桜花姫神話太平記

拠点

太平記

第一話

武陵桃源
太古の戦乱時代の出来事である。世界暦四千二百五十年の中頃より桃源郷神国は東西南北の四国に分裂…。各陣営の領主達が全身全霊で国全体の主導権の争奪戦に尽力する。頻発する戦乱の悪影響からか各村落では神出鬼没の悪霊が出没するとの超状現象も日に日に頻発したのである。長引き続ける戦乱の悪影響によって死去した亡者達は勿論…。数多くの動植物の亡霊も彼方此方に出現し始める。戦乱時代末期の出来事である。世界暦四千五百六年十一月の中頃…。国内最大勢力である東国よりとある若武者の美青年と家来が武陵桃源とされる西国へと移動したのである。彼等は西国の村里へと到達すると若武者の家来が真夜中の農村地帯を眺望する。
「西国の村里に到着しましたよ!正真正銘…武陵桃源ですな♪」
美青年の若武者も西国の広大無辺の麦畑を眺望したのである。
「西国が武陵桃源なのは事実だったのか…こんなにも戦乱が頻発する世の中で…西国だけは本当に桃源郷みたいだな…」
若武者の名前は【夜桜崇徳王】…。崇徳王は東国出身の最上級武士であり名門の武家一族である夜桜一族総本家の長男である。
「ですが崇徳王様?」
家来は恐る恐る若武者の崇徳王に問い掛ける。
「如何した?」
「如何して崇徳王様はこんなにも片田舎の西国なんかを視察されたかったのですか?西国の村里は農村地帯ばかりですよ…」
家来に理由を問い掛けられた崇徳王は一息し始め…。無表情で返答する。
「私は以前から…武陵桃源の西国で定住したかったからな…」
崇徳王の返答に家来は驚愕したのである。
「崇徳王様!?突発的に何を!?こんな片田舎の西国に定住されたいなんて…崇徳王様は本気なのですか!?」
家来は崇徳王の返答が冗談であると感じる。
「勿論…私は本気だよ…」
驚愕し続ける家来に崇徳王は真顔で即答する。
「えっ…崇徳王様…」
「私は冗談が苦手だからな…」
「崇徳王様…突然如何されたのですか?ひょっとして再起不能の疫病にでも?」
家来は崇徳王が疫病を発症したのではと思考したのである。
「私が疫病なんて其方は大袈裟だな…」
崇徳王は本気の様子であり即答する。
「崇徳王様は名門の夜桜一族の最上級武士なのですよ!最上級武士の崇徳王様がこんなにも片田舎の西国なんかに移住されるなんて…前代未聞の事態ですよ!」
夜桜一族は名門の武家一族であり崇徳王は最上級武士としては勿論…。東国の軍神として大勢の敵兵達を斬撃する。
「はっ?」
崇徳王は家来の発言に苛立ったのか表情が険悪化し始め…。微笑する家来を鬼神の形相で睥睨したのである。
「結局は其方も国内の奴等と同様の反応だな…」
「えっ!?崇徳王様!?」
崇徳王の目力に家来は圧倒される。
「崇徳王様…一体如何されたのですか?」
『崇徳王様…普段は誰よりも温厚なのに鬼神みたいな形相だな…』
家来は睥睨し続ける崇徳王に畏怖したのである。崇徳王は再度一息したかと思いきや…。恐る恐る発言する。
「本日より私は東国…武家一族の夜桜一族とは絶縁する!金輪際私は東国へは戻りたくても戻れなくなるからな!」
「絶縁ですと!?」
家来は崇徳王の突発的発言に混乱したのである。
「崇徳王様は突然何を!?」
家来は警戒した様子で恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「一族との絶縁なんて…崇徳王様は本気なのですか!?一大事ですよ!?」
「何を今更…私は本気だよ!」
崇徳王は即答したのである。
「崇徳王様…」
『崇徳王様は本気みたいだ…私には崇徳王様の思考が理解出来ませんね…』
家来は崇徳王の思考に困り果てる。
「是非とも其方には感謝しなければ…」
崇徳王は瞑目したのである。
「崇徳王様?今度は如何されましたか?」
家来は崇徳王の不穏の雰囲気に身震いし始める。
「こんなにも身勝手過ぎる私なんかと一緒に…片田舎の西国に随伴して…」
崇徳王は即座に護身用の刀剣を抜刀し始め…。家来を威嚇したのである。
「なっ!?崇徳王様!?一体何を!?」
家来は崇徳王の目力に畏怖する。
『崇徳王様の目力…本気の殺意だ…』
崇徳王の表情から本気の殺意を感じる。
「其方は命拾いしたければ…即刻私から逃走しろ!」
「崇徳王様…」
「其方だってこんな場所では死にたくないだろう?即刻逃走するのだ!出来るなら私は其方を殺したくないのだ…」
「ひっ!」
家来は崇徳王の殺意に戦慄する。
「父様と母様には…」
一方の崇徳王は涙腺より涙が零れ落ちる。
「息子の夜桜崇徳王は…闇夜の山道で匪賊達に殺害されたと伝達するのだ…」
「崇徳王様…承知しました!」
すると家来は闇夜の自然林へと一目散に逃走したのである。
「邪魔者は逃走したな…」
『一安心だ…』
崇徳王は家来の逃走に安堵する。
『一先ずは…』
崇徳王は恐る恐る西国の村里へと潜入したのである。
『やっぱり西国は物静かな場所だ…武陵桃源との噂話は本当みたいだな…』
片田舎の西国は人口増の東国とは桁違いの少人数であり崇徳王は内心一安心する。
『西国は極楽浄土を想念させる場所だな…本当に此処が俗界の一部なのか?』
すると西国の精霊故山と命名される低山から露天風呂の薫風が西国全体に浸透化したのである。
「ん?」
『温泉郷の薫風っぽいな…』
気になった崇徳王は薫風を目印に精霊故山の頂上へと疾走する。

第二話

湯気
疾走し始めてより数分後…。崇徳王は精霊故山の頂上へと到達したのである。
「えっ!?」
崇徳王は頂上の光景に驚愕する。
『こんな場所に露天風呂が…』
精霊故山の天辺中心部には神秘性を感じさせる石造りの露天風呂が確認出来る。
『西国は正真正銘温泉郷だったとは…』
崇徳王は恐る恐る露天風呂を凝視し続ける。
『此処は非常に神秘的だな…』
崇徳王は神秘の光景に魅了されたのである。
「ん?」
露天風呂には一人の女性らしき小柄の人影が確認出来る。
『人影だ…人間なのか?』
崇徳王は人影の正体が気になり…。
『人影の正体は一体何だろう?』
崇徳王は露天風呂の様子を観察したのである。
『誰かと思いきや…人影は小柄の女性っぽいな…』
露天風呂の湯気によって誰が入浴中なのかは不明瞭であるものの…。
『彼女は入浴中なのか?』
小柄の人影は入浴中の人間の女性であると認識出来たのである。
「えっ…」
驚愕した崇徳王は極度の胸騒ぎを感じるものの…。即座に岩陰にて入浴中の女性の様子を眺望し続ける。
『女性は入浴中みたいだが…彼女は一体何者なのか?』
「人間なのだろうか?」
女性は年齢十四歳程度の童顔美少女であり非常に神秘的雰囲気だったのである。
「女性は本物の天女みたいな人物だ…」
『彼女は何者なのだろうか?人間の…女性なのか?天空世界の…天女なのか?』
崇徳王は入浴中の女性が天空世界の天女にも感じられ…。入浴中の女性が人間の女性なのか疑問視したのである。黒毛の長髪…。両目の瞳孔は半透明の血紅色であり非常に異質的である。
「なっ!?」
何よりも気になったのは女性の巨乳のおっぱいであり普段は人一倍生真面目の崇徳王も彼女のおっぱいに反応…。見惚れたのである。
『私は一体全体何を!?私にとって本来の天敵とは私自身の下心なのかも知れないな!下心とは非常に厄介だ!』
崇徳王は極度の忍耐力により自分自身の性欲を抑圧するものの…。入浴中の女性の様子が気になるのか赤面した様子で恐る恐る入浴中の女性を覗き見し続けたのである。
『私は名門の武家一族…夜桜一族の最上級武士なのだぞ!』
すると崇徳王の背後より…。
「あんたは最低ね!」
突如として背後の何者かが覗き見し続ける崇徳王の後頭部を棍棒で力一杯打擲したのである。
「ぎゃっ!」
崇徳王は背後からの強烈なる打撃力によって地面に横たわる。
「あんたは助平!変態!」
力一杯崇徳王の後頭部を打擲したのは茶髪の長髪であり小柄の女性である。小柄の少女は地面に横たわった状態の崇徳王を凝視し始め…。強烈なる目力で崇徳王を睥睨する。
「ぐっ!貴様…突然何しやがる!?」
腹立たしくなった崇徳王も茶髪の女性に睥睨し返したのである。
「あんたは敵国の刺客ね!?私の大好きな【桃子姫】姉ちゃんに手出しするなら…私は手加減しないわよ!覚悟しなさい!」
崇徳王は強気の女性に圧倒される。
「なっ!?私は別に…何も…」
『彼女…相当強気だな…彼女はひょっとして人外の鬼女なのか?』
女性は非常に強気であり崇徳王は一瞬人外の鬼女を連想したのである。すると入浴中だった桃子姫が全裸の状態で恐る恐る岩陰へと近寄り始める。
「如何しちゃったの…【胡桃姫】?一体何事かしら?」
茶髪の女性が地面に横たわった状態の崇徳王を指差したのである。
「桃子姫姉ちゃん!近寄らないで!此奴は敵国の刺客よ!此奴に近寄れば桃子姫姉ちゃんが手出しされるわよ!」
「えっ?敵国の…刺客ですって?」
突然の出来事に桃子姫は動揺し始める。
「彼が入浴中の桃子姫姉ちゃんを覗き見したのよ!」
「えっ?覗き見ですって?誰が覗き見したの?」
桃子姫は極度の鈍感なのか危機感が皆無だったのである。
「えっ…桃子姫姉ちゃん?」
『桃子姫姉ちゃん…本当に鈍感だわ…大丈夫かしら?』
桃子姫は極度の鈍感なのかのほほんとし続ける。
『桃子姫姉ちゃんは危機感が皆無だわ…』
桃子姫の様子に胡桃姫は苦笑いする。
「えっ…」
一方の崇徳王も桃子姫の様子に苦笑いし始める。
『如何やら彼女は人一倍鈍感みたいだな…人騒がせな女性だ…』
桃子姫の様子に崇徳王は内心一安心したのである。沈黙し続ける崇徳王であるが…。即座に否定したのである。
「別に私は覗き見なんて…私は敵国の刺客ではなく東国出身の夜桜崇徳王ですよ!一兵卒の身分ですが守護するべき女性には手出ししませんからね!」
「東国ですって?あんたは東国の出身者なの?」
胡桃姫は恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「私は列記とした東国の武士なのです!」
「如何して東国の武士であるあんたが…西国なんかに?」
胡桃姫は不思議そうな表情で再度崇徳王に問い掛けたのである。
「私は…」
崇徳王は彼女達に東国から西国に来訪した経緯を一部始終告白する。
「あんたは…戦乱に嫌悪感がね…」
崇徳王の事情に胡桃姫は勿論…。桃子姫も崇徳王に同情したのである。
「ですが祖国と一族を絶縁されるなんて…相当の覚悟が必要不可欠でしょうに…」
「今回の私の行為は前代未聞の愚行ですからね…罪深いのは承知ですが…何よりも私にとって祖国と一族の堅苦しい風習は重荷であり…私にとっては最大の呪縛でしたからね…正直呪縛から解放されたかったのですよ…」
すると崇徳王は満面の笑顔で…。
「ですが西国が武陵桃源なのは事実みたいですね!戦乱の世の中に…こんなにも物静かな天国が俗界に存在するのは驚愕ですよ…」
崇徳王は西国が俗界なのか認識出来なくなる。
「此処は本当に俗界なのでしょうか?天国みたいな場所ですね!」
崇徳王は武陵桃源の西国が気に入ったのか満足気に発言する。
「貴方は夜桜崇徳王様だったかしら?」
桃子姫は恐る恐る崇徳王に謝罪したのである。
「胡桃姫が勘違いしちゃったみたいで大変失礼しました!御免なさいね…」
崇徳王は謝罪する桃子姫に一瞬困惑するものの…。
「桃子姫様ですかね?気になさらないで下さいな!私なら大丈夫ですからね!」
崇徳王は満面の笑顔で返答したのである。すると胡桃姫が満面の笑顔で…。
「崇徳王様が助平なのは事実よね!あんたは入浴中の桃子姫姉ちゃんを興味深そうに覗き見したでしょう!?」
「えっ!?私は別に…」
崇徳王は揶揄する胡桃姫に苦笑いしたのである。
「何も…興味なんて!私は頂上の露天風呂が気になっただけで!」
崇徳王は苦し紛れに覗き見を否定するものの…。
「崇徳王様は…無理しちゃって!」
胡桃姫は再度揶揄する。
「胡桃姫!」
桃子姫は崇徳王を揶揄する胡桃姫に怒号したのである。
「崇徳王様に失礼でしょう!崇徳王様に謝罪しなさい!」
「御免あそばせ♪夜桜崇徳王様!」
胡桃姫は満面の笑顔で謝罪する。
「胡桃姫様…私なら気にしませんから大丈夫ですよ♪」
「崇徳王様…」
『崇徳王様は…誰よりも温厚なのね…』
桃子姫は崇徳王を人一倍温厚篤実であると感じる。
「私達は失礼しますね…崇徳王様…」
桃子姫と胡桃姫は崇徳王に黙礼すると恐る恐る村里の家屋敷へと戻ったのである。崇徳王は内心…。
『桃子姫様…天女みたいな女性だったな…』
崇徳王は桃子姫に見惚れたのである。

