻叫喚を沈黙させたのである。数秒後…。
「はぁ…はぁ…」
神通力の消耗戦によって桜花姫は疲労困憊の状態であり力尽きたのである。
「私の…妖力が空っぽだわ…」
『こんな状態では…変化の妖術も…駆使出来ないわね…』
疲れ果てた桜花姫は地面に横たわる。桜花姫は仙女の状態から元通りの姿形に戻ったのである。妖星巨木からは醜悪なる亡者達の重苦しい霊気は何一つとして感じられない。すると浄化された妖星巨木は半透明の触手を生成し始め…。
「妖星巨木…瀕死の私を…如何するのよ?」
浄化された妖星巨木の触手が疲れ果てた桜花姫の皮膚に接触する。
「えっ…」
妖星巨木の触手は消耗した桜花姫の妖力を回復させたのである。
『私の肉体に妖力が戻ったわ…』
桜花姫は妖星巨木の行動に驚愕する。
「あんたは如何して私に妖力を!?あんたは一体何が目的なの!?」
すると直後…。
「えっ!?あんたは…」
妖星巨木が樹木の状態から桜色の着物姿の小柄の童顔美少女に変化し始め…。自身と瓜二つの姿形だったのである。
「あんたは樹木に憑霊する…妖星巨木の精霊なのかしら?」
自身と瓜二つの童顔美少女は身体髪膚が半透明化した状態であり温厚の表情で目前の桜花姫を凝視し始める。
「ひょっとして妖星巨木の正体は…女体の精霊だったの?」
妖星巨木の精霊は桜花姫の問い掛けに即答する。
「私自身の本来の姿形である…今迄は大勢の醜悪なる亡者達に憑霊されてより…私は本来の姿形には戻れなかったからな…」
妖星巨木の精霊は両目を瞑目…。一息したのである。
「其方は神通力で…私の樹体に憑霊した戦乱時代の亡者達を無事に成仏させたからな…私は天道天眼の所有者に無念の亡者達を浄化させ…彼等を成仏させたかったのだ…」
「えっ…戦乱時代の亡者達を成仏ですって?」
妖星巨木の真意が意外であると感じる。
「大勢の成仏出来ぬ亡者達が私の体内に密集したからな…私の神通力は彼等によって悪用されたのだ…」
「ひょっとして今回の天災地変は…あんたが意図的に私の天道天眼を覚醒させ…戦乱時代の亡者達を成仏させる魂胆だったのね…」
「無論であるぞ…最上級妖女の小娘…」
妖星巨木の精霊は恐る恐る返答したのである。
「無関係の人間達には傍迷惑だったのかも知れないが…其方の孤軍奮闘によって無数の亡者達の無念を浄化出来たのが何よりだ…」
桜花姫は妖星巨木の精霊の本音に沈黙する。すると妖星巨木の精霊が恐る恐る地面に横たわった状態の八正道を直視したのである。
「妖女の其方にとって彼が…人間の僧侶が唯一の理解者だったな…僧侶の名前は八正道だったか?」
桜花姫は地面に横たわった状態の八正道を凝視…。即答したのである。
「勿論よ…あんたの神通力で人間の八正道様を元通りに戻しなさい…」
妖星巨木の精霊は返答する。
「承知したぞ…其方の人間の僧侶…八正道を元通りに戻そう…其方の神通力が…私の体内で忘却された戦乱時代の亡者達を無事成仏させられたからな…是非とも妖女の其方には感謝しなければ…」
直後…。暗闇であった天空の黒雲も消失したのである。各地の村里にて徘徊中だった悪食餓鬼と百鬼悪食餓鬼の大群も妖星巨木の精霊の神通力によって白砂へと変化し始め…。各地の村里を徘徊し続けた亡者達は天空世界へと昇天されたのである。
「其方にとって家族と豪語する僧侶…八正道の肉体を無事元通りに戻したぞ…桃源郷神国の天災地変も終息させたからな…」
妖星巨木の精霊が無数の粒子状へと変化し始め…。
「如何やら時間みたいだな…」
「えっ!?妖星巨木!?」
桜花姫の脳裏に妖星巨木の精神感応が響き渡る。
『最上級妖女の小娘よ…其方の名前は?』
桜花姫は精神感応で妖星巨木の問い掛けに即答する。
『私は桜花姫…最上級妖女の月影桜花姫よ…』
『月影桜花姫と名乗る妖女よ…其方は天道天眼を所有する唯一の妖女…天寿によって其方の肉体が死滅したとしても極楽浄土の守護神として覚醒する…月影桜花姫とやら…太古の妖女は戦乱で荒廃化した桃源郷神国に安寧秩序を樹立させたのだ…其方の神通力であれば一天四海全域の安寧秩序を樹立させられるかも知れないな…』