第三話

軍神
胡桃姫は下山中に恐る恐る…。
「桃子姫姉ちゃん?」
「何よ…胡桃姫?」
「桃子姫姉ちゃんが赤面しちゃうなんてね♪」
胡桃姫は満面の笑顔で発言する。
「ひょっとして桃子姫姉ちゃんは夜桜崇徳王様に見惚れちゃったのかしら♪」
胡桃姫は桃子姫を揶揄したのである。
「胡桃姫!別に私は!崇徳王様に恋心なんて…」
桃子姫は猛反発するものの…。
「崇徳王様が誰よりも紳士的で温厚なのは事実かしらね…崇徳王様は男前だし…」
「崇徳王様は人一倍助平だけどね!彼が誰よりも男前なのは私も同感だけど!」
「胡桃姫…助平なんて彼に失礼よ!」
桃子姫は崇徳王を助平と揶揄する胡桃姫に注意したのである。
「御免あそばせ♪桃子姫姉ちゃん♪」
胡桃姫は満面の笑顔で桃子姫に謝罪する。
「えっ!?何かしら?」
胡桃姫は突如として周辺の暗闇の自然林から無数の気配を察知したのである。
「如何したのよ?胡桃姫?」
一方の桃子姫は不安そうな様子で恐る恐る問い掛ける。
「気配だわ…人気かしら?」
「人気ですって?」
数秒後である。暗闇の自然林から四人の無頼漢達が出現したかと思いきや…。下山中の桃子姫と胡桃姫を包囲する。
「あんた達は…一体何者よ!?」
「ひょっとして彼等は夜盗かしら?」
桃子姫と胡桃姫は恐る恐る後退りしたのである。
「姉ちゃんよ!匪賊なんて失礼だな…俺達は南軍の最精鋭の最上級武士だぞ!」
匪賊の一人が冷笑した様子で自分達を南軍の最精鋭だと自称する。
「姉ちゃん達よ!殺されたくなったから大人しく俺達に有りっ丈の金品を手渡しな!姉ちゃん達だってこんな暗闇の場所では死にたくないだろう?」
「俺達だって姉ちゃん達に手出ししたくないからよ!大人しく有りっ丈の金品を手渡すなら命拾い出来るかも知れないぜ!如何するよ?姉ちゃん達!?」
匪賊達は即座に刀剣を抜刀し始める。
「今回の相手は非武装の姉ちゃん達だからな!俺達でも楽勝で打っ殺せるぜ!」
胡桃姫は匪賊達に睥睨したのである。
「あんた達…何が最精鋭の最上級武士よ!守護するべき女性に手出しするなんて…あんた達は本当に最上級の武士なの!?」
相手は自分達よりも大柄で屈強の無頼漢達であるものの…。胡桃姫は強烈なる目力により大柄の彼等に威嚇したのである。
「茶髪の姉ちゃんよ…あんたは人一倍小柄なのに随分と強気だね!其処等の兵卒達よりは勇敢だぜ!」
「俺達は南軍の最上級武士だからな!南国の女子達だったら守護するぜ!所詮姉ちゃん達は敵国の人間だから対象外なのさ!」
「大人しく金品を手渡すなら命拾い出来るが…」
「金品を手渡せないなら仕方ない!悪いが今日が姉ちゃん達の命日みたいだな!」
彼女達は彼等の発言に嫌悪する。
「あんた達…卑劣だわ!何が私達の命日よ!」
「卑劣だろうが目的を達成出来れば上等だ!」
匪賊達は失笑したのである。すると桃子姫は恐る恐る…。
「胡桃姫…私達殺されちゃうよ…」
桃子姫は極度の恐怖心により涙腺から涙が零れ落ちる。
「桃子姫姉ちゃん…」
『畜生…如何するべきなのよ?こんな奴等…私一人では対処出来ないし…』
胡桃姫と桃子姫は匪賊達に戦慄したのか恐る恐る後退りしたのである。
「一安心しな!姉ちゃん達は即刻安楽死させるからよ!」
「姉ちゃん達は一瞬で片付けるからな!覚悟しろよ!」
胡桃姫と桃子姫は覚悟する。
『もう少しだけ…長生きしなかったな…』
『私達…こんな場所で…』
胡桃姫と桃子姫が死期を覚悟した直後…。
「ぐっ!」
小柄の匪賊が何者かによって投擲された石ころにより気絶したのである。
「なっ!?何者だ!?」
突然の出来事に匪賊達は驚愕する。
「石ころだと!?一体誰が!?」
すると匪賊達の背後より…。
「ん!?貴様は一体何者だ!?」
匪賊達の背後には若齢の美青年が出現する。
「愚か者達が…」
美青年は匪賊達に睥睨したのである。
「本来なら守護するべきか弱き女性達を相手に…経世済民の武士達が多人数で二人のか弱き女性に手出しするとは言語道断だな!か弱き女性に手出しする愚か者達は私が即刻征伐するぞ!」
「なっ!?最精鋭の俺達を…愚か者だと!?」
「此奴!死にたいのか!?」
若齢の美青年に苛立ったのか匪賊達は怒号したのである。
「貴様…青二才の分際で随分と生意気だな!貴様は相当の死にたがりなのか!?」
一方の桃子姫と胡桃姫であるが…。美青年の出現に一安心したのである。
「貴方はひょっとして夜桜崇徳王様!?」
「匪賊の一人を気絶させたのはあんただったのね♪崇徳王様!」
すると匪賊の一人が恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「えっ!?夜桜崇徳王って…貴様は東国の軍神…夜桜崇徳王なのか!?」
崇徳王は匪賊の問い掛けに即答したのである。
「無論だ!私が東国の若武者…夜桜崇徳王だからな!」
「誰かと思いきや…貴様が名門の武家一族…夜桜一族の夜桜崇徳王だったとは!」
「此奴は…本物の夜桜崇徳王なのか!?」
突如として出現した若齢の武士が東国の軍神…。夜桜崇徳王である事実に匪賊達は畏怖し始める。すると巨漢の無頼漢が殺気立った様子で小柄の崇徳王を睥睨したのである。
「貴様達!こんな野郎に畏怖して如何する!?今回は俺達にとって好都合なのだぞ!俺達南軍の戦友達は東軍の荒武者達によって大勢惨殺されちまったからな!此奴に復讐するには最高の絶好機だ!」
巨漢の無頼漢が崇徳王に殺到する。
「覚悟しやがれ!夜桜崇徳王!」
「所詮は敗残兵の分際で…覚悟するのは貴様だ!」
一方の崇徳王は無表情であり即座に刀剣を抜刀したかと思いきや…。
「ぐっ!無念だ…」
崇徳王の一瞬の身動きによって巨漢の無頼漢は瞬殺されたのである。巨漢の無頼漢は多量の出血により地面に横たわる。崇徳王の超人的瞬発力と剣術に周囲の匪賊達は勿論…。桃子姫と胡桃姫も愕然とする。
『自身よりも大柄の匪賊を一撃で仕留めちゃうなんてね!崇徳王様って誰よりも勇猛果敢で男前だわ♪』
桃子姫は崇徳王の瞬発力と剣術を直視…。崇徳王に見惚れたのである。
「桃子姫姉ちゃん…」
『如何やら私は勘違いしたみたいね…夜桜崇徳王様は単なる助平ではなく正真正銘剣客だったのね…桃子姫姉ちゃんが崇徳王様に見惚れちゃうのも納得出来るわ♪』
一方の胡桃姫も崇徳王に魅了される。
「貴様達…私に殺されたくなければ即刻逃走するのだな…貴様達もこんな殺伐とした場所では死にたくないだろう?」
「ひっ!崇徳王の野郎に打っ殺されちまう!」
「畜生!逃げろ!」
「崇徳王に殺されるぞ!」
匪賊達は崇徳王に戦慄したのか一目散に逃走する。
「はぁ…一件落着だな…」
崇徳王は事態の収拾に一安心したのである。
「大丈夫でしたか?桃子姫様?胡桃姫様?」
桃子姫は崇徳王の問い掛けに満面の笑顔で即答する。
「私達なら大丈夫よ♪感謝しますね…崇徳王様♪」
「か弱き女性を守護するのはこの上なく当然の行為です!桃子姫様と胡桃姫様が御無事なのが何よりですよ!」
今度は胡桃姫が笑顔で発言したのである。
「あんたって正真正銘凄腕の剣客だったのね!誰よりも男前だし!」
「私が男前なんて…胡桃姫様は表現が非常に大袈裟ですな!」
『こんな私が男前ですって!?』
崇徳王は胡桃姫の男前発言に赤面するものの…。内心では大喜びしたのである。
「崇徳王様?」
桃子姫は赤面した表情で…。
「如何されましたか?桃子姫様?」
「崇徳王様は…私達の家屋敷で居候しない?」
「えっ!?居候ですと!?こんな私が…」
崇徳王は桃子姫の居候の一言に驚愕したのである。
「西国は全体的に閉鎖的だからね…」
「こんな見ず知らずの私が…桃子姫様と胡桃姫様の家屋敷に居候しても大丈夫なのでしょうか?」
崇徳王は内心不安に感じる。
「正直…迷惑なのでは?」
桃子姫は満面の笑顔で即答したのである。
「迷惑なんて…崇徳王様が居候するなら私は大喜びですよ!」
すると今度は胡桃姫も満面の笑顔で賛成する。
「私も桃子姫姉ちゃんと同意見よ!崇徳王様は助平だけど勇猛果敢で温厚篤実で人一倍男前だし♪是非とも居候してね!夜桜崇徳王様♪あんたが居候するなら大歓迎よ!」
「えっ…胡桃姫様…」
『助平は…一言余計だな…』
崇徳王は胡桃姫の助平発言に苦笑いするものの…。恐る恐る承諾したのである。
「承知しました♪桃子姫様♪胡桃姫様♪」
困惑した崇徳王であるが…。
『桃子姫様と胡桃姫様と居候出来るなんて♪』
内心では居住地が確保出来て一安心だったのである。

第四話

事件現場
桃子姫と胡桃姫との居候から一週間後…。安穏であった西国の村里では無数の悪霊による超常現象が頻発したのである。崇徳王は居間にて昼寝中であったが…。
「崇徳王様!大変よ!」
胡桃姫は大急ぎで居間へと入室したのである。
「うわっ!如何されましたか!?胡桃姫様!?」
崇徳王は大騒ぎする胡桃姫の様子に驚愕する。
「一体何事ですか?胡桃姫様?随分と大騒ぎの様子ですね…」
「一大事なのよ!麦畑で村人が…村人が何者かによって殺害されたらしいのよ!」
「えっ!?村人が殺害されたって!?本当ですか!?」
崇徳王は即刻胡桃姫と一緒に事件現場である近隣の麦畑へと疾走したのである。事件現場である麦畑には大勢の村人達が殺到…。現場の様子を傍観し続ける。
「村人達がこんなにも…」
『一体何事でしょうか?』
崇徳王と胡桃姫は恐る恐る現場である麦畑へと潜入…。事件現場の光景に崇徳王と胡桃姫は身震いしたのである。
「一体何が?誰がこんな…」
麦畑の中心部には無数の肉片やら腐敗した血肉が散乱する。
「ひょっとして匪賊達の…仕業かしら?」
「外傷から判断して…山中の獣類に食い殺されたのでしょうね…」
崇徳王は遺体の損傷から獣類によって捕食されたのだと予想したのである。
「人間ではこんな殺し方は出来ませんからね…」
「山中の獣類ね…」
胡桃姫は戦慄したのか全身が身震いする。すると二人の真横に位置する村人が恐る恐る発言したのである。
「此奴は恐らくだが…野良犬の悪霊の仕業だろうな…」
「えっ?野良犬の…悪霊ですと?」
崇徳王は村人の悪霊発言に反応する。
「先日の真夜中だったかな?」
目撃した村人は先日の出来事を洗い浚い告白したのである。
「俺は山奥の樹海で人間の血肉を咀嚼する野良犬の悪霊を目撃しちまってよ…周辺は暗闇だったが確実に野良犬の悪霊だって認識出来たよ…」
胡桃姫は恐る恐る目撃者である村人に問い掛ける。
「野良犬の悪霊って何よ?」
「野良犬の悪霊は…別名【邪霊餓狼】って命名される動植物の悪霊だよ…人間に打っ殺されちまった怨恨で妖怪化しちまった野良犬の化身だろうか?」
「悪霊の邪霊餓狼ですか…正体が気になりますね…」
邪霊餓狼とは無数の動植物が妖怪化…。自然界から誕生した人外の悪霊であり非常に獰猛で肉食である。邪霊餓狼は人間達によって惨殺された無数の動植物の怨恨が融合化した無念の集合体であり人間達を憎悪する。怨敵である人間が邪霊餓狼に遭遇した場合…。遭遇した人間は誰であろうと邪霊餓狼によって問答無用に食い殺される。
「殺害された村人達は野良犬の悪霊とされる邪霊餓狼によって惨殺されたのでしょうか?村人達が邪霊餓狼に惨殺されたのであれば非常に無念です…」
すると突然…。
「ん!?」
『胸騒ぎか!?』
崇徳王は極度の胸騒ぎを感じる。
「えっ…崇徳王様?」
一方の胡桃姫は崇徳王の様子に動揺し始める。
「大丈夫かしら?崇徳王様の顔色が…」
胡桃姫は突如として警戒し始めた崇徳王の様子から非常に不安がる。
「胡桃姫様…戦慄させちゃいましたね…失礼しました♪」
崇徳王は苦笑いするものの…。表情が険悪化したのである。
『私が感じるのは…ひょっとして殺気でしょうか!?』
崇徳王は険悪化した表情で恐る恐る胡桃姫を凝視したかと思いきや…。
「えっ…崇徳王様?一体何よ…」
胡桃姫は不安そうな様子で恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「胡桃姫様…ひょっとすると一大事かも知れません!」
「一大事ですって?何が一大事なのよ?崇徳王様?」
崇徳王は胡桃姫の問い掛けに恐る恐る返答する。
「先程から極度の胸騒ぎを感じるのです!胸騒ぎの正体が人間なのか人外の悪霊なのかは断言出来ませんが…西国の村里に急接近中なのは確実でしょうね!」
崇徳王の感じる殺気とは人間は勿論…。獣類とも別物であったのである。胡桃姫は恐る恐る返答する。
「ひょっとして邪霊餓狼かしら?今度も村人達の誰かを殺しに…」
崇徳王は邪霊餓狼の一言に身震いしたのである。
『邪霊餓狼…』
「邪霊餓狼の可能性は否定出来ませんね!」
崇徳王は険悪化した表情で…。
「胡桃姫様…」
「崇徳王様…何よ?」
「胡桃姫様は即刻家屋敷に戻りなされ!」
「えっ…即刻って!?崇徳王様!?」
胡桃姫は正直無茶であると感じるものの…。
『普段は温厚篤実の大仏様みたいな崇徳王様が…こんなにも仁王様みたいな表情なんてね…』
胡桃姫は崇徳王の目力に圧倒されたのである。
『如何やら今回は余程の一大事みたいね…』
胡桃姫は恐る恐る…。
「崇徳王様…無理は禁物だからね!絶対に死なないでよ!あんたが死んじゃったら私も桃子姫姉ちゃんも承知しないわよ!」
「胡桃姫様!勿論ですとも!」
崇徳王は胡桃姫の発言に即答する。
「心配せずとも私なら大丈夫ですから…」
胡桃姫は即刻自宅へと戻ったのである。
『胡桃姫様は自宅に戻られましたね…』
胡桃姫が自宅へと戻った直後…。
『私は即刻…元凶の邪霊餓狼を撃退しなくては…』
崇徳王は即座に殺気の感じる近辺の連山へと全力疾走したのである。

第五話

獣道
崇徳王は近辺に聳え立つ連山の獣道を通過中…。
『此処から殺気を感じるぞ…』
先程よりも胸騒ぎの元凶が刻一刻と急接近し続けたのである。
『獣道では一体何が発生したのか?』
すると崇徳王の背後より…。
『背後からか!?』
崇徳王は即座に背後の様子を警戒したのである。
『此奴は本物の怪物なのか!?』
崇徳王は背後の存在に一瞬現実の出来事なのか混乱する。
『こんなにも荒唐無稽の怪物が俗界に実在するなんて…』
崇徳王の背後に出現したのは満身創痍の野良犬の化身であり左脚と右側の前頭部は完全に白骨化した状態である。
『ひょっとして此奴が…』
崇徳王は出現した野良犬の化身を事件の元凶である邪霊餓狼と確信する。
『野良犬の悪霊とされる…邪霊餓狼だな…』
邪霊餓狼は血塗れの腐敗した皮膚と極度の出血により極度の悪臭は勿論…。邪霊餓狼の表情からは怨敵である人間達に対する憎悪と極度の悲痛さを感じさせられる。
『邪霊餓狼が神出鬼没の悪霊なのは確実だな!』
崇徳王は極度の恐怖心からか身震いしたのである。
『今回の敵対者は人間ではなく正真正銘神出鬼没の悪霊だからな…』
今回の相手は人外の悪霊であり一人で撃退出来るのか不安視する。
『私の〔天道金剛石〕の刀剣で邪霊餓狼を仕留められるのか?』
天道金剛石とは南国の金剛山で発掘された不朽性の鉄鉱石である。従来型の金剛石を傑出する金剛不壊さと半永久的に原物を持続し続けられる耐久性により戦乱時代では名門の武家一族のみが保有を認許される。
『相手が神出鬼没の悪霊でも…』
崇徳王にとって強大なる悪霊相手の戦闘は前代未聞であるものの…。
「邪霊餓狼よ…私が悪霊の貴様を成仏させる!」
正直人間である自身に悪霊の邪霊餓狼を対処出来るのかは断言出来ないが崇徳王は即座に天道金剛石の刀剣を抜刀したのである。一方の邪霊餓狼は刀剣を抜刀した崇徳王を睥睨し始めたかと思いきや…。崇徳王を標的に超特急で突進したのである。
『即刻とは!』
崇徳王は即座に邪霊餓狼の突進を回避する。突進を回避した崇徳王は神速の身動きで邪霊餓狼の背後に急接近…。
「成仏せよ!野良犬の悪霊!」
崇徳王は邪霊餓狼の背後から斬撃したのである。
「なっ!?」
渾身の斬撃であったが…。邪霊餓狼には寸前で回避されたのである。
『私の斬撃を回避するなんて…邪霊餓狼は想像以上の神速だ!』
崇徳王は邪霊餓狼の神速の身動きに圧倒される。すると邪霊餓狼が血塗れの全身を武者震いさせた直後…。
「ん!?」
『邪霊餓狼は一体何を!?』
邪霊餓狼は口先より超高温の火球を射出したのである。
『鬼火だと!?』
崇徳王は口先より射出された火球を即座に一刀両断…。危機一髪邪霊餓狼の火球を無力化したのである。寸前の一刀両断によって超高温の火球は両断されたものの…。
『ひょっとして妖術なのか!?』
両断された火球は崇徳王の背後にて爆散する。
『こんなにも規格外の破壊力とは…天道金剛石の刀剣ではなく凡庸の刀剣であれば確実に屈折しただろうな…』
超高温の火球を切断した影響からか天道金剛石の刀剣が火球の熱量により灼熱…。本来であれば銀色に光り輝く白刃が高熱によって赤化したのである。
「邪霊餓狼は想像以上の強敵かも知れないが…」
『こんな場所で私が邪霊餓狼に敗北すれば…西国の村里は勿論…十中八九桃子姫様と胡桃姫様が殺害されるかも知れない!』
崇徳王は如何するべきなのか混乱する。
『畜生…私は如何するべきなのか!?』
すると天空が黒雲により覆い包まれる。
「なっ!?」
『今度は黒雲だと?』
邪霊餓狼の霊気が先程よりも増大化したのである。
「邪霊餓狼から極度の殺気を感じる…」
『邪霊餓狼の霊能力なのか?』
崇徳王は天空の黒雲を恐る恐る直視する。黒雲を直視し始めてから数秒後…。黒雲の中心部から落雷が発生したのである。
「うわっ!」
落雷攻撃により黒雲から強烈なる稲光を落下させる。
『落雷なのか!?』
崇徳王は即座に邪霊餓狼の落雷攻撃を回避する。落雷攻撃には無事回避出来たものの…。落雷攻撃によって地面が半球型に陥没したのである。崇徳王は半球型に陥没した地面を直視…。
『こんな落雷が頭部にでも直撃すれば…私は確実に絶体絶命だったな…』
崇徳王は目前の光景に戦慄したのである。
『先程から…現実なのか!?何もかもが荒唐無稽過ぎるぞ!』
崇徳王は邪霊餓狼の荒唐無稽の攻撃を直視すると現実の出来事なのか混乱する。一方の邪霊餓狼は背後から崇徳王に突進するものの…。
『背後だと!?』
崇徳王は即座に邪霊餓狼の気配を察知したのである。
「邪霊餓狼!今度こそ覚悟しろ!」
背後から突進する邪霊餓狼の左辺の前脚を斬撃…。左辺の前脚を切断された邪霊餓狼は断末魔の悲鳴により地面に横たわったのである。崇徳王は恐る恐る地面に横たわった状態の邪霊餓狼へと近寄る。
「野良犬の悪霊よ…成仏するのだ!」
瀕死の邪霊餓狼を斬撃する寸前…。
『畜生が!』
邪霊餓狼の悲憤慷慨の表情を直視し続けると非常に心苦しくなる。
『即座に邪霊餓狼を仕留めなければ!西国の村里は勿論…桃子姫様と胡桃姫様が殺害されるかも知れないのに!』
すると突然…。
「愚劣なる人間よ…刀剣のみで亡者の私を敗北させるとは…貴様は傑物だな!」
虫の息であった邪霊餓狼が人間界の公用語で発語したのである。
「えっ…」
『邪霊餓狼は…人語で喋れるのか!?』
崇徳王は突如として人語で発言した邪霊餓狼に驚愕する。
「ひょっとして邪霊餓狼は…人間の口言葉で喋れるのですか?」
驚愕した崇徳王であるが…。恐る恐る邪霊餓狼に問い掛けたのである。数秒後…。邪霊餓狼は崇徳王の問い掛けに即答したのである。
「無論である…」
普通なら驚愕する場面であるものの…。崇徳王は会話の通じる相手に内心一安心したのである。邪霊餓狼は崇徳王を凝視し始め…。
「貴様は醜悪なる人間の…武士であるな…」
崇徳王は再度邪霊餓狼に問い掛ける。
「如何して邪霊餓狼は西国の村人達を襲撃するのですか!?邪霊餓狼にとって彼等は無関係なのでは!?」
邪霊餓狼は崇徳王の発言に反論する。
「奴等が無関係であると?貴様達…愚劣なる人間達の殺し合いによって自然界は汚染されたのだ!私は愚劣なる人間達によって惨殺された動植物の亡魂の集合体である!」
「邪霊餓狼が動植物の亡魂ですと?」
邪霊餓狼の正体とは人間達によって惨殺された多種多様の動植物の霊魂が融合化した悪霊の集合体とされ…。各地で戦乱を頻発させる人間達を憎悪する。
「私自身も列記とした一人の人間であり一兵卒の身分ですが…頻発し続けた戦乱の世の中を毛嫌いするからこそ武陵桃源の西国に移住したかったのです!悪霊の邪霊餓狼も私達人間によって自然界を汚染されたかも知れませぬが!西国の村人達には手出ししないと約束出来ないでしょうか!?」
崇徳王は邪霊餓狼に哀願したのである。
「武陵桃源の西国は戦乱とは程遠い場所なのです!如何しても手出ししたいのであれば…部外者である私のみに限定出来ませんか!?」
「貴様は愚か者だな…自己犠牲とは…」
邪霊餓狼は崇徳王の発言に影響されたのか霊気が弱体化する。
「貴様は武士の人間であるが非常に人格者であるな…是非とも勇猛果敢の貴様には呪詛しなければ…」
「私に呪詛ですと!?」
すると突然…。
「ぐっ!」
『全身から熱気が…邪霊餓狼の呪詛なのか!?』
体内より強烈なる熱気を感じる。
「人格者の貴様には私の呪力を分け与えた!戦乱を頻発させる大勢の極悪非道の人間達を完膚なきまでに呪殺するべし…」
「呪殺ですと!?私に邪霊餓狼の呪力で大勢の人間達を殺害しろと!?」
崇徳王は邪霊餓狼の呪力に身震いする。
「勿論である…貴様であれば出来るぞ!大勢の醜悪なる人間達を完膚なきまでに虐殺するのだ!」
崇徳王の問い掛けに返答した直後である。邪霊餓狼は衰弱化し始め…。満身創痍の肉体が白骨化したのである。
「えっ…」
全身が白骨化した邪霊餓狼の死骸からは殺気は感じられない。
『邪霊餓狼が…』
すると数秒後…。背後より桃子姫と胡桃姫が恐る恐る崇徳王に近寄り始める。
「崇徳王様!」
「崇徳王様!?大丈夫ですか?」
「桃子姫様と胡桃姫様でしたか…」
桃子姫は力一杯崇徳王に密着したのである。
「崇徳王様が無事で…無事で何よりです!」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
『桃子姫様…』
崇徳王は内心嬉しくなる。
『こんな私を心配して下さったなんて…』
崇徳王は桃子姫に満面の笑顔で…。
「ですが私にとって桃子姫様と胡桃姫様が無事なのが何よりですよ!大事件の元凶である邪霊餓狼の暴走も阻止出来ましたからね!」
「崇徳王様…」
すると胡桃姫が背後の白骨化した邪霊餓狼の存在に気付いたのである。
「崇徳王様?ひょっとして野犬の遺骨かしら?」
「此奴は邪霊餓狼の死骸ですよ…」
「邪霊餓狼の?随分巨体だけど…白骨化した野良犬みたいね…」
胡桃姫は白骨化した邪霊餓狼の死骸に恐る恐る接触する。
「えっ?」
「一体如何されましたか?胡桃姫様?」
胡桃姫は白骨化した邪霊餓狼の頭蓋骨より罅割れを発見…。罅割れの中心部からは正体不明の金属類らしき破片を発見したのである。
「何かしら?えっ…鉄屑?」
胡桃姫は恐る恐る正体不明の鉄屑を入手する。
「一体何かしら?」
崇徳王は鉄屑を凝視したのである。
「如何やら金属類の破片みたいですね…」
胡桃姫は愕然とした表情で…。
「ひょっとして火縄銃の弾丸かしら?」
すると崇徳王が恐る恐る発言する。
「ひょっとすると邪霊餓狼の正体とは…人間達によって惨殺された犬神の亡霊だったのかも知れませんね…」
犬神とは神族の一角である。崇徳王は邪霊餓狼との対話から邪霊餓狼の正体が神族の化身であると確信する。
「邪霊餓狼の正体は人間によって殺害された犬神の亡霊だったのね…」
一同は戦乱の悲劇を痛感したのである。
「崇徳王様?如何して人間達って殺し合うのかしら?」
桃子姫は無表情で発言する。
「桃子姫様…」
「桃子姫姉ちゃん…」
崇徳王と胡桃姫は困惑するものの…。
「人間とは非常に強欲で罪深き存在ですからね…結局は誰しもが強欲だからこそ大勢で殺し合えるのでしょう…こんな私自身も数週間前は罪深い彼等の一人でしたからね…」
崇徳王は気難しく発言するが数秒後に満面の笑顔で断言する。
「ですが西国は正真正銘武陵桃源です!私自身出身地の東国よりも武陵桃源の西国が大好きですよ!今回みたいに神出鬼没の無礼者が出現したとしても私は全身全霊で西国の村里は勿論!桃子姫様と胡桃姫様を守護しますからね!」
崇徳王は天空を眺望し始める。
「事件は無事に解決出来ましたからね…村里に戻りませんか?」
すると胡桃姫が満面の笑顔で発言する。
「戻りましょう!今日は祝賀会よ!」
「祝賀会ですと?一体誰の祝賀会なのでしょうか?」
崇徳王は恐る恐る問い掛ける。
「勿論崇徳王様の祝賀会よ!当然でしょう!」
「えっ…私の祝賀会ですか!?」
崇徳王は動揺し始める。
「私達は毎回崇徳王様に守護されてばかりだし!私達からも崇徳王様に精一杯恩返ししないとね!」
崇徳王は非常に困惑したのである。
「別に恩返しなんて…二人とも大袈裟ですな!」
「崇徳王様は遠慮深いのね!」
「遠慮しないで!崇徳王様!」
「生憎ですが私は別に…何も…」
崇徳王は気恥ずかしくなる。桃子姫は恐る恐る…。
「崇徳王様は梅酒とか大丈夫?」
崇徳王は即答する。
「生憎ですが…私は酒類が苦手なのです…」
「えっ…意外だね…崇徳王様…」
すると突然…。
「ぐっ!」
崇徳王は突発的に息苦しくなり卒倒したのである。
「崇徳王様!?」
「崇徳王様!?大丈夫!?」
すると地面に横たわった状態の崇徳王の身体髪膚より血紅色の発光体が無数に発生し始める。
「きゃっ!血紅色の発光体だわ!」
「一体何かしら!?」
彼女達は恐る恐る血紅色の発光体に接触するものの…。崇徳王は平然とした様子である。超常現象が発生してより数秒後…。
「えっ?桃子姫様と胡桃姫様?如何されたのですか?」
崇徳王は平常心の様子で目覚める。
「崇徳王様…大丈夫ですか?突然卒倒されて…」
桃子姫は極度の心配性であり崇徳王を気遣ったのである。
「私が卒倒ですと!?一体私に何が発生したのでしょうか?」
一方の崇徳王は自身が卒倒した事実に驚愕する。
「あんたが突然気絶しちゃったから…私達…一瞬膠着しちゃったわ…」
胡桃姫は不機嫌そうに発言したのである。
「二人とも心配させちゃいましたね…大変失礼しました…」
崇徳王は二人に謝罪する。
「崇徳王様…別に崇徳王様が謝罪しなくても…」
桃子姫は苦笑いしたのである。
「桃子姫様と胡桃姫様…即刻家屋敷に戻りましょう!極悪非道の悪霊は退治しましたから一先ずは安心ですよ!」
崇徳王は満面の笑顔で先走る。
「崇徳王様…」
無表情だった胡桃姫は崇徳王の様子に身震いしたのである。
「桃子姫姉ちゃん?」
胡桃姫は恐る恐る桃子姫に問い掛ける。
「胡桃姫…何よ?」
「彼って…悪霊の邪霊餓狼に呪詛されちゃったのかも知れないわね…」
胡桃姫は超常現象やら超自然関連の神秘学が人一倍大好きであり独力で神秘学を勉学したのである。
「崇徳王様が邪霊餓狼に…呪詛ですって?」
「桃子姫姉ちゃんも肉眼で認識したでしょう?血紅色の発光体を…」
「血紅色の発光体…」
桃子姫は気味悪くなったのか全身が身震いする。
「崇徳王様は邪霊餓狼の怨恨に憑霊されちゃったのよ…」
「崇徳王様が邪霊餓狼の怨恨に憑霊されたって?」
桃子姫は胡桃姫の発言に困惑し始める。
「現段階では断言は出来ないけれども…今後私達も彼に…崇徳王様に殺されちゃうかも知れないわ…」
崇徳王の暴走を不安視する胡桃姫に桃子姫は猛反発したのである。
「胡桃姫!崇徳王様に失礼よ!彼が…誰よりも温厚篤実の崇徳王様が私達に手出しするなんて荒唐無稽だわ!」
「桃子姫姉ちゃん!大昔の伝承では自然界の悪霊を征伐した人間が悪霊に憑霊されて…大勢の村人達を殺戮したのよ…」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
「崇徳王様は…」
「桃子姫姉ちゃん…」
胡桃姫は恐る恐る桃子姫に接触…。
「現時点では大丈夫かも知れないけれども…金輪際崇徳王様とは注意深く接触しましょう…崇徳王様の肉体に憑霊した悪霊の呪力が私達に手出しするのか如何なのかは断言出来ないけれどね…」
「胡桃姫…」
桃子姫は極度の不安からか冷静に思考出来なくなる。

第六話

心配事
邪霊餓狼の出現から三日後の出来事である。桃子姫は暇潰しに西国の中心部に位置する精霊故山へと移動中…。
「えっ?」
摩訶不思議なる薫風と虹色に発光する広葉樹に魅了されたのである。
『何かしら?』
彼女は恐る恐る虹色の広葉樹へと近寄る。
「ひょっとして霊木かしら?」
『摩訶不思議の異世界みたいだわ…こんな世界が存在するなんてね…』
桃子姫は無我夢中に広葉樹の表面へと恐る恐る接触したのである。
「えっ…」
すると直後…。
『何かしら?突然…』
桃子姫は強烈なる睡魔によって熟睡したのである。
『眠気が…』
桃子姫が熟睡し始めた同時刻…。家屋敷にて昼寝中だった崇徳王は恐る恐る胡桃姫の自室へと入室する。
「胡桃姫様…失礼します…」
「崇徳王様…何かしら?」
「胡桃姫様?桃子姫様は出掛けられたのですか?」
「桃子姫姉ちゃんなら暇潰しに登山中よ♪」
「桃子姫様は登山中でしたか…」
崇徳王は桃子姫に対面したくなる。
「彼女が暇潰しに出掛けたのであれば…私も暇潰しに…」
すると胡桃姫は険悪化した表情で恐る恐る…。
「崇徳王様…桃子姫姉ちゃんには絶対に手出ししないでよ!」
「えっ…」
崇徳王は赤面し始める。
「胡桃姫様!私は別に桃子姫様に手出しなんて…」
胡桃姫は崇徳王の返答に赤面した表情で恐る恐る…。
「崇徳王様は人一倍助平だから…桃子姫姉ちゃんに何を仕出かすか…」
「なっ!?」
崇徳王は胡桃姫の発言に気分が消沈したのである。
『私って…胡桃姫様にとって人一倍助平なのかな?』
すると胡桃姫は身震いし始め…。不安そうな表情で恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「崇徳王様?気分は大丈夫かしら?気味悪くない?」
「気味悪いって?別に私は何も気味悪くないですよ♪胡桃姫様♪」
崇徳王は満面の笑顔で即答したのである。
「ですが突然如何されたのですか?胡桃姫様?ひょっとして心配事でも?」
問い掛けられた胡桃姫は恐る恐る…。
「先日の出来事だけど崇徳王様は…邪霊餓狼を仕留めた直後に卒倒しちゃったから大丈夫かなって?正直私は崇徳王様の調子が心配で不安だったのよ…」
「胡桃姫様…」
『胡桃姫様♪こんな私なんかを心配して下さったとは!』
崇徳王は自身を心配する胡桃姫に内心大喜びする。
「胡桃姫様は極度の心配性なのですね!私なら大丈夫ですよ!」
崇徳王は胡桃姫に揶揄したのである。
「なっ!?」
胡桃姫は赤面し始める。
「誰があんたの心配なんか!桃子姫姉ちゃんが不必要に崇徳王様を心配するからよ!別に私自身はあんたなんか!」
胡桃姫は赤面した表情で全否定する。
「私なら胡桃姫様が気にされなくても大丈夫ですよ!意気衝天こそが私にとって唯一の美点ですから!」
「意気衝天ね…崇徳王様らしいわね…」
断言する崇徳王に胡桃姫は苦笑いしたのである。数秒後…。
「私は即刻出掛けますね…」
「崇徳王様…」
崇徳王は即座に出掛ける。
『崇徳王様は本当に大丈夫なのかしら?』
胡桃姫は崇徳王の様子が気になるのか心配したのである。
「心配だわ…崇徳王様…」
胡桃姫は気疲れする。