『私が極楽浄土の守護神?一天四海の安寧秩序ですって?』
『其方は彼女の後継者に相応しいからな…最上級妖女の月影桜花姫よ…』
直後である。
「えっ?」
妖星巨木の精霊は天空にて消滅する。
「妖星巨木が…」
『神通力が感じられなくなったわ…妖星巨木が消滅するなんてね…』
すると地面に横たわった状態の八正道が恐る恐る目覚める。
「えっ?私は一体何を?」
「八正道様…意識が戻ったのね…」
「桜花姫様…私は一体?」
今度は卒倒した蛇体如夜叉と小猫姫も目覚めたのである。
「桜花姫ちゃん?」
「桜花姫姉ちゃん?」
桜花姫は力一杯八正道に密着する。
「八正道様!」
「ぐっ!桜花姫様!?突然如何されたのですか!?」
八正道は突然の出来事に動揺したのである。
「八正道様…無事で良かった!無事で良かったわ!」
「心配させましたね…桜花姫様♪」
八正道は笑顔で返答する。すると直後である。
「桜花姫姉ちゃん!私にも♪」
小猫姫は桜花姫の胸元に力一杯密着する。
「小猫姫…妹分のあんたでもおっぱいに密着されちゃったら…私…」
桜花姫は赤面したのである。
「最上級妖女でも人間の混血である桜花姫ちゃんが…造物主の妖星巨木を仕留めるなんてね…」
桜花姫は一瞬困惑するものの…。恐る恐る返答する。
「元凶の妖星巨木は仕留めたわよ…徘徊中の亡者達もね…」
「桜花姫ちゃん…」
蛇体如夜叉は桜花姫の様子から察知する。
「蛇体如夜叉婆ちゃん?」
桜花姫は恐る恐る蛇体如夜叉に問い掛ける。
「如何して蛇体如夜叉婆ちゃんが小面袋蜘蛛の破片を?」
「偶然にも西国の廃村で小面袋蜘蛛の破片を確保したのさ♪本来なら破片は傷薬の原料品として役立てたかったのだけどね…」
「傷薬って…」
桜花姫は蛇体如夜叉の返答に苦笑いする。
「私が神通力を扱えたのは小面袋蜘蛛の肉片を捕食したからなのよね♪小面袋蜘蛛の肉片を吟味しなかったら今頃私達は妖星巨木の悪霊に敗北したでしょうね…」
「こんな老婆の私でも♪桜花姫ちゃんに役立てたみたいだね♪」
蛇体如夜叉は微笑み始める。すると小猫姫も桜花姫に密着した状態で…。
「私だって…私だって桜花姫姉ちゃんに協力したよ!今回は私だって役立ったでしょう!?桜花姫姉ちゃん!?」
「勿論よ♪小猫姫もね♪」
桜花姫は瞑目すると恐る恐る小猫姫に接吻する。
「えっ!?桜花姫様!?」
「桜花姫ちゃん!?あんたは正気なのかい!?」
八正道と蛇体如夜叉は驚愕したのである。
「えっ…」
桜花姫に接吻された小猫姫は無言であり表情が赤面し始め…。
『桜花姫姉ちゃん…』
小猫姫の身体髪膚が膠着化したのである。すると八正道が恐る恐る…。
「談笑中に…大変失礼なのですが…」
「八正道様?何かしら?」
「先日なのですが…私のとある隣人から良質の白米たっぷりの米俵と猪肉を提供されましてね♪是非とも今晩は私の寺院で食事しませんか?」
蛇体如夜叉と小猫姫が反応する。
「食事会とは非常に面白そうだね♪出来るなら私達も食事会に参加したいね♪」
「猪肉だって♪私も桜花姫姉ちゃんと一緒に食事会に参加したいよ♪」
「勿論大丈夫ですとも♪折角の機会です♪是非とも蛇体如夜叉婆様と小猫姫様も一緒に食事しましょうね♪」
蛇体如夜叉と小猫姫は大喜びしたのである。
「勿論…今回の主役は桜花姫様ですからね!歓迎しますよ!」
「折角だからね♪私も食事させてね♪八正道様♪」
桜花姫は一息すると恐る恐る八正道の耳元へと近寄り始める。
「えっ?桜花姫様?如何されましたか?」
桜花姫は八正道の耳元で…。
「私はね…人間では誰よりも八正道様が大好きなの♪」
「えっ…」
『桜花姫様…』
八正道は一瞬驚愕するものの…。
「私にとって桜花姫様は愛娘同然ですからね♪」
八正道も満面の笑顔で返答する。
「精一杯長生きしてよね…八正道様♪」
「勿論ですとも!桜花姫様も精一杯長生きするのですよ…約束です!」
桜花姫と八正道は握手したのである。
『私は精一杯長生きするからね…』
桜花姫は精一杯長生きしなければと決心する。
完結