第七話

世界樹
一方の崇徳王は周辺の農村を眺望したのである。
『桃子姫様の居場所は一体…』
すると突然…。
「えっ?」
『精霊故山の自然林から果実の薫風が…一体何だろうか?』
崇徳王は果実の薫風を目印に精霊故山へと直行したのである。
「えっ…」
すると精霊故山の自然林より地面に横たわった状態の女性を発見する。
『女性か!?』
女性は桃色の着物姿だったのである。
『彼女は…』
崇徳王は即座に地面に横たわった状態の女性に恐る恐る近寄る。
「桃子姫様!?」
地面に横たわった状態の女性とは誰であろう桃子姫だったのである。崇徳王は身震いした様子で桃子姫に接触したのである。
「桃子姫様!?大丈夫ですか!?桃子姫様!?」
数秒後…。桃子姫は地面に横たわった状態から恐る恐る目覚める。
「えっ…崇徳王様?如何してこんな場所に崇徳王様が?」
「桃子姫様…一瞬驚愕しましたよ…大丈夫ですか?」
「何かしら?私は…如何しちゃったの?」
「はぁ…桃子姫様…」
桃子姫は多少寝惚けた様子であったが崇徳王は桃子姫の様子に一安心する。
「崇徳王様…」
桃子姫は心配性の崇徳王に微笑んだのである。
「崇徳王様は極度の心配性なのね♪崇徳王様が心配しなくても私なら大丈夫よ♪」
「桃子姫様…」
「崇徳王様…汗水が…」
崇徳王は極度の緊張感により前額部から大量の汗水が出始める。
「えっ?」
崇徳王は流れ出る大量の汗水に赤面したのである。
「失礼しました!桃子姫様!」
すると桃子姫が恐る恐る背後を凝視し始める。
「えっ…摩訶不思議の広葉樹は?」
「えっ?摩訶不思議の広葉樹ですと?桃子姫様?」
「虹色の広葉樹は…無くなっちゃったのかしら?ひょっとして先程の光景は私自身の幻覚だったのかしら?」
「虹色の広葉樹ですって?」
崇徳王は虹色の広葉樹に反応したのである。
「桃子姫様…」
崇徳王は恐る恐る発言する。
「先程の出来事ですが…私が精霊故山に到達出来たのは果実の薫風…ひょっとすると虹色の広葉樹とは世界樹として認識される妖星巨木なのかも知れませんね…」
「世界樹の妖星巨木ですって?」
崇徳王は空覚えであるものの…。桃子姫に妖星巨木の伝承を説明したのである。
「妖星巨木とは森羅万象の造物主ですよ…大昔の伝承やら各文献では世界樹として有名ですね…」
「森羅万象の造物主?世界樹ですって?」
「霊気やら神通力やら…摩訶不思議の広葉樹だと認識されますね…噂話では各村落の辺境地で出現するらしいのですが…崇徳王様が神出鬼没の妖星巨木に遭遇されたのは運命なのかも知れませんよ…」
「私が遭遇した妖星巨木は本物の世界樹なのね…」
すると桃子姫は突発的に崇徳王の腹部に力一杯密着する。
「桃子姫様!?一体如何されましたか!?」
力一杯密着し始めた桃子姫に崇徳王は驚愕したのである。
「桃子姫様…」
崇徳王は恐る恐る桃子姫の表情を直視…。
「桃子姫様…大丈夫ですか?」
桃子姫の涙腺から涙が零れ落ちる。
「崇徳王様…」
「如何されましたか?桃子姫様?」
桃子姫は恐る恐る…。
「崇徳王様は…絶対に私と胡桃姫に手出ししないよね?絶対に私達姉妹を殺さないって約束出来るわよね?」
崇徳王は桃子姫の突発的発言に困惑する。
「えっ!?私が桃子姫様と胡桃姫様に手出しですって!?突然如何されたのですか!?桃子姫様…貴女は一体何を心配して!?」
「胡桃姫が…胡桃姫がね…」
「胡桃姫様ですと?胡桃姫様が如何されましたか?」
桃子姫は一部始終崇徳王に告白したのである。
「桃子姫様と胡桃姫様は邪霊餓狼の呪力の悪影響で…私が桃子姫様と胡桃姫様に手出しするのではと心配されたのですね…」
『ひょっとして近頃…胡桃姫様が極度に私の様子を心配されたのは…邪霊餓狼の呪力が主原因だったのか!?』
崇徳王は胡桃姫が極度に自身を心配した理由を納得する。
「桃子姫様…桃子姫様が不用意に危惧されなくても私なら大丈夫ですよ!」
崇徳王は桃子姫に満面の笑顔で断言したのである。
「私が邪霊餓狼の呪詛なんかで桃子姫様と胡桃姫様に手出ししませんからね!最悪手出しするのなら私は私自身で自害する覚悟ですから!一安心しなされ!」
桃子姫は満面の笑顔で断言する崇徳王に一安心する。
『崇徳王様…』
すると桃子姫は満面の笑顔で…。
「崇徳王様♪」
「如何されましたか?桃子姫様…」
「崇徳王様♪私と一緒に…」
桃子姫は赤面する。
「天辺の露天風呂で私と混浴しないかしら?折角の機会だし♪」
「えっ!?」
『私が桃子姫様と混浴ですって!?』
崇徳王は桃子姫の衝撃的発言に困惑したのである。
「桃子姫様が…私みたいな人間なんかと混浴しても大丈夫なのですか?」
崇徳王は桃子姫の混浴の一言によって非常に困惑するものの…。一方の桃子姫は満面の笑顔で即答する。
「勿論私は大丈夫よ♪相手が崇徳王様なら一緒に混浴しても…胡桃姫には秘密にするからね♪」
「ですが混浴する相手が私なんかで本当に大丈夫なのでしょうか?」
崇徳王は極度に不安がったのである。
『私と桃子姫様が混浴する光景を胡桃姫様に目撃されれば…私が助平だって大騒ぎしそうですね…』
一方の桃子姫は心配性の崇徳王に笑顔で断言する。
「崇徳王様だからこそ一緒に混浴したいのよ…遠慮しないでね♪崇徳王様♪」
「桃子姫様が平気なら一安心ですね…」
崇徳王と桃子姫は露天風呂へと移動したのである。

第八話

熱願
崇徳王と桃子姫は一息すると精霊故山の天辺へと到達出来…。二人は恐る恐る石造りの露天風呂にて混浴したのである。
『桃子姫様と混浴出来るなんて!空前絶後の夢物語みたいですね!胡桃姫様に目撃されたら大目玉でしょうが…』
崇徳王は桃子姫との混浴に内心大喜びする。すると桃子姫は恐る恐る崇徳王に近寄り始める。
「崇徳王様…」
桃子姫は力一杯崇徳王に密着したのである。
「桃子姫様!?突然如何されたのですか!?」
崇徳王は全裸の状態の桃子姫に密着され…。
『桃子姫様の素肌が…』
崇徳王は気恥ずかしくなる。一方の桃子姫は表情が赤面し始め…。
「崇徳王様♪私は…私は崇徳王様が…」
桃子姫は一息した直後である。
「崇徳王様が大好きなの…」
桃子姫の一心不乱の恋心に一瞬膠着化するものの…。
「私だって桃子姫様が大好きですよ!」
崇徳王は満面の笑顔で返答する。
「崇徳王様♪」
桃子姫は大喜びの様子であり涙腺から涙が零れ落ちる。
『私は人一倍福運だったわ…私にとって夜桜崇徳王様は運命の男性だったのかも知れないわね…』
大喜びした桃子姫であるが…。直後である。
「ぐっ!」
桃子姫は突発的に吐血し始める。
「えっ!?桃子姫様!?大丈夫ですか!?」
「崇徳王様…」
桃子姫は悲痛の表情で恐る恐る崇徳王を凝視する。
『桃子姫様…』
崇徳王は恐怖心からか身震いしたのである。
「桃子姫様…如何してこんな!?」
一方の桃子姫は悲痛の表情で…。
『今迄秘密にしたのに…』
「崇徳王様…御免なさいね…私は…幼少期から…人一倍病弱だったのよ…」
桃子姫は落涙した表情で崇徳王に謝罪したのである。
「病弱ですと!?」
『如何して桃子姫様は秘密に!?』
崇徳王は一瞬腹立たしくなるものの…。
『桃子姫様…』
桃子姫の表情を直視し続けると悲痛に感じるのか沈黙したのである。
「私は疫病で…近頃吐血が増悪しちゃったのよね…」
「桃子姫様が疫病だったなんて…」
崇徳王は桃子姫に同情するものの…。
「桃子姫様にとっては非常に辛苦なのかも知れませんが…胡桃姫様には疫病である事実を相談されなかったのですか?」
崇徳王は恐る恐る桃子姫に問い掛ける。
「胡桃姫にも相談出来なかったのよ…」
「如何して彼女に相談出来なかったのですか?」
桃子姫は再度涙腺から涙が零れ落ちる。
「私が疫病神だって…胡桃姫に毛嫌いされたくなかったからよ…」
「ですが即刻胡桃姫様に相談しなければ…胡桃姫様が疫病を理由に桃子姫様を疫病神なんて毛嫌いしませんよ!」
崇徳王は必死に桃子姫に説得するものの…。
「私は疫病神だって毛嫌いされるわよ…」
桃子姫は納得しない。
「はぁ…」
『桃子姫様は人一倍頑固ですね…彼女を説得するのは不可能なのか…』
内心桃子姫を人一倍頑固であると感じる。
「私は恐らく…長生き出来ないでしょうね…」
「桃子姫様…」
すると桃子姫は崇徳王に熱願する。
「私は赤ちゃんを出産したいのよ…」
「なっ!?出産ですって!?」
崇徳王は桃子姫の熱願に驚愕したのである。
「こんなにも病弱なのに出産なんて…桃子姫様は正気なのですか!?」
崇徳王は内心桃子姫の願望に困惑する。
『桃子姫様は出産以前に自身の生命が危険かも知れないのに…』
一方の桃子姫は本気の様子であり即答したのである。
「崇徳王様…勿論…私は正気よ…私自身長生き出来ないからね…」
「桃子姫様…」
崇徳王は混乱するものの…。
『桃子姫様は本気だな…此処で私が…誰が説得したとしても彼女は納得されないでしょうね…』
「承知しました…桃子姫様♪」
崇徳王は不本意であるが笑顔で桃子姫の願望に承諾したのである。崇徳王は笑顔で桃子姫の意向に承諾するのだが…。内心では非常に心苦しくなる。
『ですが桃子姫様が病弱だったなんて…桃子姫様は長生き出来ないのか?』
崇徳王は長生き出来ない桃子姫に涙腺から涙が零れ落ちる。

第九話

忍者部隊
自然界の悪霊とされる邪霊餓狼との戦闘から五日後の真昼…。
「はぁ…」
胡桃姫は気分転換に西国の村里郊外を一人で散歩したのである。
『最近は毎日が憂鬱なのよね…』
胡桃姫は崇徳王の様子が非常に気になり異変が発生しないか四六時中警戒する。
「はぁ…」
『一日中疲れちゃうわね…』
近頃は夜中も一睡も出来ず不眠症に苦悩したのである。
『崇徳王様…最近は崇徳王様の様子が気になって夜中も眠れないのよね…』
今後の生活が不安に感じられ…。如何するべきなのか当惑したのである。
『今後は如何しましょう?』
胡桃姫は自宅に戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
『人気だわ…』
周辺の自然林より無数の人気を感じる。
『一体…何かしら?』
胡桃姫は警戒した様子で恐る恐る疾走したのである。
「即刻家屋敷に戻らないと…」
『崇徳王様と桃子姫姉ちゃんが私を心配しちゃうわよね…』
胡桃姫は必死に全力疾走するのだが…。背後より何者かが鉄砲で発砲したのである。背後からの銃撃により一発の銃弾が胡桃姫の右足に命中する。
「ぎゃっ!」
胡桃姫は右足を銃撃され…。地面に横たわったのである。
「ぐっ!」
地面には大量の鮮血が流れ出る。
『一体何が!?銃弾かしら!?』
すると地面に横たわった状態の胡桃姫の周辺より…。
『彼等は何者なの!?』
頭巾と黒服の無頼漢達が地面に横たわった状態の胡桃姫の周辺を包囲したのである。
「如何やら此奴は西国の女子みたいだな!」
「こんな片田舎の村里で天女みたいな可愛らしい女子に遭遇出来るなんて!俺達は相当幸運だな!」
「即刻拠点に戻ろうぜ!此奴の美貌なら高値で密売出来るぞ!」
胡桃姫は重苦しい様子で…。
「あんた達…一体何者なのよ?」
『高値で密売って…私を如何するのかしら!?』
重苦しい様子で問い掛ける胡桃姫に彼等は冷笑した様子で即答したのである。
「俺達が何者かって?俺達は北軍最強の少数精鋭…忍者部隊だよ!」
忍者とは基本的に諜報活動は勿論…。要人の暗殺が主体であるが北国の忍者部隊は戦闘に特化された戦闘集団であり装備も通常の足軽集団をも上回る。
『彼等は忍者部隊ですって?』
胡桃姫は再度彼等に問い掛ける。
「如何して北軍の忍者部隊が…武陵桃源の西国なんかに…あんた達は私を…如何するのよ?」
火縄銃を所持する忍者が胡桃姫の問い掛けに返答したのである。
「如何するかって!?俺達はあんたみたいな容姿端麗の小娘を連行して…異国に高値で身売りするのさ!」
「えっ…」
『私を…身売りですって!?』
胡桃姫は身売りの一言に畏怖し始める。
「私を異国に身売りですって?如何して私なんかを異国に?」
近年北国は東国との戦闘で大敗北…。戦力が大幅に低下したのである。
「俺達に遭遇しちまったあんたは不運だったのさ!悪いが北国を救済するにはあんたの犠牲が必要不可欠なのさ!」
彼等は低下した戦力の回復を名目に各村落の女子達を異国の商人達に高値で密売…。大量の武器やら食糧品を交換したのである。
「えっ…北国の…救済ですって?」
『私を高値で密売してから…私は異国に…』
胡桃姫は彼等の思惑に絶望する。
「安心しろ…本拠地に戻れば薬草で治療するからよ!何しろあんたは正真正銘天女だ…こんな大怪我した状態では異国に身売りさせられないからな!」
「俺達は姉ちゃんには手出ししないからな…安心しろよ!」
刀剣を所持した忍者が地面に横たわった状態の胡桃姫に近寄る。
「兎にも角にも…あんたは安眠しな!こんな場所で大騒ぎされちまうと面倒だからな!一先ずは…」
「ぐっ!」
刀剣の柄頭で彼女の背中を打撃すると胡桃姫は気絶したのである。
「小娘は気絶しただろうか?」
彼等は胡桃姫が気絶したか確認する。
「大丈夫そうだ…如何やら小娘は気絶したみたいだな…」
「俺達は本拠地に戻ろうぜ!近隣の村人達に遭遇すると非常に面倒臭いからな…」
北軍の忍者部隊は気絶した胡桃姫を背負った状態で西国の郊外から一目散に撤退したのである。

第十話

蛮声
北軍の忍者部隊が撤退した同時刻…。散歩から戻った崇徳王は家屋敷の居室へと移動したのである。
「崇徳王様?散歩から戻ったのね…」
「桃子姫様?」
崇徳王は恐る恐る桃子姫に問い掛ける。
「何かしら?崇徳王様?」
「胡桃姫様は如何されましたか?」
「えっ?胡桃姫ですって?胡桃姫なら先程散歩に出掛けたわよ…」
「胡桃姫様は散歩だったのですね…」
すると桃子姫が恐る恐る…。
「如何しちゃったの?崇徳王様?崇徳王様が胡桃姫の居場所を気にするなんて…」
「別に…単純に胡桃姫様は如何されたのかなって…」
崇徳王は苦笑いしたのである。
「彼女の様子が気になっただけですよ…」
崇徳王は苦笑いした様子で即座に居室から退室する。
『先程から胸騒ぎを感じるな…方角は北方みたいだが?』
崇徳王は北方の山里から不吉の気配を複数感じる。
『北方では一体何が発生したのか?気になるな…』
複数の気配が気になった崇徳王は即座に北方の方角へと移動したのである。北方の方角へと通ずる山道へと到達…。
「なっ!?」
山道の地面より血痕を発見したのである。
『こんな道端に血痕なんて!』
「誰かが大怪我したのだろうか!?」
直後…。
「ん!?」
周辺の自然林より複数の殺気を感じる。
『殺気だと!?』
崇徳王は複数の殺気に警戒したのである。
『殺気の正体は恐らく人間だな…相手は恐らく匪賊だろうか?』
殺気の正体は人間であり匪賊達であると察知する。数秒後…。
「ん?」
突如として八人ものとある奇怪集団が出現したのである。
「貴様達は容姿から判断して…匪賊達か?」
正体不明の奇怪集団は崇徳王を包囲する。
『随分と統率された身動きだな…ひょっとして彼等は!?』
奇怪集団の彼等は頭部に頭巾が確認出来…。黒服の装束集団であり彼等は忍者集団であると認識したのである。
『装束から判断して…彼等は敵国の忍者部隊みたいだな!』
崇徳王は彼等に睥睨した表情で…。
「貴様達は…一体何者だ!?」
八人の忍者集団は崇徳王の問い掛けに返答する。
「俺達は北軍最強の忍者部隊だよ…俺達を匪賊として扱おうとは失礼だな!」
「貴様は東国の軍神…夜桜崇徳王だな?」
「こんな場所で東国の軍神と遭遇しちまうとは…奇遇だな!」
対する崇徳王は再度忍者部隊に問い掛ける。
「北軍の忍者部隊が武陵桃源の西国で一体何を?」
すると鎖鎌を所持する忍者が失笑した様子で…。
「事情を知りたければ…俺達を仕留めるのだな!軍神の崇徳王様よ!」
「無論…貴様一人で俺達を仕留められるかな?」
一方の崇徳王は失笑する彼等に力強く睥睨したのである。
「忍者風情が…」
崇徳王は非常に彼等の態度に腹立たしくなる。
「止むを得ないな…であれば実力行使だ!」
即座に天道金剛石の刀剣を抜刀し始める。
「崇徳王は刀剣を抜刀しやがったか!此方も止むを得ないな!」
崇徳王が刀剣を抜刀すると忍者部隊は警戒したのである。
「狼狽えるな!忍者は忍者でも…俺達北軍の忍者部隊は其処等の忍者集団とは別格なのだぞ!」
大柄の忍者が自分達を別格であると豪語する。
「全員で軍神の夜桜崇徳王を打っ殺せ!」
「仕方ないか…貴様が実力行使であれば此方も実力行使だ!」
「各自!一先ず分散するぞ!」
彼等は神速の身動きで周囲の自然林へと雲隠れしたのである。
「奴等は…雲隠れしたのか!?」
『忍者らしい行動だが…』
一方の崇徳王は完全に四面楚歌…。圧倒的に不利の状態だったのである。
『四面楚歌だな…』
崇徳王は忍者部隊の攻撃に警戒する。
『奴等は!?』
警戒し始めてから数秒後である。雲隠れした忍者部隊は四方八方の自然林から鋼鉄の手裏剣を投擲し始め…。四方八方から崇徳王に攻撃を仕掛けたのである。
『四方八方から手裏剣か!?』
崇徳王は即座に天道金剛石の刀剣で鋼鉄の手裏剣を斬撃…。鋼鉄の手裏剣は左右に両断されたのである。
「なっ!?崇徳王の野郎は鋼鉄の手裏剣を両断しやがったぞ!」
忍者部隊は刀剣で手裏剣を両断した崇徳王に驚愕する。
「各地の噂話では…崇徳王は百人力の兵卒と豪語されるが…」
『如何やら此奴の噂話は本当みたいだな…』
崇徳王の実力に忍者部隊は一瞬畏怖したのである。すると直後…。
「ぐっ!」
崇徳王に異変が発生したのである。
『全身から熱気が…一体何が!?』
崇徳王は体内の極度の熱気により地面に横たわる。
「ん?如何した!?崇徳王の様子が可笑しいぞ!」
「身動きしなくなったぞ!崇徳王を仕留められる絶好機だな!」
彼等は崇徳王を殺害出来る絶好機に大喜びする。
「崇徳王の野郎は一体何を!?恐怖心で可笑しくなったのか!?」
一方地面に横たわった状態の崇徳王であるが…。
『夜桜崇徳王…夜桜崇徳王よ!』
『誰だ?一体誰なのだ?誰かが…私の脳裏に…』
何者かの蛮声が彼自身の脳裏に響き渡る。
『夜桜崇徳王よ…周囲の者達を…死滅させろ…周囲の者達を死滅させるのだ!貴様自身の呪力で…卑劣なる人間達を…完膚なきまでに死滅させるのだ!貴様の呪力で周囲の者達を惨殺せよ!完膚なきまでに奴等を惨殺するのだ!夜桜崇徳王!』
崇徳王は自身の脳裏に響き渡る蛮声に返答する。
『貴様は一体何者だ!?如何して私の脳裏に?』
崇徳王が蛮声に問い掛けると蛮声は即答したのである。
『私が何者だって?私は…先日貴様によって惨殺された…自然界の悪霊…邪霊餓狼とでも…』
蛮声の正体とは先日退治した野良犬の悪霊…。邪霊餓狼の呪力だったのである。
『貴様は…邪霊餓狼だと!?』
崇徳王は蛮声の正体が邪霊餓狼の呪力である事実に驚愕する。
『貴様はこんな場所で死にたくなければ…一人でも大勢の人間達を殺害するのだ!軍神の貴様なら出来るよな?夜桜崇徳王…死にたくなければ人間達を完膚なきまでに惨殺するのだ!貴様とてこんな場所では死にたくないだろう?軍神…夜桜崇徳王よ!』
問い掛けられた崇徳王は沈黙し続けたのである。
『崇徳王…貴様なら出来るぞ!死滅させろ…大勢の人間達を!自身の呪力で死滅させるのだ!貴様なら出来る…夜桜崇徳王よ!』
直後…。邪霊餓狼の呪力の影響からか血紅色の霊気が地面に横たわった状態の崇徳王の肉体を覆い包んだのである。
「ん!?彼奴!?」
「なっ!?一体何が…崇徳王の野郎は妖怪化しやがったのか!?」
「崇徳王は本物の物の怪なのか!?」
崇徳王の身体髪膚を覆い包んだ霊気は肉眼でも直視出来る。崇徳王の体内から発生した血紅色の霊気に北軍の忍者達は畏怖したのである。
「此奴は危険だ!全員!撤退するぞ!即刻撤退だ!」
自分達では対処出来ないと察知した大柄の忍者は周囲の忍者達に大声で撤退を合図するのだが…。彼等に異変が発生する。
「なっ!?」
突如として七人の忍者達の頭部が肥大化し始めたのである。彼等の頭部が肥大化した数秒後…。
「ぎゃっ!」
肥大化した頭部が呪力により破裂したのである。周辺の地面には大量の鮮血と肉片が飛散する。
「大丈夫か!?返事しろ!」
小柄の忍者が七人の仲間達に問い掛けるものの…。誰一人として仲間達からの返事は皆無である。
『一体何が発生した!?』
「何故…誰も返事しないのか!?」
同時刻…。
『崇徳王!外部の奴等を全員殺害せよ!一人だ…一人だけだぞ!極悪非道の人間を完膚なきまでに殺害するのだ!』
崇徳王の脳裏では只管邪霊餓狼の蛮声が人間達の殺害を指示し続ける。
『軍神崇徳王よ…奴等を殺さなければ貴様が惨殺されるのだぞ!殺害せよ…殺害せよ!夜桜崇徳王!貴様の呪力で大勢の人間達を完膚なきまでに呪殺するのだ!』
沈黙し続けた崇徳王であるが…。大声で怒号したのである。
『沈黙しやがれ!極悪非道の悪霊風情が!私に命令するな!』
『貴様は…私に反抗出来るとは!?貴様は扱い辛いな…夜桜崇徳王!貴様を誘導するには…一筋縄では不可能であるな!』
崇徳王が心中で怒号すると邪霊餓狼の蛮声が消失したのである。同時に崇徳王の体内から発生した血紅色の霊気も完膚なきまでに消滅する。
『先程の超常現象は…一体?』
崇徳王は正気に戻ったのである。
『私は邪霊餓狼の呪力に…誘導されたのか?』
一方唯一無事だった小柄の忍者は怪死した忍者部隊の頭領の死骸を直視…。
「ひっ!」
極度の恐怖心からか全身が膠着したのである。
『如何してこんな状態に?』
「一体何が発生した!?」
背後より何者かが自身の背中に接触する。
「うわっ!」
背後に存在するのは誰であろう崇徳王だったのである。
「ひっ!其方は!?」
小柄の忍者は崇徳王の存在に畏怖する。
「其方は夜桜崇徳王!?如何して其方がこんな場所に!?」
崇徳王は小柄の忍者を睥睨したのである。
「貴様は…私に殺されたくなければ此処で何が発生したのか洗い浚い説明しろ!返答次第では貴様を斬首するぞ!」
崇徳王は小柄の忍者に恫喝…。一方の小柄の忍者は極度の恐怖心からか全身が身震いしたのである。
「ひっ!」
畏怖した小柄の忍者は小声で返答する。
「俺にも…何が何やら不明だよ!突然仲間達の悲鳴が!」
「悲鳴だと!?何故…貴様の仲間達が悲鳴を!?」
「何故って俺が知りたいよ!物の怪の仕業だろうか?」
「物の怪だって?」
崇徳王は頭部の破裂した忍者の遺体を直視したのである。
「えっ…」
『如何してこんな状態に!?此処で一体何が!?』
崇徳王は目前の惨劇に身震いし始め…。
『此奴はひょっとして…邪霊餓狼の呪力なのか!?』
邪霊餓狼の呪力に戦慄したのである。
「邪霊餓狼の…呪力なのか?」
崇徳王は邪霊餓狼の呪力に身震いし始める。
「えっ?崇徳王?邪霊餓狼って?」
小柄の忍者は恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「ひょっとすると今後…」
『邪霊餓狼の呪力が発動すれば桃子姫様は勿論…胡桃姫様を…私が彼女達を呪力で呪殺するかも知れないのか!?』
崇徳王は想像するだけで自身の呪力に恐怖したのである。
『崇徳王の様子…逃げられそうだな…』
一方小柄の忍者は恐る恐る周囲を警戒…。
「俺は…退避して…」
小柄の忍者は逃走し始める。
「なっ!?貴様!?」
崇徳王は逃走する小柄の忍者を即座に捕捉したのである。
「貴様!?死にたくなければ洗い浚い白状しろ!」
「ひっ!殺さないで!」
「貴様達は一体何が目的で西国の村里に潜入したのだ!?返答次第では貴様を惨殺するぞ!」
問い掛けられた小柄の忍者は恐る恐る…。
「近頃北国は東軍との合戦で戦力を消耗したから各地の女子達を連行して…異国に身売りさせ…大儲けする予定だったのさ…」
小柄の忍者は北国の悪事を洗い浚い口述したのである。
『か弱き女性達を異国の商人達に高値で身売りだと!?』
小柄の忍者の説明から崇徳王は極度の怒気によって全身が身震いし始める。
「貴様!か弱き女性達を異国の商人達なんかに身売りさせるとは言語道断だな!」
崇徳王は睥睨した表情で再度…。
「ひょっとして貴様達は西国の村里でも若齢の女性を本拠地に連行したのか!?」
小柄の忍者は恐る恐る返答する。
「西国では橙色の…着物姿の小娘を…一人だけ…」
「橙色の着物姿の小娘って…」
崇徳王の脳裏には胡桃姫以外には該当しない。
『ひょっとして胡桃姫様か!?彼女以外には…』
先程から感じる崇徳王の胸騒ぎの正体が判明したのである。
「貴様達によって連行された…橙色の着物姿の女性は無事だろうな!?」
「多分…小娘は大丈夫だ!左足を火縄銃で怪我しちまったが…」
「左足を怪我だと!?貴様!女性に大怪我させたのか!?」
崇徳王は小柄の忍者に怒号すると小柄の忍者の頭部を力一杯殴打…。
「ぎゃっ!」
頭部を殴打された小柄の忍者は地面に横たわったのである。
「ぐっ!小娘は多分大丈夫だ…死んじまったら異国に身売り出来なくなるから…小娘は殺さない程度に…」
すると崇徳王は無表情で…。
「最悪の場合…橙色の着物姿の女性が失血死すれば…今度こそ貴様を打っ殺すから覚悟しろよ…絶対だからな!逃亡しても私は呪力で未来永劫貴様を呪詛し続けるからな!」
「ひゃっ!」
小柄の忍者は極度の恐怖心により涙腺から涙が零れ落ちる。崇徳王は再度小柄の忍者に問い掛ける。
「貴様達の本拠地は?貴様等の悪巧みは無視出来ないからな!」
「俺達の…本拠地は…」
小柄の忍者は洗い浚い自分達の本拠地を告白する。

第十一話

救出
同時刻…。北国の国境に位置する忍者部隊の本拠地では彼等に連行された胡桃姫が地下壕の牢獄に閉じ込められる。
「えっ…」
胡桃姫は気絶した状態であったが恐る恐る目覚める。
「私は…此処って?」
恐る恐る目覚めると周囲には五人の若齢の女性達が確認出来る。すると一人の村娘が恐る恐る…。
「貴女…大丈夫かしら?如何やら貴女も悪者の忍者達に連行されたのね…」
「えっ?忍者達ですって?」
胡桃姫は周囲の様子を直視したのである。
「あんた達も悪者の忍者に連行されたの?」
胡桃姫は恐る恐る周囲の者達に問い掛ける。
「勿論よ…私は散歩中に奴等に遭遇しちゃって…」
「私も北国の忍者達に連行されちゃったの…不運よね…」
村娘の涙腺から涙が零れ落ちる。隅っこの少女が恐る恐る胡桃姫の左足を直視…。
「姉ちゃん…大丈夫?左足…大怪我しちゃったみたいね…」
「大丈夫よ…火縄銃で銃撃されちゃったけど単なる掠り傷だから…私は平気よ!」
胡桃姫は満面の笑顔で返答する。
「掠り傷なのかな?」
胡桃姫の着物の左足の足先は血塗れだったのである。
「本当に大丈夫なの?」
「大分出血したみたいね…」
周囲の者達は胡桃姫を心配する。
「心配しなくても私なら大丈夫よ!あんた達は心配性なのね!」
胡桃姫は只管満面の笑顔で大丈夫であると断言したのである。すると高身長の村娘が不安そうな表情で…。
「私達…本当に異国なんかに身売りされちゃうのかな?村里に戻りたいよ…」
高身長の村娘は涙腺から涙が零れ落ちる。
「私も…村里に戻りたいわ…」
「父ちゃん…母ちゃん…私はこんな場所で死にたくないよ…」
「私…異国なんかに身売りされたくないよ…」
彼女達の不安感に影響されたのか胡桃姫も不安が増大化したのである。
『私だって…私だって!西国の村里に戻りたいわよ!桃子姫姉ちゃん…崇徳王様…私は異国なんかに身売りされたくないよ!』
胡桃姫は涙腺より涙が零れ落ちる。すると直後である。
「貴様一体!?ぐっ!」
「うわっ!」
大勢の見張り役達の悲鳴が外部から響き渡る。
「えっ!?一体何が?」
「如何しちゃったのかしら?」
「大騒ぎみたいだけど…何事かしら?」
彼女達は外部で何が発生したのか気になる。数秒後…。
「皆様方!大丈夫ですよ!悪党達は私が退治しましたからね!」
頑強に構築された鉄扉から一人の武士が参上したのである。
「えっ!?あんたは…」
彼女達は驚愕する。突如として鉄扉から出現した武士とは誰であろう東国の軍神…。夜桜崇徳王だったのである。
「あんたは夜桜崇徳王様…」
崇徳王の参上に胡桃姫は一安心した反面…。涙腺より涙が零れ落ちる。
「皆様方は安心しなされ!何時でも脱出出来ますからね!」
崇徳王は天道金剛石の刀剣で牢獄の鉄格子を破壊する。
「あんたって…男前ね♪」
「夢物語みたいだわ♪現実なの?」
「私達♪村里に戻れるのね♪」
胡桃姫以外の女性達は赤面し始め…。崇徳王に見惚れる。
『私が男前ですと♪』
崇徳王は内心大喜びしたのである。すると胡桃姫は小声で…。
「崇徳王様…」
「胡桃姫様…」
『左足を…山道で発見した血痕は胡桃姫様の血痕だったのですね…』
胡桃姫は左足を大怪我した状態であり着物の足先は血塗れの状態だったのである。
「胡桃姫様…即刻家屋敷に戻って治療しなければ…」
胡桃姫は自力での歩行が困難であり崇徳王が胡桃姫を背負った状態で移動する。五人の女性達も警戒した様子で恐る恐る崇徳王の背後を追尾したのである。
「皆様方…油断大敵ですよ!悪党達の悪巧みは無事に阻止出来ましたが…彼等は全員気絶させた状態ですからね…」
崇徳王は邪霊餓狼の命令に服従したくなかったのか今回ばかりは憎悪すべき敵兵達であっても誰一人として殺害せず…。牢獄の彼女達を救出したのである。連行された女性達は無事に忍者部隊の本拠地から脱出すると各自村里へと帰郷する。一方の崇徳王と胡桃姫は帰宅中…。
「崇徳王様…」
「如何されましたか?胡桃姫様?」
「今回も感謝するわね♪」
胡桃姫は満面の笑顔で崇徳王に謝礼したのである。
『胡桃姫様…』
「胡桃姫様が無事なのが何よりですよ!」
崇徳王は満面の笑顔で返答する。
『今回の…崇徳王様♪』
普段は一方的に崇徳王を助平と揶揄する胡桃姫であるが…。
『普段も男前だけど♪今回は普段の崇徳王様よりも何万倍も男前だったわよ♪』
今回の崇徳王は普段よりも男前であると胡桃姫は感じる。

第十二話

覚悟
世界暦四千五百七年五月十三日の出来事である。真夜中の深夜帯…。南国の南軍侍大将と北国の北軍侍大将が武陵桃源の西国で密談する。
「此処が武陵桃源の西国ですか?」
「西国とは…殺風景の片田舎みたいですね…」
両者は西国の農村にて今後の動向を計画したのである。
「こんなにも物静かな武陵桃源の西国なんかで…無尽蔵の天道金剛石が確保出来るのでしょうか?」
南国と北国は本来水と油の関係であり両勢力は敵対関係であったものの…。西国の地表に沈黙する無尽蔵の天道金剛石の確保と両勢力にとって共通の宿敵である東国の打倒を主目的に利害が一致する。
「西国総攻撃は翌日の真夜中でしたね…」
「こんなにも片田舎の村里ですからね…両軍の戦力を結集すれば翌朝には西国の全域を占拠出来るでしょう!」
「面白くなりますな!」
彼等は各自の本国へと戻ったのである。彼等が撤収した翌日の真昼…。妊娠により腹部が肥大化した桃子姫は非常に重苦しい様子だったのである。
「はぁ…はぁ…」
桃子姫は自宅の居室で寝転び続ける。
「桃子姫姉ちゃん?大丈夫?」
胡桃姫は一日中重苦しく寝転び続ける桃子姫に恐る恐る近寄る。
「胡桃姫…私なら大丈夫よ…貴女は気にしなくても大丈夫だからね!」
胡桃姫は笑顔で…。
「桃子姫姉ちゃん♪桃子姫姉ちゃんも…数日後には一児の母親なのね…」
「御免なさいね…胡桃姫…私は…正直足手纏いだよね?」
近頃の桃子姫は妊娠によって只管寝転んだ状態が習慣化する。
「別に足手纏いなんて…気にしないで!桃子姫姉ちゃん!」
胡桃姫は満面の笑顔で返答したのである。
「無事に赤ちゃんを出産出来たら…胡桃姫と崇徳王様に精一杯恩返しするから!」
「桃子姫姉ちゃん…」
今現在でこそ胡桃姫は笑顔で接触するのだが桃子姫の妊娠が発覚した当初は猛反発…。当事者である崇徳王にこっ酷く説教したのである。桃子姫との会話から数分後…。胡桃姫は家屋敷の庭園にて崇徳王に恐る恐る接触する。
「崇徳王様…」
「えっ…胡桃姫様…」
一方の崇徳王も恐る恐る返答したのである。
「胡桃姫様…如何されましたか?」
二人は非常に気難しい雰囲気であったものの…。
「崇徳王様…私は崇徳王様に頭ごなしに説教しちゃって御免なさいね…私は…感情的だったわ…」
胡桃姫は恐る恐る崇徳王に謝罪したのである。
「私は崇徳王様に…崇徳王様は何も悪くないのにね…」
胡桃姫に謝罪されたものの…。
「えっ?」
『揉め事の発端である私自身が…何も悪くないのだろうか?』
崇徳王は苦笑いしたのである。二人は一度一息する。
「胡桃姫様…私なら大丈夫ですよ!」
崇徳王は笑顔で返答したのである。
「私は気にしませんから!本来であれば今回の揉め事の発端は胡桃姫様に秘密にした私こそが加害者であり…主原因なのですからね…」
「崇徳王様…」
すると胡桃姫は真剣そうな表情で告白する。
「正直私は…私達は悪霊の邪霊餓狼に呪詛された崇徳王様に殺されるかも知れないって…毎日が息苦しい雰囲気だったのよね…」
「胡桃姫様…」
胡桃姫は一息すると笑顔で…。
「崇徳王様が悪霊を征伐してから毎日の生活が息苦しい雰囲気だったけどね…助平だけど崇徳王様は純粋に誰よりも人一倍温厚篤実で紳士的だったわ!私は不必要に悲観視し過ぎちゃったみたいね!」
「えっ…」
『胡桃姫様…私が助平なのは…』
崇徳王は胡桃姫の助平発言に苦笑いしたのである。胡桃姫に助平と揶揄された崇徳王であるが…。笑顔で返答したのである。
「別に私自身は気にしませんし!最悪…私が桃子姫様と胡桃姫様に手出ししそうになれば私は私自身で自害する覚悟ですからね!」
「崇徳王様♪」
胡桃姫は崇徳王の様子に一安心する。すると数秒後である。
「胡桃姫様…大変心苦しい内容なのですがね…」
「えっ…崇徳王様?何が心苦しいのよ?」
崇徳王は沈黙し始める。
『崇徳王様…如何しちゃったのかしら?如何して何も喋らないのよ?』
胡桃姫は無言の雰囲気に気まずく感じる。
「崇徳王様?」
一方の崇徳王は何も喋れず数分間沈黙するのだが…。
「胡桃姫様…」
「えっ…何よ?崇徳王様?」
崇徳王は突然涙腺から涙が溢れ出たのである。
「崇徳王様!?突然如何しちゃったのよ!?」
落涙し始めた崇徳王に胡桃姫は非常に困惑する。
「胡桃姫様…桃子姫様の秘密なのですが…」
「えっ?桃子姫姉ちゃんの秘密ですって?何かしら?」
「桃子姫様は…」
崇徳王は桃子姫が赤子を出産したかった本当の理由を一部始終告白したのである。
「えっ…桃子姫姉ちゃんが!?不治の疫病に…」
胡桃姫は衝撃的事実に絶句し始め…。全身が膠着化したのである。
「桃子姫姉ちゃんは今迄に…不治の疫病と闘病中だったのね…」
すると胡桃姫は一時的に沈黙する。沈黙から数秒間が経過…。
「はぁ…やっぱり桃子姫姉ちゃんは病気だったのね…」
胡桃姫は平常心に戻ったのである。
「胡桃姫様?」
「近頃の桃子姫姉ちゃん…顔色が病人みたいな様子だったから…」
胡桃姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
「長生き出来ないのよね…桃子姫姉ちゃん…」
崇徳王は胡桃姫の発言に小声で返答する。
「非常に残念ですが…桃子姫様は…」
涙腺から涙が零れ落ちる胡桃姫であるものの…。
「私達は精一杯…」
胡桃姫は笑顔で断言する。
「桃子姫姉ちゃんに助力しないと!」
「胡桃姫様…」
崇徳王は胡桃姫の前向きな姿勢に一安心したのである。
「勿論ですとも!胡桃姫様!」
胡桃姫と崇徳王は約束…。誓い合ったのである。

第十三話

開戦前夜
同時刻…。南軍と北軍の軍勢が西国の山奥にて合流する。総兵力は合計七百人規模であり過疎地の西国を占拠するには過剰戦力である。
「西国の国境に到達したぞ!総攻撃は本日の真夜中に決行する!」
「翌日の早朝には確実に西国全土を占拠するからな…全軍覚悟せよ!」
両陣営の侍大将が各兵卒達に伝播させる。
「翌日の早朝には西国全土を占拠出来るのか?」
「西国は過疎地だからな…村内で遭遇するとすれば非武装の農民とか?」
「相手が非武装の農民だったら俺達でも楽勝だけどな!」
「手前勝手の殺戮であるが…普段の戦闘よりは一方的だろうよ!」
両陣営の兵卒達は雑談し始めたのである。
「貴様達!」
南国の総大将が鬼神の形相で断言する。
「間違っても非武装の農民達は勿論…無抵抗の老人達やら女子達には手出しするなよ!極力村民達への被害は最小限に努力すべし!」
意外にも南国は残虐非道として知られる北国の軍勢とは対象的に人道的である。基本南国では略奪やら非力の村人達への虐殺は厳禁…。重罪として扱われる。
「えっ…」
「意外だな…」
南国の総大将の発言に北国の総大将は勿論…。周囲の兵卒達は一瞬沈黙する。すると一人の足軽が恐る恐る…。
「近頃南国の匪賊達の噂話だったかな?何やら東国出身者の夜桜崇徳王って若武者と遭遇しちまったらしいが…」
南国の匪賊達の噂話により両陣営の兵卒達は突如として戦慄する。
「東国の夜桜崇徳王だって!?本当なのか!?」
「夜桜崇徳王って東軍の最上級武士だったよな!?如何して東国出身者の夜桜崇徳王が過疎地の西国なんかに!?」
崇徳王は各勢力から存在を危惧される剣客の有名人であり各勢力の武将達は勿論…。各勢力の領主達からも極悪非道の軍神として戦慄されたのである。
「所詮噂話であるからな…常識的にこんな過疎地に剣客の最上級武士が移住するなんて面白くない冗談だな…」
「はぁ…崇徳王の野郎が西国に移住なんて戦慄させるなよ!」
「一瞬冷や冷やしちまったよ!俺はこんな場所で死にたくないぜ!」
両陣営の総大将達が鬼神の形相で兵卒達に怒号する。
「貴様達!此処は戦場なのだぞ!沈黙せよ!」
両陣営の兵卒達は即座に沈黙したのである。
「今夜の総攻撃は非常に容易いかも知れないが…絶対に楽観視するなよ!主戦場が過疎地だったとしても油断大敵であるからな!」
「其処等の農民とて屈強の武具を所持すれば脅威だ!油断は出来ないぞ!」
兵卒達が沈黙すると暗闇の森林浴から風音と川音が響き渡る。

第十四話

夜襲
同日の真夜中の時間帯である。崇徳王は家屋敷の庭園にて真夜中の夜空を眺望するのだが…。
『胸騒ぎだろうか?』
崇徳王は山奥から極度の胸騒ぎを感じる。
「嵐の前の静けさか…」
『山奥から無数の気配を感じるぞ…非常に気味悪いな…』
すると崇徳王の背後より胡桃姫が恐る恐る近寄る。
「崇徳王様?」
「うわっ!」
崇徳王は驚愕したのである。
「私よ…崇徳王様…何も吃驚しなくても…崇徳王様は大袈裟ね…」
「誰かと思いきや…胡桃姫様でしたか?失礼しました…」
胡桃姫は不安そうな表情で恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「崇徳王様…大丈夫なの?」
「えっ?大丈夫って…何が?」
「崇徳王様の表情が非常に重苦しいから…」
「えっ…」
『私の表情が…重苦しいですと?』
崇徳王は苦笑いした表情で返答したのである。
「私の表情が重苦しかったですかね?失礼しました♪」
崇徳王は満面の笑顔で返答するものの…。再度表情が険悪化する。
「ですが胡桃姫様…私は先程から極度の胸騒ぎを感じるのです…」
「胸騒ぎですって?ひょっとして今回も悪霊の気配とか!?」
崇徳王は一息したのである。
「恐らくですが大勢の人間達の…殺気でしょうか?」
近辺の山奥より大勢の殺気を感じる。
「前回みたいに悪霊の気配とは完全に別物ですね…」
「人間達の殺気ですって?」
胡桃姫は不安そうな表情で恐る恐る…。
「ひょっとしてこんな真夜中に夜戦とか?」
崇徳王は胡桃姫の発言に恐る恐る返答する。
「断言は出来ませんが…恐らくは夜戦かも知れませんね…」
「武陵桃源の西国で夜戦なんて傍迷惑だわ…如何にか出来ないのかしら?」
すると崇徳王は真剣そうな表情で発言したのである。
「胡桃姫様…私達は即刻家屋敷から脱出しなければ…家屋敷に長居し続けるのは危険かも知れません!」
「えっ!?家屋敷から脱出ですって!?崇徳王様!?」
胡桃姫は崇徳王の発言に驚愕する。
「山奥から不穏の気配を多数感じるのです…ひょっとすると今回も一大事かも知れません!胡桃姫様…即刻家屋敷から脱出しましょう!」
「脱出って…崇徳王様!?」
胡桃姫は突然の崇徳王の指示に困惑したのである。
「桃子姫姉ちゃんは妊娠中で寝転んだ状態なのよ!突然家屋敷から脱出するなんて無茶よ!」
すると二人の背後より桃子姫は重苦しい表情で近寄る。
「二人とも…」
崇徳王と胡桃姫は背後の桃子姫に反応する。
「二人とも…私なら…大丈夫よ!私は大丈夫だから…」
「桃子姫姉ちゃん!?」
「私でも徒歩だけなら自力で出来るわ!二人とも私を心配しないで…」
桃子姫は息苦しい様子であり自力で出歩くのは非常に困難の状態である。
「桃子姫姉ちゃん…無理しないで!桃子姫姉ちゃんには…赤ちゃんが…」
「私は足手纏いだからこそ!徒歩だけでも自力で…」
桃子姫は断言する。
「桃子姫様…承知しました…」
崇徳王は承諾したのである。
「桃子姫様も即刻私達と一緒に家屋敷から脱出しましょう!」
すると突然…。南方の山奥より無数の大砲の筒音と同時に村人達の阿鼻叫喚が西国全域に響き渡る。
「村人達の悲鳴だわ…」
「爆発音かしら!?」
桃子姫と胡桃姫は村人達の阿鼻叫喚と爆発音に戦慄したのである。
「一触即発ですね…桃子姫様!胡桃姫様!此処で長居し続けるのは危険です!即刻家屋敷から脱出しましょう!」
崇徳王は敵軍の刺客に警戒…。恐る恐る自宅の玄関口から脱出したのである。外部は村人達の鮮血やら肉片が散乱する。
「きゃっ!」
「流血だわ!」
前代未聞の光景に桃子姫と胡桃姫は戦慄したのである。
「畜生…」
崇徳王は外部の光景から東国での従軍時代を想起する。
『武陵桃源の西国が血みどろの主戦場に!』
村道では大勢の村人達が一目散に逃走したのである。
「桃子姫様!胡桃姫様!敵襲です!」
すると南方の山奥より大勢の鎧兜の兵卒達が西国の麦畑へと進撃する。
「二人とも!即刻精霊故山に避難するのですよ!」
崇徳王は一触即発の緊急事態に大声で背後の二人に脱出を指示したのである。
「崇徳王様は如何するのよ!?」
桃子姫が必死の表情で問い掛ける。
「敵軍は私が撃退しますから!桃子姫様と胡桃姫様は即刻避難を!」
「止むを得ないわね!崇徳王様!」
胡桃姫は崇徳王の指示に承諾するのだが…。
「崇徳王様!一人で大勢の敵軍を撃退するなんて無謀よ!」
一方の桃子姫は崇徳王の意向に猛反対したのである。
「桃子姫様…」
「崇徳王様も私達と一緒に村里から脱出しましょう!崇徳王様が殺されちゃったら…私は…崇徳王様も私達と一緒に此処から脱出して!」
桃子姫は必死の様子で崇徳王に説得するものの…。
「桃子姫様!私なら大丈夫ですよ!無事に戻れますからね…」
崇徳王は自身が無事に戻れると自負したのである。
「私は誰であろう東国の軍神なのです!主戦場であっても確実に戻れますから!無事に戻れると約束しましょう!」
一方の胡桃姫は内心不本意であるものの…。
「崇徳王様…無理しないでね!」
崇徳王の意向を尊重する。
「えっ…胡桃姫!?如何して!?」
桃子姫は崇徳王の意向を受容出来なかったのである。
「崇徳王様が敵兵達に殺されちゃうかも知れないのよ!?胡桃姫も崇徳王様に説得してよ!」
胡桃姫は冷静沈着の様子で桃子姫に返答する。
「桃子姫姉ちゃん…観念しましょうよ!こんな状況は非力の私達では如何にも出来ないし!」
「胡桃姫…あんたね!」
桃子姫は険悪化した表情で胡桃姫を睥睨し始める。
「桃子姫姉ちゃん…私と一緒に精霊故山に逃げましょうよ!私はこんな場所では死にたくないわ!」
「崇徳王様!」
「桃子姫姉ちゃん…御免ね!」
桃子姫は落涙した様子であるが胡桃姫は彼女を無理矢理に引致すると家屋敷から脱出…。二人は精霊故山を目標に逃走したのである。
『如何やら彼女達は…無事に避難しましたね…』
二人の脱出を確認出来…。
『一先ずは安心です!』
崇徳王は一安心する。
『正直此処からは面倒ですが…私は一仕事しますかね?』
崇徳王は最前線の敵兵達を凝視すると武者震いしたのである。
「敵軍は…南国と北国の軍勢だな…」
『武陵桃源の西国に出現するなんて…』
彼等に対する怒気が急上昇する。すると直後…。
「ん!?」
崇徳王は極度の熱気により敵兵達に対する殺意の感覚が芽生える。
『半年前の忍者部隊との戦闘以来だな…私自身…こんなにも殺意が…』
崇徳王は邪霊餓狼の呪力の悪影響からか理性を抑制出来なくなる。
『ひょっとして邪霊餓狼の呪力とやらの…悪影響なのだろうか?こんなにも自分以外の人間を殺したくなるとは…』
内心皮肉であると感じる。
『こんなにも邪霊餓狼の呪力に感謝したくなるとは…皮肉だな…』
すると村道にて大勢の敵兵達が崇徳王の存在に気付いたのである。
「ん!?貴様はひょっとして…東国の軍神夜桜崇徳王なのか!?如何して東国の貴様が片田舎の西国なんかに!?」
「噂話は事実であったか!」
「貴様が西国に移住する理由は不明瞭だが…東軍の荒武者達によって大勢の戦友達が惨殺されちまったからな!今回の聖戦は東国の崇徳王に復讐する絶好機だぞ!」
軍配を所持する大柄の武将らしき人物が将兵達を先陣した直後…。
「戦死した戦友達への正義の弔い合戦である!」
実際に崇徳王の従軍時代では彼との交戦によって何百人もの戦友達が戦死したのである。南軍と北軍にとって東国の崇徳王は列記とした仇敵であり崇徳王に対する彼等の憎悪は非常に根深い。
「全軍よ!東国の軍神夜桜崇徳王を完膚なきまでに打っ殺せ!容赦するな!」
すると崇徳王の身体髪膚から無数の血紅色の発光体が出現したのである。
「ん!?」
「崇徳王の肉体から…一体何が!?」
敵兵達は血紅色の発光体を凝視すると恐怖によって身震いし始める。
「ひっ!」
「崇徳王は…妖怪化したのか!?」
「此奴は本物の物の怪みたいだな…現実なのか?」
彼等は豹変し始めた崇徳王に戦慄したのか恐る恐る後退りする。
「貴様等は…」
彼等の様子に武将は呆れ果てる。
「狼狽えるな!夜桜崇徳王とて所詮は人間の若武者だぞ!此奴は戦友達を惨殺した仇敵なのだ!徹底的に斬殺しろ!」
武将の威勢により大勢の敵兵達が崇徳王に殺到したのである。
「崇徳王の野郎!」
「覚悟するのだな!」
直後…。
「ん?」
「えっ…」
殺到した敵兵達の頭部が崇徳王の眼力によって肥大化し始めたのである。
「なっ!?」
数秒後…。彼等の頭部が破裂したのである。
「ぐっ!」
「ぎゃっ!」
地面には敵兵達の無数の肉片やら鮮血が飛散する。
「うわっ!」
「ひっ!此奴は怪物だ!」
「崇徳王は…何者だ!?」
前代未聞の地獄の光景に将兵達は戦意を喪失したのである。
「えっ…」
『如何してこんな?』
一方の崇徳王本人も呪力の強大さに一瞬驚愕するものの…。数秒後には平常心へと戻ったのである。
『邪霊餓狼の呪詛の効力なのか!?こんなにも絶大とは…』
一方の敵兵達は崇徳王に戦慄するものの…。
「鉄砲隊!夜桜崇徳王を射殺しろ!彼奴は本物の妖怪だ!今直ぐ崇徳王を殺害しなくては俺達が殺されるぞ!」
火縄銃を装備した鉄砲隊が最前線にて並列化したのである。
「鉄砲隊!射撃せよ!崇徳王を完膚なきまでに射殺するのだ!」
鉄砲隊は崇徳王を標的に火縄銃で狙撃する。一方の崇徳王は通常の人間をも上回る神速の身動きによって無数の火縄銃の弾丸を一刀両断…。斬撃により無数の弾丸を無力化したのである。
「覚悟するのだな!」
崇徳王は猛反撃すると神速の身動きによって鉄砲隊に急接近したかと思いきや…。最前列に並列した鉄砲隊の数人を瞬殺する。
「ひっ!」
崇徳王の猛攻によって最前列の鉄砲隊は一瞬で総崩れ…。
「撤退だ!全軍!撤退しろ!」
崇徳王に戦慄した敵兵達は一目散に撤退したのである。
『敵軍は撤退したみたいだな…』
崇徳王は邪霊餓狼の呪力により敵軍の撃退には成功したものの…。
「はぁ…はぁ…」
精神的にも肉体的にも疲弊した様子であり全身が身震いしたのである。
『危機一髪だったな…』
崇徳王は一安心した直後…。
「ぐっ!」
邪霊餓狼の呪力によって右腕の皮膚が腐敗したのである。
「代償なのか!?右腕がこんなにも腐敗するとは…」
『畜生が…邪霊餓狼の呪力とやらの悪影響なのか?』
崇徳王の右腕は腐敗と出血により完全に麻痺する。
『右腕が…麻痺するなんて…』
右腕の腐敗に戦慄するものの…。
『桃子姫様と胡桃姫様と合流しなくては…』
逃亡中の桃子姫と胡桃姫と合流する寸前である。すると背後より…。
「がっ!」
敵軍の狙撃兵によって崇徳王は背中を狙撃されたのである。
『背後からの攻撃だと?迂闊だったか…畜生…』
狙撃された崇徳王は地面に横たわる。
『桃子姫様…胡桃姫様…無事に避難して…無事に子供を…』
皮肉にも邪霊餓狼の呪力によって敵軍を撤退させた崇徳王であるが…。邪霊餓狼の呪力の悪影響と敵軍の狙撃により衰弱化したのである。

第十五話

妖女
夜桜崇徳王の孤軍奮闘によって南軍と北軍を撃退させた同時刻…。桃子姫と胡桃姫は全身全霊で故山の精霊故山へと逃走する。
「胡桃姫…」
「桃子姫姉ちゃん♪精霊故山の頂上だわ♪」
彼女達は精霊故山の天辺へと到達したのである。
「はぁ…はぁ…胡桃姫…」
「桃子姫姉ちゃん?大丈夫なの?」
胡桃姫は重苦しそうな様子の桃子姫に恐る恐る問い掛ける。
「御免なさいね…胡桃姫…私が足手纏いなばかりに…」
「足手纏いなんて!桃子姫姉ちゃん…気にしないで!」
桃子姫は山道の道端で横たわったのである。
「はぁ…はぁ…」
桃子姫は精神的にも肉体的にも疲弊した状態であり一時的に身動き出来なくなる。
「桃子姫姉ちゃん!?大丈夫!?」
胡桃姫は地面に横たわった状態の桃子姫に恐る恐る近寄る。
「御免なさいね…胡桃姫…正直足手纏いだよね?私って…」
桃子姫は自身の無力さからか涙腺より涙が零れ落ちる。
『桃子姫姉ちゃん…』
すると突然…。
「ぐっ!」
『陣痛かしら?』
桃子姫は腹部より極度の陣痛を感じる。
「えっ!?桃子姫姉ちゃん!?」
胡桃姫は桃子姫の様子に動揺する。恐る恐る桃子姫の腹部に接触…。
『ひょっとして出産かしら!?』
胡桃姫は対処出来ず困惑する。
「最悪だわ…」
『こんな状況で…私は如何すれば?桃子姫姉ちゃん…』
すると桃子姫と胡桃姫の背後より大勢の追討軍が彼女達を追撃したのである。
「ん?貴様等は西国の女子達だな!」
「こんなにも武陵桃源の片田舎に容姿端麗の女子達と出くわしちまうなんて俺達は福運だよな!」
「此奴は如何するよ?」
「正直こんな場所で女子達を打っ殺しちまうのは勿体無いよな!」
火縄銃を武装する狙撃兵が弾丸を装填させる。
「妊婦の小娘か?此奴は勿体無いが…仕方ないな…」
桃子姫が狙撃される寸前…。
『桃子姫姉ちゃんが…敵兵に殺されるわ!』
危惧した胡桃姫は咄嗟の判断により全力疾走したのである。危機一髪地面に横たわった状態の桃子姫を庇護した胡桃姫であるが…。
「ぎゃっ!」
胡桃姫は地面に横たわった状態の桃子姫の真正面にて敵兵に銃撃されたのである。胡桃姫は敵兵の銃弾により腹部を貫通…。
「ぐっ…」
腹部の傷口からは大量の鮮血が流れ出る。
『桃子姫姉ちゃん…私…』
胡桃姫は落涙した様子で地面に横たわる。
「胡桃姫…」
地面は胡桃姫の鮮血によって染色されたのである。
「胡桃姫…胡桃姫!?」
桃子姫は力一杯…。地面に横たわった状態の胡桃姫に近寄る。
「胡桃姫…胡桃姫…」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
「如何して…如何して私なんかを?胡桃姫!?」
「桃子姫姉ちゃんが…無事で…何よりだわ…ぐっ!」
多量の出血により胡桃姫は衰弱化したのである。
「桃子姫姉ちゃん…死なないでね…無事に赤ちゃんを…出産してね…」
「胡桃姫…胡桃姫!?如何して…」
胡桃姫の生命は最早風前の灯火であり両目を瞑目させた直後…。
「えっ…胡桃姫…」
胡桃姫は息絶える。
『胡桃姫が…死んじゃった…』
桃子姫は極度の無念と悲痛により無気力化するものの…。
「えっ…」
遠方の森林浴より無数の虹色の発光体を確認したのである。
『虹色の発光体だわ…一体何かしら?』
桃子姫は精一杯虹色の発光体を目印に疾走し始める。
「妊婦の小娘が逃走しやがったぞ…如何するよ?」
「妊婦の小娘を追尾しろ!」
追討軍の将兵達は一心不乱に全力疾走する桃子姫を追撃したのである。一方の桃子姫は虹色の発光体の居場所へと到達する。
『摩訶不思議の場所ね…何かしら?』
無数の発光体の中心部には虹色に発光する広葉樹が確認出来る。
『ひょっとして世界樹の…』
虹色に発光する摩訶不思議の広葉樹とは去年の十一月中旬に遭遇した世界樹の妖星巨木だったのである。
「造物主の妖星巨木だったかしら…」
『如何してこんな場所に妖星巨木が?』
桃子姫は恐る恐る妖星巨木へと近寄る。
『結局私は…私は如何するべきだったのよ!?』
桃子姫は恐る恐る樹体の表面に接触する。
『本来なら私が殺されるべきだったのに…如何して胡桃姫が殺されたのよ!?父様と母様だって…如何して匪賊に殺されたのよ!?』
桃子姫の両親は十五年前に匪賊によって惨殺されたのである。
『如何して私の家族は誰かに殺されるのよ!?天罰なの!?』
「如何してなのよ…如何してよ!?私達に対する天罰なの!?」
桃子姫は極度の悲哀と怒気が増大化する。
『如何して…私ばかり!私達ばかりが!』
桃子姫は自身の非力さから涙腺より涙が零れ落ちる。すると妖星巨木の一筋の小枝から虹色に発光し続ける果実を発見…。
『虹色なんて…摩訶不思議の果実だわ…』
桃子姫は恐る恐る虹色の果実を確保する。
『ひょっとして私に…果実を食べろと?』
入手した虹色の果実を無我夢中に菜食したのである。
「えっ…一体何が?」
すると桃子姫の体内より異変が発生し始める。超常現象により桃子姫の全身からは無数の血紅色の放射体が出現したのである。
「先程の妊婦の小娘だぞ!」
「ん?小娘の様子が可笑しいぞ…一体何が?」
大勢の追討軍が妖星巨木の聖域へと到達したものの…。
「彼奴は…村里の小娘は妖怪化しやがったのか!?」
彼等は変貌し始めた桃子姫の雰囲気から恐る恐る後退りしたのである。
「狼狽えるな!人間の小娘が妖怪化したとしても所詮は非力の小娘だ!大勢で妖怪化した小娘を完膚なきまでに根絶やしにせよ!」
桃子姫の血紅色であった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光する。
「あんた達…沈黙しなさい!」
桃子姫が殺気立った眼力によって周囲の敵兵達を力強く睥睨した直後である。
「ん?」
最前線の敵兵達は頭部が肥大化し始める。彼等は頭部の皮膚に亀裂が発生したかと思いきや…。
「なっ!?ぎゃっ!」
突如として敵兵達の肥大化した頭部が破裂する。地面に無数の血肉と彼等の脳味噌が散乱したのである。
「ひっ!」
「うわっ!何事であるか!?」
背面の敵兵達は突然の超常現象により戦慄する。
「一体全体何が!?如何してこんな…」
「貴様達!狼狽えるな!妖怪の小娘を根絶やしにせよ!妖怪の小娘を徹底的に退治するのだ!」
敵兵達は大勢で無防備の桃子姫に殺到するものの…。桃子姫は全身から血紅色の放射体を炸裂させると半透明化した血紅色の防壁を形作る。防壁の表面より無数の魔手が出現したのである。
「無数の魔手だと!?此奴は小娘の妖術か!?」
無数の魔手が出現しては殺到する敵兵達に接触したかと思いきや…。
「ひっ!」
無数の魔手は敵兵達の肉体諸共圧縮したのである。大勢の敵兵達が魔手によって全身を圧縮…。
「ぎゃっ!」
血肉やら体内の臓物が噴出したのである。
「現実なのか!?」
「部隊長殿!即刻撤退しましょう!物の怪の彼奴を相手するのは危険です!全滅しますよ!」
予想外の惨劇に部隊長は撤退を余儀無くされる。
「止むを得ないな…一先ずは退却だ!全軍…撤退せよ!」
敵兵達は一目散に桃子姫から逃走したのである。

第十六話

陣痛
桃子姫の猛反撃により両軍の将兵達が撤退し始めた同時刻…。南軍と北軍の本拠地では両陣営の総大将達が談笑する。
「本日は福徳円満ですな!早朝には西国全域は私達の勢力圏ですし…西国の地中には無尽蔵の天道金剛石が採掘出来ます!何よりも怨敵である東国は完膚なきまでに滅亡されましょう…最早私達が天下を統一するのは時間の問題ですな!」
「一石三鳥ですな!難敵の東国を打倒出来れば正真正銘桃源郷神国全域が私達の支配圏ですからね!」
「桃源郷神国全域を完全制覇出来れば…今度は異国も征服しましょうかね!」
「異国の征服ですか…面白そうですな!」
「部下達の朗報を期待しましょう!」
「勿論ですとも!」
総大将達は仲良く談笑するのだが…。本拠地より血塗れの一兵卒が一目散に乱入したのである。
「総大将殿!大変です!」
「ん!?突然何事であるか!?」
「随分大慌ての様子だな…一体何事だ?農民にでも反撃されたのか?」
総大将達は血塗れの一兵卒に驚愕する。
「西国の精霊故山より…荒唐無稽の妖女が…妖女が出現しました!」
「荒唐無稽の妖女だと?」
一兵卒の報告に二人の総大将は呆れ果てる。
「妖女なんて面白くない冗談だな…」
「妖女なんて実在するのか?」
「何が荒唐無稽の妖女だ!所詮貴様の見間違いだろう…妖女なんて魑魅魍魎が本当に実在するなら是非とも遭遇したくなるな!」
「本当に実在するなら今直ぐ妖女を此処へ招待するのだな!」
総大将達は疲弊する一兵卒の報告を揶揄する。
「荒唐無稽の妖女が出現したのは本当です!妖女の猛反撃によって大勢の足軽が殺害されました!即刻西国から全軍の撤退を…」
「馬鹿者!何が撤退だ!」
「冗談も大概にせよ!何が荒唐無稽の妖女だ!妖女とやらが本当に存在するのであれば即刻妖女とやらを本拠地に連行するのだな!」
「妖女なんて子供騙しは通用しないぞ…今更撤退なんて出来るか!」
撤退の一言に総大将達は怒号したのである。すると直後…。
「なっ!?」
突如として一兵卒の頭部が肥大化し始める。
「ぎゃっ!」
頭部が肥大化した数秒後…。一兵卒の頭部は破裂したのである。
「うわっ!」
「げっ!如何して足軽の頭部が!?一体全体何が…発生したのだ!?」
突発的出来事により総大将達は戦慄する。
「如何して足軽の頭部が破裂した?一体何故だ!?」
「ひょっとして妖女とやらの…仕業なのか!?」
「先程の内容は事実であったのか!?妖女が荒唐無稽の妖術で足軽の頭部を破裂させたのか…」
「えっ…妖女は本当に存在すると!?」
騒然とする彼等だが…。突如として本拠地より小柄の女性が潜入したのである。
「ひっ!」
「うわっ!貴様は何者であるか!?」
着物は血塗れであり亡霊みたいな雰囲気の女性に総大将達は恐る恐る後退りする。
「一体何者なのだ?ひょっとして貴様は村娘の悪霊なのか?」
女性の表情は無表情であり精気は感じられず亡霊みたいな雰囲気だったのである。すると血塗れの女性が無表情で総大将達を凝視し始め…。
「私は西国の…桃子姫よ…」
女性は自身を桃子姫と名乗ったのである。
「桃子姫だと?」
「貴様は西国の村娘なのか?」
すると無表情だった桃子姫の表情が険悪化し始める。
「あんた達ね…私の唯一の家族を…胡桃姫を殺させたのは…」
「胡桃姫とは?」
「一体何者であるか?」
桃子姫は総大将達に問い掛けられると険悪化した表情で即答する。
「胡桃姫は…胡桃姫は私の…私の実妹よ!」
数秒後…。
「あんた達も…同罪よ!部下達と一緒に死滅するのね!」
桃子姫は妖力で総大将達の頭部を肥大化させたのである。
「ぎゃっ!」
「がっ!」
摩訶不思議の超常現象により彼等の頭部が破裂したのである。両陣営の総大将達の落命によって南軍と北軍は完全に総崩れ…。妖怪化した桃子姫の猛反撃により西国の村里に出兵した南軍と北軍の軍勢は事実上全滅したのである。残存した数十人もの敗残兵は各地の村里へと逃亡する。一方摩訶不思議の妖力で敵軍を撃退した桃子姫であるものの…。直後である。
「ぐっ!」
『陣痛かしら!?』
桃子姫は極度の陣痛により地面に横たわる。

第十七話

出産
桃子姫が荒唐無稽の妖術で敵軍の総大将を殺害した同時刻である。火縄銃の敵弾によって地面に横たわった状態の夜桜崇徳王であるが…。
「ぐっ…」
『私は…一体?』
驚異の生命力により目覚めたのである。
『敵軍の奴等は?』
崇徳王は敵軍の奇襲に警戒し始め…。恐る恐る一歩ずつ移動したのである。
『不吉だな…随分と物静かだな…』
「奴等は…敵軍は撤退したのか?」
主戦場であった西国の村里であるものの…。
『村里では一体何が発生したのだ?』
何一つとして殺気の気配は感じられず周囲の物静かな雰囲気に崇徳王は身震いしたのである。
『如何して村里全体がこんなにも物静かなのか?』
邪霊餓狼の呪力と大量の出血によって目前が朦朧とする。
「ぐっ!」
『畜生が!桃子姫様と胡桃姫様に再会したいけど…こんな瀕死の状態では私は失血死するかも知れないな…』
最早崇徳王は虫の息であり歩行するだけでも息苦しくなる。
『桃子姫様と胡桃姫様は…無事に西国の村里から脱出出来たのでしょうか?』
村道を歩き続けると桃子姫と胡桃姫が逃走した精霊故山へと到達したのである。
「えっ…」
獣道の地面には大勢の敵兵達の鎧兜は勿論…。鮮血やら無数の肉片が彼方此方に散乱したのである。
「敵軍の!?」
『誰がこんなにも敵兵達を殺害したのか!?』
西国の村里には若武者は勿論…。力自慢の農民すら少数派であり統率された南軍と北軍の兵卒達を撃退出来る該当者は実質皆無である。
『如何して敵軍の兵卒達がこんなにも殺害されたのか!?村里では一体何が発生したのだ!?』
崇徳王は誰が敵軍の兵卒達を殺害したのか非常に気になる。
「ん?」
すると直後である。
『赤子の産声か!?』
遠方の自然林より赤子らしき産声が響き渡る。
「ひょっとして桃子姫様!?」
崇徳王は精霊故山の自然林から響き渡る産声に一安心したのである。
『桃子姫様は勿論♪胡桃姫様も無事みたいですね♪』
獣道の遠方より血塗れの着物姿の女性と抱き抱えられた赤子が確認出来る。
『ひょっとして彼女は桃子姫様!?如何やら桃子姫様は無事だったみたいですね♪』
崇徳王は恐る恐る女性と赤子に近寄る。
「桃子姫様でしたか!無事に避難出来たのですね!」
血塗れの着物姿の女性は正真正銘桃子姫…。彼女本人だったのである。
「桃子姫様!無事に再会出来て一安心ですよ!」
「崇徳王様…」
「えっ?」
崇徳王は桃子姫に抱き抱えられた赤子を凝視…。大喜びしたのである。
「桃子姫様♪無事に子供を出産されたのですね!」
「赤ちゃんは無事に出産出来たわ…私達の子供…性別は女の子よ…」
「女の子ですか♪彼女は誰よりも容姿端麗ですね!」
すると崇徳王は同行中の胡桃姫の行方を問い掛ける。
「桃子姫様?胡桃姫様は如何されましたか?無事なのですかね?」
「えっ…胡桃姫は…」
崇徳王に問い掛けられた直後…。桃子姫は絶句し始める。
「えっ?桃子姫様?」
崇徳王は恐る恐る無表情の桃子姫を直視すると一瞬戦慄したのである。
『桃子姫様の表情が無表情!?彼女には一体何が…』
桃子姫は悲痛そうな表情であり崇徳王は恐る恐る桃子姫に問い掛ける。
「桃子姫様…大丈夫ですか?一体如何されたのでしょうか?」
「胡桃姫が…胡桃姫がね…」
「えっ…胡桃姫様が…」
崇徳王は極度の緊張感からか全身が身震いしたのである。
「胡桃姫様が如何されたのですか?桃子姫様?」
崇徳王が再度問い掛けると桃子姫の涙腺から涙が零れ落ちる。
「胡桃姫が敵軍の襲撃で…殺されちゃったのよ…」
「はっ?えっ…」
崇徳王は衝撃の事実に身体髪膚が膠着したのである。
「えっ!?胡桃姫様が…敵軍の襲撃に!?」
崇徳王は驚愕した直後…。涙腺より涙が零れ落ちる。
「胡桃姫様…」
『胡桃姫様が息絶えられたなんて…私自身の力不足の所為で胡桃姫様が…』
崇徳王は自身の力不足に悔恨する。
「崇徳王様…私はね…」
「桃子姫様?」
桃子姫は先程の出来事を一部始終告白したのである。
「桃子姫様は妖星巨木の果実を!?」
「私が…摩訶不思議の神通力で敵軍の将兵達を全滅させたのよ…」
「えっ…」
『桃子姫様が敵軍の将兵達を全滅させたって?先程から西国全域が物静かだったのは桃子姫様が妖星巨木の神通力で敵軍を全滅させたのか…』
崇徳王は納得する。
「崇徳王様?」
「如何されましたか?桃子姫様?」
「崇徳王様は…こんなにも妖女みたいな私に戦慄しないの?今現在の私は本物の妖怪みたいな人外なのよ…崇徳王様はこんな私が平気なの?」
桃子姫は不安そうな表情で恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「私なら桃子姫様が人外の妖女でも戦慄しませんよ…桃子姫様が正真正銘妖女だったとしても桃子姫様は桃子姫様なのですから!」
崇徳王は自身が平気であると満面の笑顔で即答する。
「崇徳王様…」
無表情だった桃子姫に笑顔が戻ったのである。
『桃子姫様!』
崇徳王は笑顔が戻った桃子姫に一安心する。
「崇徳王様?」
「如何されましたか?桃子姫様?」
桃子姫は赤面した表情で瞑目し始め…。恐る恐る崇徳王に接吻したのである。
「えっ…」
『桃子姫様!?一体何を?』
崇徳王は突然の桃子姫の接吻に一瞬動揺するものの…。
「なっ!?」
桃子姫の神通力による効力なのか背中の外傷と呪力による体内の熱気が一瞬で浄化されたのである。
『体内の熱気と外傷が一瞬で浄化されるなんて!?ひょっとして桃子姫様の神通力とやらは治癒力は勿論…邪霊餓狼の呪詛でさえも浄化出来るのか!?』
崇徳王は桃子姫の神通力の強大さに驚愕する。
『腐敗した右腕が…再生するなんて…』
腐敗した右腕も桃子姫の神通力により元通りに再生したのである。
『現実なのか!?』
崇徳王は桃子姫の荒唐無稽過ぎる神通力に驚愕し始め…。現実の出来事なのか理解出来なくなる。
『桃子姫様の神通力…摩訶不思議だな…』
崇徳王の右腕が再生した直後…。
「ぐっ!」
桃子姫は突如として吐血する。
「えっ!?桃子姫様!?大丈夫ですか!?」
「崇徳王様…私は…」
桃子姫は抱き抱えた赤子を恐る恐る崇徳王に手渡したのである。
「崇徳王様…私はね…」
最早桃子姫は精神的にも肉体的にも疲弊した半死半生の瀕死状態であり深呼吸が非常に重苦しくなる。
「私と胡桃姫にとって…崇徳王様が居候してから…」
桃子姫の生命は風前の灯火であるものの…。
「私達は毎日が幸福だったのよ♪」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
『桃子姫様…』
「桃子姫様…私こそ…」
崇徳王も落涙したのである。すると桃子姫は涙目で赤子を凝視し始め…。
「私にとって唯一の心残りなのは…無事に出産出来た私達の子供と…一緒に生活出来ないのが何よりも残念なのよね…」
「桃子姫様…」
すると桃子姫の肉体が血紅色の粒子状の発光体へと変化したのである。
「えっ?桃子姫様!?」
「崇徳王様…精一杯…長生きしてよね♪絶対に約束よ…」
「桃子姫様…勿論約束しますよ!」
桃子姫は笑顔で崇徳王に密着し始め…。
「私は未来永劫…天国の胡桃姫と一緒に見守るからね♪崇徳王様♪」
無数の血紅色の発光体へと変化し始めた桃子姫は天空にて消滅する。
「桃子姫様…」
『私は今後…如何すれば?』
崇徳王は息絶えた桃子姫の安眠により一晩中落涙し続けたのである。

第十八話

要望
後日の早朝…。東国から崇徳王の家来が訪問する。
『西国の村里では一体何が!?』
西国の農村地帯全域が血塗れであり武陵桃源とは程遠い地獄絵だったのである。
『戦場みたいな光景だな…』
家来は地獄の光景に戦慄するものの…。崇徳王の安否が気になる。
『崇徳王様は無事なのでしょうか?』
すると遠方の山間部より血塗れの武士が佇立するのを確認したのである。
「なっ!?何者でしょうか?」
家来は恐る恐る武士に近寄る。
「貴方は夜桜崇徳王様!?崇徳王様ですよね!?」
崇徳王は家来に気付いたのである。
「誰かと思いきや…其方だったのか…如何して東国の其方が西国の村里なんかに?此処は戦場だぞ…」
「敵国である南軍と北軍が西国の村里に出兵するとの悪巧みを察知しましてね…私自身崇徳王様の安否が気になったのですよ…」
「今更祖国を裏切った逆賊の安否を確認するなんて…其方は本物の馬鹿者だな…」
崇徳王は家来に呆れ果てる。
「私は正真正銘逆賊の身分だぞ…本来ならば死罪でも可笑しくないのに…」
「ですが祖国を裏切ったとしても…夜桜崇徳王様は正真正銘夜桜一族を代表する最上級武士ですからね!私にとって崇徳王様が無事なのが何よりですよ!」
家来は満面の笑顔で発言する。
「えっ?崇徳王様?」
家来は抱き抱えられた赤子に注目したのである。
「ん?如何した?」
「赤子ですね…」
家来は恐る恐る崇徳王に問い掛ける。
「崇徳王様?一体…誰の赤子なのでしょうか?」
家来は誰の赤子なのか気になったのである。
「誰の赤子って…彼女は正真正銘私の愛娘だよ…」
家来は驚愕する。
「えっ!?彼女は崇徳王様の愛娘ですと!?」
家来は驚愕するものの…。直後に大喜びしたのである。
「ひょっとして崇徳王様は西国の村里で令夫人と婚姻されたのですね!」
家来は大喜びするものの…。
「えっ?崇徳王様?突然如何されたのですか?」
崇徳王は涙腺から涙が零れ落ちる。
「私の…私の大切だった女房は…」
崇徳王は西国での出来事を一部始終告白したのである。
「崇徳王様の令夫人は先程永眠されたのですね…非常に無念です!」
崇徳王は恐る恐る自身が抱き抱える赤子を直視し始める。
「彼女を…私の愛娘を東国の…夜桜家の武家屋敷で養育出来ないか?」
崇徳王は家来に要望したのである。
「所詮私は祖国を裏切った極悪非道の人間だからな…斬首刑は覚悟するさ…」
斬首刑を覚悟した崇徳王であるが家来は満面の笑顔で…。
「崇徳王様!何も斬首刑なんて…東軍の武士達には私が説得しますから!崇徳王様の愛娘は是非とも夜桜家の武家屋敷で養育しますから!彼女は正真正銘…夜桜崇徳王様の愛娘なのですからね!今現在の崇徳王様は英霊ですからね…家臣達には彼女は養子だと報告します!」
東国では夜桜崇徳王は匪賊達との交戦で戦死した英霊として扱われたのである。
「其方には感謝するよ…」
すると崇徳王は瞑目し始め…。
「本日より私は人殺しの武士としてではなく…僧侶として精一杯贖罪したいのだ!金輪際軍神は消滅した…」
僧侶としての活動を断言したのである。
「なっ!?崇徳王様が…僧侶ですと!?突然如何されたのですか!?僧侶なんて崇徳王様らしくないですね…」
家来は崇徳王の突発的発言に驚愕する。
「私は今迄に大勢の人間達を斬殺したからな…金輪際僧侶として悪逆非道である私自身の数多くの悪行を贖罪しなければ…」
「何も崇徳王様が悪逆非道なんて…崇徳王様は大勢の敵兵達を仕留められたかも知れませぬが…崇徳王様の奮闘によって大勢の村人達は勿論!東国に粉骨砕身されたのも周知の事実ですよ!東国が安泰なのは今迄に崇徳王様の粉骨砕身された結果なのです!」
「敵国の敵兵達であっても所詮相手は一人の人間だ…人殺しなのは周知の事実であるからな…」
「崇徳王様…」
「私は否が応でも出家する!戦乱で辛苦される大勢の村人達…各地の兵卒達を救済したいのだ!」
家来は恐る恐る崇徳王の表情を直視したのである。
「崇徳王様が僧侶として各地で活動されたいのであれば…私は崇徳王様の意向を尊重しましょう…」
「其方には…大変感謝するよ…」
家来は崇徳王の決意を尊重…。承諾したのである。

最終話

愛娘
世界暦四千五百七年六月十二日より夜桜崇徳王は出家…。修行僧として再活動したのである。同年の五月十五日に誕生した愛娘は東国の武家屋敷にて養育される。崇徳王が本格的に僧侶として活動し始めてからも各村落では小規模の局地戦が頻発したのである。各地の戦乱により大勢の武士達は勿論…。大勢の村人達が各村落の局地戦によって死去したのである。西国の村里にて出兵した南軍と北軍は人外の妖女へと覚醒した桃子姫の猛反撃によって二人の侍大将と数百人もの兵卒達を喪失…。総兵力喪失の悪影響により両勢力は唐突に弱体化したのである。弱体化した南国と北国の両勢力は東国の漁夫の利により本格的に属国化し始め…。東国の東軍は桃源郷神国の東国武士団として桃源郷神国全域を牛耳ったのである。東国の天下統一により二百年以上長期化した弱肉強食の戦乱時代は本格的に終焉…。世界暦四千四百十九年一月十一日により桃源郷神国は共存共栄と安寧秩序の安穏時代へと突入したのである。弱肉強食の戦乱時代から共存共栄の安穏時代へと変化した数年後…。桃子姫は伝説の元祖妖女として国全体の村人達から認識される。桃子姫が死没してから十二年後の世界暦四千四百十九年五月十五日の真昼…。各村落にて僧侶として活動中の夜桜崇徳王は久方振りに祖国である東国地帯の武家屋敷へと訪問したのである。
「父様!」
武家屋敷の玄関口より三つ編みの小柄の美少女が笑顔で崇徳王に力一杯密着する。
「【小梅姫】だったか!元気そうで安心したよ!」
「父様こそ元気そうね!」
小梅姫とは崇徳王と桃子姫の一人娘であり二人の愛娘である。崇徳王は小梅姫との久方振りの再会に大喜びする。
「小梅姫は人一倍容姿端麗で誰よりも美人だな♪本物の天女みたいだよ♪」
「私が誰よりも美人で天女なんて♪父様は大袈裟ね♪」
小梅姫は赤面するものの…。
『私が容姿端麗ですって♪』
内心では大喜びだったのである。
「小梅姫…私は毎日が一晩中大忙しだから悪かったな…」
小梅姫は謝罪する崇徳王に満面の笑顔で返答する。
「父様…気にしないで♪私は大丈夫だから♪」
「小梅姫…」
すると突然…。
「えっ!?」
何者かが崇徳王の背中に接触したのである。
『誰かが…私の背中を…』
崇徳王は背後より人気を感じる。恐る恐る背後を直視するものの…。
『誰かの気配は感じるのだが…一体何が?』
すると小梅姫が満面の笑顔で崇徳王の背後を指差したのである。
「父様♪二人の女神様だよ♪」
「えっ!?二人の女神様だって?」
崇徳王は小梅姫の女神様発言に反応する。
『ひょっとして桃子姫様と胡桃姫様が…』
桃子姫と胡桃姫を想像すると崇徳王は涙腺から涙が溢れ出る。
「父様…大丈夫?」
小梅姫は落涙する崇徳王を心配したのである。
「心配させちゃったね…小梅姫…私なら大丈夫だよ!」
崇徳王は満面の笑顔で…。
「ひょっとすると二人の女神様の正体は…小梅姫の母さん達かも知れないな!」
「えっ…私の母様?」
「小梅姫?久方振りに母さん達の墓参りに出掛けないか?」
「えっ?母様達の墓参りに?」
「無理強いしないが…小梅姫が墓参りしたら天国の母さん達が大喜びするかも知れないぞ!何しろ小梅姫は私と桃子姫母さんの愛娘だからな!」
小梅姫は一瞬困惑するものの…。笑顔で承諾する。
「勿論よ♪母様達の…墓参りしないとね♪父様♪」
「小梅姫!」
崇徳王は小梅姫と一緒に桃子姫と胡桃姫の墓参りに出掛ける。
完結

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